すぐ後ろから肉食獣に追われる経験、みな様にはありますか?
もちろん、σ(^^;にもありません。
でも、チャンピオンチップDay2、回転(SL)2本目の前は、
ちょうどそんな感覚に襲われていました。
襲いかかってくるのは、押しも押されぬパラリンピアン、高村俊彦選手と長谷川順一選手。
特に高村選手は、σ(^^が生まれる頃からスキーをしていたはずで、
チェアスキーキャリアで言っても、σ(^^;なんか「子供」のようなものです。
リレハンメル大会ではSLで銅メダルを獲得するなど、
その軌跡は実に輝かしいものとなっています。
そんな選手のすぐ前にいるんて、
「どうぞ食べちゃってください」と言わんばかりの状況な訳です(^^;
インスペクションの時から「負けられない戦い」が始まっていました。
σ(^^のインスペクションの方法は、まず誰よりも早く コースに入る。
そして、誰もいない雪上を止まらずに滑り降りて、「流れる光景」を記憶するというものです。
まあ、リズム変化のところだけは一旦停止しますが、
センターラインの方向と、それを見越した進入ラインが確認出来れば、
オープンゲートが続く区間にはあまり用はありません。
こんなスタイルでインスペクションをしているものですから、
「誰よりも早くコースへ入る」というのは生命線なのです。
この2本目も、同じようにスタート脇でその時を待っていました。
オフィシャルの無線に耳をそばだてて、会場アナウンスが伝わるより早くコースイン。
σ(^^のレースの流れは、ほぼ完璧に進んでいました。
無線がインスペクション開始を告げます。
コースに降りようとしたまさにその時!
「ろぼ?~~~でいいのかい?」
背中から純也さんの声。でも、よく聞き取れない(^^;
「なんだって?」
「いや、~~~だから、どうなのかなぁって」
「何だって???(半怒)」
「あ、コース入ってもいいらしいよ」
ぶちぃっ!!!
頭の中で何かが切れる音がしました(^^;
コースに視線を戻すと、すでに十何人かが渋滞を作り始めていました。
「やられた....」
σ(^^;のリズムはこうして狂い始めました。
この渋滞の中に入っていくのはあまりにも愚かです。
十分にリズムを作れるインスペクションが行えるようになるまで、
その場をやり過ごすこととしました。
いつもは真っ先に入るから気にしませんでしたが、
インスペクションでは「ゆっくりさん」な選手の多いこと(^^;
早く入って欲しいのに、いつまでもスタート脇にいる人、人、人....
仕方がないからそろそろ行こうかと思った矢先に、
ひとり、またひとり、ポツポツとコースイン。
まあ、5分もあれば終わるσ(^^のインスペクションです。
終了時間ぎりぎりまで待つことにしました。
それにしても純也のヤツめ....(^^;
2本目はリズム変化が少なくなっていました。
スタート~ヘアピン~ディレード(ツーゲート)~ヘアピン~ストレート~ヘアピン~フィニッシュ。
ヘアピンがひとつ少ないのです。
ゲート数44、ターン数43、対標高差30.7%ですから、
「ふつー」よりも「楽」なコース設定です(^^
後から聞いた話ですけども、コースセッターの方はこうおっしゃっていたそうです。
「チェアの方は、ストレートなどが苦手なようですから、ヘアピンをひとつ減らしました」
んー....なんだか複雑な気分です(^^;
でも、リズム変化がひとつ少なくなったことは、
タイム差がつきにくくなったということですからね。
逃げる立場で言えばありがたい話。
σ(^^;が転ける可能性も少なくなったということですし♪ナンテショウキョクテキナ(^^;
何はともあれ、無事にインスペクションも終了しました。
2本目のスタート順ですが、クラス順ではチェアスキーが最後。
さらに、1本目の順位を逆転させて2本目は出走します。
つまりσ(^^は最後尾、大トリ!
気持ちいい?
いやいや、待つのは大嫌いです(^^;
スタート前は、「早く走らせろい!」と不機嫌になるのがσ(^^。
最後の最後なんて、やなこったい♪シカタガナイコトデスケドネ....
悪いことがもうひとつ。
σ(^^の左足は義足なのですが、
義足のソケット(お肉を詰め込んでいる部分)の縁がお肉と強く擦れ合わさって、
激痛を生んでいました。
一度チェアから降りて座り直せばいいのですが、
シートのフィーリングが変わってしまうことがイヤで、
そして、座り直すのに5分ぐらいかかってしまうので、
そのままスタートまで待つことに。
おしりをもぞもぞさせて少し痛みをごまかして、
でもしばらくすればまたズキズキ....
何とかごまかして、進んでいく順番を待ちます。
いよいよあと3人。
長谷川選手がスタート。
長谷川選手はLW10-2というクラスで、障害の状態は重い方です。
当然、体の自由度はありません。
にもかかわらず、何とも速く美しいラインで降りていきました。
....本気でひっくり返そうとしているなぁ(^^;
そして高村選手。
スタート前に茶化して、相手の集中力を切らせるということをする人もいるようですが、
σ(^^がそれをしたら、たぶんグーでぶん殴られます。
ここはおとなしく、暖かくスタートを見送っとこ♪
高村選手が3旗門目を「逆手」でなぎ払ったのを見て、σ(^^はスタートバーの前に。
コース上に誰もいなくなった時、σ(^^の耳から雑音が消え、痛みも感じなくなりました。
お?
「入った」な(^^
自分で「ゾーン」に入ったことが感じ取れました。
こうなれば、あとは体が勝手に滑っていくので、
σ(^^は「まるで観客のように」楽しむことが出来ます。
いつもいつもこうだといいのですけどね♪
いよいよスタート!のその時、スタートストップがかかります。
なんてこったい!
繋がった気持ちがここでも切られてしまいました(^^;
なにがあった???
「高村選手、OUT!」
無線から伝えられる情報。
いつもなら、追いかけてくる獣がいなくなって安心するところですが、
そんなことより、一度切れた気持ちをつなぎ直すことに集中しました。
アルペンレースでは、ライバルは他の選手ではなく、自分自身だからです。
....大きく深呼吸、スタートの仕切り直し。
もう一度、コースレイアウトを思い返す。
頭の中には、すでにできあがったイメージが浮かび上がる。
そのラインをトレースするかのように愛機を送り出す。
ファーストターン。
ターンインの時、すでに視線は2、3旗門目を見ている。
ポールが体に当たる。
跳ね返ったポールは雪面を叩く。
足やヒザが叩かれないのは、いい角度で進入している、「乗れている」証拠だ。
最初のヘアピン。
すでにポールを弾く感覚すらない。
まるでゲームの画面を眺めるようだ。
ことさらセンターラインを意識することもない。
リズム変化のセクションに繋がるライン。
オートマチックにスキーがトレースしていく。
ストレートをくぐり抜け、センターラインが方向を変えるあと1カ所。
真っ白な意識の中、体だけが別の生き物のようにスキーを操っていく。
接地感すらない。
「浮揚感」。
非日常の違和感の中、最後のゲートだけは優しくタッチした。
フィニッシュラインを通過した瞬間、すでに右腕は天高く突き上っていた....
なんか、陳腐な表現ですなぁ(^^;
「ゾーン」を何回かは経験したことがあるんですが、どうにも文字にしづらい感覚で。
どんな感じに滑っていたのかお伝え出来ていればいいんですが♪
最終のリザルトが出て驚いたのは、2本目、長谷川選手と同タイムだったこと。
「本気で巻き返しにいったけど、あれが限界だったわ(笑)」
長谷川選手のコメントは、たぶん謙遜だろうけども、嬉しいものでした(^^
「でも、1/100秒でも勝ててないと負けたのと一緒だな(笑)」
レーサーの本音としてはそうだろうなぁ....
σ(^^も、実は同タイムは気持ち悪いのです♪
また、協会の役員の方からはこんな言葉も頂きました。
「滑走日数が少なくっても、絶対に錆びるなよ」
もちろん♪山頂ではないにしても、
あとから来る登山者のために道標にはなっていたいですからね(^^
このあとは、慌てて荷造り、慌てて昼食。
昨日とは違う堂々の表彰式。
そして、あわてて帰路につきました。
帰宅は2100時。
無事に遠足は終了です♪
では次回は、チャンピオンチップ連載最終回
「トリノモデル+オーリンズにおける『ろぼ仕様』の一考察」マダツヅクノカヨ....
チャンピオンシップお疲れ様でした。
返信削除すばらしい滑りを見せて頂きありがとうございました!!
まさかデビュー戦でご一緒できるとは思いませんでした^^;
人見知りでして・・・きちんと挨拶もせずすみません。
今回、ろぼさんや往年の名プレイヤー達の滑りを見てよい道標になりました!
また、ご一緒できる時がありましたら宜しくお願い致します。
インスペ最後までスタート脇にいてすみませんでした・・・m(_ _)m