一緒に耐えよう、立ち直ろう!東北! がんばろう!日本!

2013年12月12日木曜日

上り調子:20131209CopperMt.GS1....

「見てきたような観戦記」、

Day3を書き上げる時間が無くなってしまって、

1日空けてしまいました。

申し訳ありません(^^;


まずは、頂いているコメントからご紹介をさせてください♪
------------------------
12月10日(火):「熱戦と興奮:20131208CopperMt.SG2....」

tohtah様のコメント

「今、こちらを発見して、感動してます。
 同じresultsを見てるはずなのに、素晴らしい想像力。
 桃香ちゃん、やりましたね。次の観戦記も、楽しみにしてます。」

 ありがとうございました!

 この「観戦記」を始めたきっかけは、σ(^^の競技結果をお伝えする中で、
 「リザルトの読み方がわっかんねーよ!」というお声を頂いことが始まりです。

 リザルトの解説をするだけのつもりでしたが、
 どうせなら、書く方も楽しんでしまえと悪ノリするうちに、
 こんな形になってしまいました(^^

 いろんな想像を重ねて、面白くしたいと工夫しているのですが、
 どうしても書ききれないことが出てきます。

 一番苦労するのはDid not finish(途中棄権:DF)の選手の状況です。
 特に2本勝負のGiant Slalom(大回転:GS)やSlalom(回転:SL)の場合。
 2本目のDFだと、1本目の情報が何もない。その記載がない。順位も解らない。

 「多分このあたりでフィニッシュしているだろうな」と、
 勝手に思い込んで書き進めています(^^;

 また、後日、選手たちから、実は全く状況が違っていたという話を聞くと、
 背筋に冷たいものを感じたりします(^^;

 という訳ですので、あくまでも「フィクション」としてお楽しみ頂ければ幸いです。
 と、まずは言い訳から始めました♪

 でも、こうやって書き進むことで、
 リザルトからでも選手たちの「煌めき」を感じることがあります。
 村岡選手も、これからますます「煌めく」はずです。

 少しでも、そんな「煌めき」をお感じ頂けていたら幸いです。
------------------------

どんなスポーツでもそうですが、

「一瞬の煌めき」というものは多くの人を魅了します。

「その瞬間」に魅せられ、憧れ、目指す。

σ(^^も例外ではありませんでした。


そして、長い競技生活を通じて感じた事は、

その「煌めき」度合いは、思いや行動を「積み重ねた」厚みに比例するということ。

のんべんだらりと時間を過ごしただけの競技者には、

待てど暮らせど「その瞬間」はやってきません。


σ(^^が得られなかった「その瞬間」の競演。

アメリカはコロラド州、CopperMt.スキー場では、

嫉妬してしまうような戦いが繰り広げられています。


すでにNORAMカップDay1Day2では、

Super-G(スーパー大回転:SG)のハイスピードレースが繰り広げられました。


Day3はGS第1戦が行われます。

速度との戦いが重要なSGとは違い、GSではスキーの総合的な技術が求められます。


アルペンでは5つの競技種目がありますが、

最も競技人口が多く、最も過酷でシビアな戦いがGSだと考えています。

「GSを獲る」事が出来るのは、速さと巧さと強さを兼ね備えた人間のみが可能なのです。

そんなひと幕は、「煌めき」という表現以外に思い当たりません....


まだ夜も明けきらないゲレンデ。

レーススタッフはコースの準備に入念です。

睫が凍ってしまうような寒気、深く息を吸い込めば目眩すら起こしそうです。

レース進行を妨げてしまうようなミステイクは絶対に許されない。

「レースを成功させる」

表舞台には現れない、もうひとつの戦いがここにはありました。


日が昇り、完璧に整備されたコースが目に飛び込んでくる頃には、

選手たちは、「戦場」が見渡せるリフトへ乗り込んでいきます。

その戦場はカナダチームのコーチが設定しました。


「Bittersweet」と名付けられた、

スタート標高3,403m、フィニッシュ標高3,147m、標高差は256mのコース、

そこに立てられた34のゲート、33のターン。

その名の通り、「ほろ苦さ」が表現されているのでしょうか。


「Partly cloudy(時々曇り)」という天候、

放射冷却といっていいのかとてつもなく寒い。

スタート地点で-22.2℃、フィニッシュ地点で-21.0℃。

中途半端な防寒対策では、まちがいなく発狂してしまいます。


そんな中でもスケジュールはオンタイム。

スタート時間は刻一刻と迫っています。

そのジャパンチームのスタート順をご紹介します。


女子選手は7カ国29名、男子は12カ国75名の選手がエントリー。

女子Sitting(チェアスキー)クラス

27番 青木辰子選手
23番 田中佳子選手
29番 村岡桃佳選手

男子Standing(立位)クラス

43番 小池岳太選手
46番 東海将彦選手
50番 三澤拓選手
56番 伊藤史雄選手
57番 山崎福太郎選手
58番 阿部敏弘選手

男子Sittingクラス

74番 狩野亮選手
76番 森井大輝選手
80番 鈴木猛史選手
83番 夏目堅司選手
87番 谷口彰選手
88番 横澤高徳選手

以上のようになっております。


果たして、誰が「煌めき」を魅せてくれるのか?

いよいよGS第1戦1本目のスタート時刻となります!


ジャパンチームで、まず最初にスタートバーをこじ開けたのは、

女子Sittingクラスは田中選手。

SGで2つのDFをしてしまった挽回をしたい!


しかし、この日も不運!

青木選手、そして村岡選手の姿をコースサイドで見送ることになってしまった!

気負いすぎた事が裏目に出てしまったのか?

田中選手、残念な結果となってしまいました。


男子Standingクラス。


小池選手が見上げたリーダーズボード。

その時点のトップタイムから1秒も遅れてしまった。

自分自身に対して軽く舌打ち。


東海選手も、やや調子が上がらない。

その時点での最後尾に付けてしまった。


三澤選手は気を吐く。

トップからコンマ5秒落ちの2番手に躍り出る。


仲良しふたり組の伊藤、山崎の両選手。

コンマ21秒差で1本目も仲良く名前を並べる。


トップから2.7秒差の阿部選手。

2本目は厳しい戦いを強いられそうだ。


男子Sittingには、観客も大注目。

国籍を越えたジャパンチームの応援が目立つようになった。


しかし、地元のWALKER Tyler選手も人気は高い。

まず叩き出したのは基準となるタイム。


ジャパン1番機の狩野選手はそこに届かない。

フィニッシュエリアで少し首をかしげる。


森井選手は狩野選手を上回るが、トップからコンマ8秒落ち。

少し不満そうな表情だ。


鈴木選手は約2秒、

夏目選手と谷口が約4秒、

横澤選手は10秒以上も離されてしまった。


1本目、この場にいるSittingクラスの誰ひとりとして、

WALKER選手の牙城を崩せなかった....


時間は昼近くになろうとしているのに、一向に寒さは和らぎません。

1本目を走り終えた選手たちは、雪崩を打ったようにレストハウスへ避難していきます。


レース用ワンピースは空力特性を持たせてはいけないため、

用品規則では、素材にある程度の通気性を求めています。

体にぴったりと張り付くデザインなのに、冷たい空気は通り抜ける。

その空気は-20℃。

アルペンレーサーが最も頭を悩ます状況です。


レストハウス内の光景は、まさに「解凍」作業でした(^^

その「解凍」と2本目のコースセット、どちらが早く終了するか?


2本目は、アメリカチームのコーチがその「戦場」を設定しました。

ゲート数32、ターン数31。


1本目よりターンが少ないのですが、

所どころに減速を強いられるポイントがあるようです。

多くの選手たちが「溜まっている」ところがそのポイントでしょう。

誰もが入念に攻略イメージを作り上げていきます。


2本目のスタートは上位15名を順番を逆にしてスタートします。

真っ先にコースに飛び出るのは1本目15位の選手。

ラップ(トップタイム)の選手は15番スタート。

16位以降は、成績順です。


ジャパンチームの出走順を整理するとこうなります。

女子はエントリーが少ないため、全選手が順位の逆でスタートです。


女子Sittingクラス

4番目 青木辰子選手
6番目 村岡桃佳選手

男子Standingクラス

1番目 伊藤史雄選手
4番目 阿部敏弘選手
6番目 東海将彦選手
11番目 小池岳太選手
14番目 三澤拓選手
16番目 山崎福太郎選手

男子Sittingクラス

5番目 谷口彰選手
7番目 夏目堅司選手
11番目 鈴木猛史選手
13番目 狩野亮選手
14番目 森井大輝選手
18番目 横澤高徳選手

2本目のスタートはビブ(ゼッケン)の順番ではなくなるので、ちょいと注意が必要です。

お互いに声を掛け合いながら、2本目の準備を進めていきます。


1本目8.22秒と大きなビハインドを背負ってしまった青木選手。

この厳しいコンディションで巻き返すことは出来るか?

2人後ろの村岡選手の声援を受けてスタートバーをこじ開ける!


その村岡選手、SGでは「成長」を見せつけたがGSではどうか?

しかし、この日は競技の違いよりも、厳しいコンディションそのものが敵だったのかも知れない。

体が動かなくなるだけではなく、脳ですら機能を停止しかける環境。

どのような形であれDFはDFでしかないが、

この日のDFはただのDFではない、貴重な経験になると信じたい。


男子Standingクラスは伊藤選手の咆哮から始まった。

1本目15位の恩恵が、2本目の1番スタートとして現れた。

コース状況などの情報が多く上がっていないというデメリットがあるが、

その分、コースも荒れていない。この恩恵をどう生かすか?


元パラ代表、阿部選手。

そのブランクが2.7秒というビハインドで現れているのか。

しかし、この差は絶望的なものではない。


東海選手のビハインドは1.94秒。

復活を賭ける「キング」にとっては、決して満足できるものではないはずだ。

しかし、硬い雪面は古傷に多大な負担を強いる。

勝負に出たい。しかし....


こちらは、勝負しなければいけない小池選手。

1.01秒は射程圏内といっていいはずだ。

夏場から作り上げてきた体は、すでに満足出来るほどの仕上がりを見せている。

LW6/8-2というクラスは両足が健脚。

悪条件の中、これは相当なアドバンテージ。期するものは大きい。


15番目スタートのSTANTON James選手は、

目の前の三澤選手の背中を睨みつけている。

ふたりの差は0.52秒しかない。

ほんの少し、例えばゲートに当たり損なっただけで失ってしまうようなタイムである。


一方の三澤選手に気負いはない。

それどころか、14番目というスタートの遅さを心の底からもどかしく感じている。

この高揚感はプレッシャーとなり、優位なはずの背後の選手を襲う。


1本スキーの三澤選手の体がムチのようにしなり、

スタートバーを叩いた。


アウトリガーで2プッシュ。

大きく回り込みながらひとつ目のゲートにタッチ。

ふたつ目のゲートもしなやかに倒れる。


トップスピードを得たみっつ目のゲート。

エッジのかかり具合は申し分ない。

極低温でもワックスは機能している。


体は冷えているはずだが、何も感じない。

小脳が指示することを、体は少しの狂いもなく表現している。

いや、、自分の体ではないように感じる。

カメラの映像を見ている、そんな錯覚すらある。


次々になぎ倒されるゲートは、

その完成された滑りを讃えるかのように音を立てていく。


フィニッシュエリアが見える。

肺は体が求める酸素を供給し切れていない。

しかしまだだ。あと10ターン。


雪面には、インスペクションで描いたラインがくっきりと見えている。

残り5つ。焦るな。はやる気持ちを抑えろ。


エッジが切り裂く雪の結晶、その一粒すら感じる。


光電管が作り出す、見えないフィニッシュラインを断ち切った。

これ以上の滑りはない。


当然のように、リーダーズボードは彼の名を最も高いところに掲げた!

その名を確認する三澤選手の視界に、STANTON選手の姿が飛び込んできた。

あと数秒で決する戦い。激しく波打つ三澤選手の心臓。


レースが終わる瞬間の音が聞こえた。

リーダーズボード。

表示が入れ替わった!....


その場に崩れ落ちた三澤選手だったが、落胆はなかった。

最終のタイム差は0.22秒。

負けたことの悔しさよりも、誰よりも速く2本目を駆け抜けられた事に、

今は満たされていた。


「拓が2位!」

ジャパンSittingチームは、軽い衝撃と大いなる興奮に包まれた。

それぞれが自分のことのように喜べるのは、チームの雰囲気が極めて良いことを意味する。


「Now,Our job!」

WALKER Tyler選手が森井選手に声をかける。


ふたりの状況は、Standingクラスと似ている。その差は0.8秒。

ひとつ違うのは、追いかけるのが一昨年の総合王者だということ。

WALKER選手にとって、これほど恐ろしいことはない。


1本目のタイム差から、

2本目の戦いはこのふたりと、

狩野選手を加えた三つどもえになることは簡単に想像出来た。


谷口、夏目の両選手はすでにスタートした。

「大輝さん、亮さん、下で待ってますからね」と鈴木選手が先に出る。

ひとりおいて狩野選手。


45秒後。

森井選手が飛び出す。

ひと漕ぎ、ふた漕ぎ、もう一漕ぎはいつものスタイル。

ため息を覚えるほど華麗な1~2ターンの繋ぎ。


その姿が見えなくなると、WALKER選手のスイッチが切り替わる。

16番目スタートはチームメイト。

いつものジョークはリラックスしている証拠。

静かに、とても静かにコースへ降りるWALKER選手。


その姿をスタートハウスの隙間から、18番目スタートの横澤選手が目撃した。

「....大輝と同じぐらいに美しい」

いつかは「その領域へ」と願っているが、今はまだそこにたどり着けていない。

横澤選手の戦いは、まだ長い道のりを残していた....


フィニッシュエリアでは、ちょっとした騒ぎになっている。


狩野選手帰還せず。

森井選手は約1秒も離されて完敗。

Sittingチームの表情は、CopperMt.の空のように曇っていた.....


ふぅ(^^

Day3もドラマがいっぱい、でした♪

まずは、三澤選手におめでとう!ですね。

これを足がかりにさらなる高みへ!(^^


では、最終のリザルトを確認します。

女子Sittingクラス

4位 青木辰子選手
DF 田中佳子選手
   村岡桃佳選手

男子Standingクラス

2位 三澤拓選手
4位 小池岳太選手
10位 阿部敏弘選手
11位 東海将彦選手
14位 伊藤史雄選手
15位 山崎福太郎選手

男子Sitingクラス

2位 森井大輝選手
3位 鈴木猛史選手
6位 夏目堅司選手
9位 谷口彰選手
15位 横澤高徳選手
DF 狩野亮選手

以上です(^^


とにもかくにも、極寒の中でのアツいレース。

本当にお疲れ様でした!


こうやって、日替わりのヒーローが出てくると本当に楽しくなりますね♪

彼らの「煌めき」、届いてますか?(^^


では、次回はDay4、GS第2戦の模様をお送りします!

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメント、ありがとうございます。