一緒に耐えよう、立ち直ろう!東北! がんばろう!日本!

2014年1月31日金曜日

ふたりの関係:20140126HakubaSL....

暖けぇ(^^;宿の窓を開けた時に、まず感じた事です。

「ジャパンパラ冬季競技大会アルペンスキー競技(通称:ジャパラ)」のDay2は26日。


未明に白馬村上空を寒冷前線が通過しました。

通過前、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みます。

そのために、早朝はとても生暖かかったと(^^;


標高703mの気象台白馬観測所では、0600時に記録した気温がプラス1.4℃。

降雪こそ記録されていないのですが、山に上がれば....というところですか。

「観戦」するのでも気が滅入るのに、実際に「参戦」する選手たちの思い如何?


でも、顔を上げて出発することは大事ですな。

だって、駐車場では「どんより」とした表情の選手、スタッフはいないんですもの。

まずは元気いっぱいの挨拶で一日を始めましょう!(^^


この日はSlalom(回転:SL)レース。   リザルト:IPCフォーマット(男子のみ
                               国内格式(女子男子

前日のGiantSlalom(大回転:GS)で使用したコースの後半部分がその戦場です。

「馬止めジャンプ」を少し下に見下ろす急斜面にスタート台が用意されました。


その標高1,076m

気温はかろうじて氷点下になるかならないかという0℃付近。

ここから標高で126m降りた、950mのところにフィニッシュエリアが用意されています。


おや?前日のGSよりフィニッシュ標高が高いぞ?

同じコースを使用するレースなのに、フィニッシュエリアを上げた???

んー、昨期のSLレースのリザルトと比べても、

スタート、フィニッシュともに高くなっていますねぇ....


てことは、スタートを上げて急斜面区間の距離を増やしたって事ですね。

これも、「ソチ」対策のひとつかな?(^^


フィニッシュエリアの気温は2℃。

低い位置には暖かい空気が溜まっているようです。


ぽとぽとと降り積もった雪がコース全体を覆い、

誰がどのようにみても「Soft」な雪面状況。

なかなか楽しいSLレースになりそうです(^^;


コースセッターはジャパンチームの切久保コーチ。

ゲート数48、ターン数46。標高差に対するターン数が36.5%。

ルール上のターン数上限は、対標高差の35%+3、

つまりこのコースだと47ターンが最大です。

目一杯、ゲートを立てて、ぐりぐりターンしていけということですか(^^;タイヘンダゾコリャ....


そんなコースをこんな悪天候で戦う選手たち、

そのスタートリストが発表されております!


女子Sitting(チェアスキー)クラス

2番 田中佳子選手
3番 村岡桃佳選手
4番 大日方邦子選手
5番 原田紀香選手

男子Standing(立位)クラス

11番 東海将彦選手
12番 三澤拓選手
13番 伊藤史雄選手
14番 阿部敏弘選手
15番 山崎福太郎選手
16番 春日寛人選手

男子Sittingクラス

17番 森井大輝選手
18番 鈴木猛史選手
19番 夏目堅司選手
21番 谷口彰選手
23番 横澤高徳選手
24番 山本光文選手
25番 今野英樹選手   以上です!(^^


田中選手、東海選手はSLのみのジャパラ参戦。

また、横澤選手はエントリーしていましたが、

前日のGSで受けたトラブルによりDidNotStart(不出走:DS)となっています。

ご了承ください(^^


現在の大会時刻は0910時。

前走3名のスタートの後、いよいよ競技開始となります!


....アメリカで活動拠点を確保している田中選手は、

ある意味、「アウェイ」のジャパラと言えるかも知れない。

意図を秘めたSLのみのエントリーで、

これまでに積み上げてきたことを確認したい。


前日のGS覇者、村岡選手にとって、SLはまだまだ発展途上。

細かいターンが苦手なのか、

ポールコンタクトに不慣れなのか、

SL独特のリズム変化に戸惑うのか。

いずれにせよ、この種目では、まだまだチャレンジャーだ。


SLは経験。

大日方選手の滑りを見ているとよくわかる。

現役を離れたとはいえ、ゲート際の対応にはそつがない。

圧巻のタイム差で1本目を終えた。


復活、などという簡単な言葉で「師匠」を表現したくないのは三澤選手。

東海選手の滑る背中を見て目頭が潤む。

一緒にパラの表彰台に乗る。その夢も再び見られそうだ。


その夢のためには、高い次元で東海選手と並ばなければならない。

LW2のSL、「係数」は「1.0000」であり恩恵は全くないが、

しかし、その厳しさも「師匠」の背中を追う喜びには、ハンデとはならない。

手の届く位置でフィニッシュを決めた。


伊藤選手は早々にコースアウトを喫する。

このレースでの「宿命の対決」は、山崎選手のスタートを待つまでに終わった。


阿部選手も、係数の「恩恵」がほぼ受けられない選手のひとり。

完璧なランを披露した東海選手から、やや離されてしまう。


係数で言えば、その違いは約3.6%。

東海選手よりその分だけ、実測タイムで上回らなければならないのは山崎選手。

障害の軽度において有利なはずだが、その距離、そしてその「夢」も果てしない。


森井、鈴木両選手の戦いはここでも激しい火花を散らした。

「どんな雪面でもイン側を攻められる」

そう豪語する「新兵器」の威力をまざまざと見せつけた森井選手。


SLで負ける訳にはいかない。

鈴木選手は、前日のGS1本目を立場を変えて再現した。

0.18秒差。

その差はあって無いようなものだ。


ヤツらが速すぎるんだよ。

夏目選手はリーダーズボードを見上げて呟く。

彼は自身の滑りが悪くなかったと分析している。

しかし、タイム差は大きなものになってしまった。


谷口選手の快走は続く。

これまで巨大なビハインドを背負わされていたのが嘘のようだ。

鈴木選手から遅れること2.89秒。

2本目に賭ける。


現役当時、SLでは「速いヤツら」と渡り合ったこともしばしば。

山本選手はこの種目に苦手意識はない。

しかし、ブランクには勝てなかった....


いよいよ、タレントが揃い始めましたねぇ(^^

まずは、1本目の順位を整理します。


女子Sittingクラス

1位 大日方選手 0.00秒差
2位 田中選手  3.00秒差
3位 村岡選手  8.87秒差
4位 原田選手  69.14秒差

男子Standingクラス

1位 東海選手 0.00秒差
2位 三澤選手 0.41秒差
3位 阿部選手 3.80秒差
4位 山崎選手 9.86秒差
 DF 伊藤選手
 DisQualified(旗門不通過:DQ)春日選手

男子Sittingクラス

2位 森井選手 0.18秒差
1位 鈴木選手 0.00秒差
5位 夏目選手 4.79秒差
3位 谷口選手 2.89秒差
6位 山本選手 5.22秒差
7位 今野選手 29.25秒差
 DS 横澤選手

以上のようになっています。


足に負担の少ない雪と緩斜面だったとはいえ、

東海選手はかつてのスピードを取り戻したようですね(^^

また、その背中を追うだけだった三澤選手は、成長ぶりを見せつけて恩返し。

このふたりの関係は目が離せません♪


目が離せないと言えば、森井、鈴木の両選手。

GSで渡り合おうとする鈴木選手に、

SL王者を引きずり下ろしにかかる森井選手。

このレースでの結末やいかに?(^^


2本目の準備が着々と進んでいます。

そのコースは、韓国チームのコーチがセッティング。

ゲート数50、ターン数47、対標高差が37.3%。

いよいよ、ルール上の最大ターン数が用意されました(^^;


相変わらず雪は降り続いています。

少し寒くなってきたかな?とも感じるのですが、

0℃という「暖かさ」は変わりません。


当然のように雪面は「Soft」

いや、新雪が降り積もった分だけ、より「Soft」になっていることでしょう。

つまりは....ボッコボコに荒れる!(^^


σ(^^の経験上、柔らかい雪面の上に新雪が降り続くレースバーンだと、

ものの10人も滑りゃ、ゲート際はかなり掘れていきます。

特にSLのような細かく鋭いターンが求められるようなレースだとなおさらです。


「エッジで切る」というような滑りではなく、

雪の壁に「スキーを当てて曲がる」という感覚ですので、

雪面はどんどんと掘り進められ、ライン外側には雪だまりが高く積み上げられ、

ゲート際には「クレーター」のような窪みが成長していきます。


スキーを切り返してターンに入るのですが、

いったん「クレーター」の中に落ち込み、

遠心力で最大荷重がかかり、

そして「クレーター」から出る時は、「登り」のような雪面からの衝撃を受けます。


この時、チェアスキーのサスペンションは底付きをしてしまっていて、

ばねはその力を最大にまで溜めています。


「クレーター」から出る瞬間、

押さえつけられていたサスペンションが一気に解放され、

んぴょーん!

と宙を舞う事もしばしば(^^;


そんなコースでのレースは、σ(^^;のようなヘタッピだと、

「大ロデオ大会」になってしまうわけです。


まあ、トップ選手ともなれば、

「え?なに?荒れてるの?ここ?www」

といった感じで滑っていく訳ですけどね♪


さて、閑話休題。

2本目のスタート順を確認です!

女子Sitting(チェアスキー)クラス

1番 原田選手
2番 村岡選手
3番 田中選手
4番 大日方選手

男子Standing(立位)クラス

1番 山崎選手
2番 阿部選手
3番 三澤選手
4番 東海選手

男子Sittingクラス

1番 今野選手
2番 山本選手
3番 夏目選手
5番 谷口選手
6番 森井選手
7番 鈴木選手  以上の順番です!


では、雪が降り止まない中の2本目、どうぞご覧ください(^^


....なるほど、教えられたことがよくわかる。

村岡選手は、悪天候の中でも冷静に自分の滑りを確認していた。


柔らかい雪ほど、優しく丁寧に。

悪い環境ほど、基本に忠実に。


SLをなんとか攻略しようと頑張った1本目。

それは雪面に対してオーバーアクションだったことがよく理解出来た。


曲げようとしても曲がらない。

走らそうとしても走らない。


それは、スキーが方向を変えていこうとする時の「足場」を、

「余分な動作」で崩してしまっていたからだ。

状況が悪化するコンディションの中、新たな発見をタイムに結びつけた。


田中選手は、悪い状況での応用も出来る。

タイムロスを最小限に抑えられるのは、経験値の高さがなせる技だろう。


しかし、キャリアでいえば、やはり大日方選手には及ばない。

この難しい局面では、まだまだ彼女を脅かす存在は現れない。

彼女が滑り降りた時、圧勝が決まった。


もう、義足があっちこっちと「よそ見」しちゃって。

山崎選手にはスキー技術以外のところで悩まされている。

義足が外足になるターンは、雪に取られてしっかり板に乗れない。

逆に内足になる場合では、健脚側のターン弧を邪魔してしまう。


皮膚に張り付かせることで吸着固定させる義足の構造上、

外部からの入力に対して人間のコントロールが正確に届かない。

これはどうしても避けられない深刻な影響だ。

どうせ悩むなら、スキー理論で悩みたいと歯がゆさを感じている。


その対極にいるのは、障害の影響が少ない阿部選手。

純粋にスキー技術のみでの勝負となる。

そして、コースコンディションが悪くなればそれは彼にとって優位に働く。

環境の悪化がタイムに影響しないのは、さすがベテランといったところか。


三澤選手は、リーダーズボードを見上げている。

決して満足のいく2本目ではなかった。

しかし、悲観するようなミスもなかったと考えている。

視線の先を「師」の滑りへ移動させる。


素晴らしい。


やはり、まだまだ師弟の差はあり、ため息の大きさはその差に比例した。

2本目では、大きな差を開けられた。


雪面の悪影響。

サスペンションという受動的な装置に頼るSittingクラスにとって、

それは宿命的な要素である。

決して避けることの出来ない、それは十字架を背負っているようなものだ。

思うようにタイムアップさせることが出来ない、

あるいは、コースアウトという結末を突きつけられる選手が続出した。


山本選手はミスを多発。

夏目選手、谷口選手はDFに終わった。


レースの行方は、0.18秒というわずかな時間に並び立つふたりに委ねられた。


誰にも負ける気がしない。

この時、森井選手はそう思っていたかも知れない。

かつては、「SLは猛史に任せる」と考えていたほど、その滑りは異次元のものだった。


しかし、今期は、マテリアルの全てが、

そして自身のスペックが最高の仕上がりを見せている。

その効果は、この種目の絶対王者に並び立つことで証明されている。


彼のライン上には、彼を妨げるものなど何もないように見えた。

ゲート際の窪みも、スキーにまとわりつく新雪も、視界を妨げる悪天候も。


まるで水が流れ落ちるような滑りは、誰もが求めて止まず、

しかし、誰もが得られないもののはずだった。


だが、この場にいた全ての人間は目を疑う。

あり得ない。

そう思われていたものが、現実に目の前を通過したのだ。


鈴木選手は明らかに動揺していた。

白馬のSLでは、コースのほぼ全てがスタート台から見渡せる。


森井選手のラン、それに自分のリズムを重ねてみる。

あり得ない。

会場にいる全ての者と思いを共有してしまう。


しかし自分は、自分だけは、その思いを越えなければならない。

越えられるはずだ。

何よりも、SLで譲る理由など何もない。


動揺を一瞬で激情に切り替える。


スタート直後の急斜面区間。

緩斜面にスピードを繋げるなど初歩中の初歩。

この区間ですらタイムを縮めなければ勝てない。


オープンゲート5つ。

ディレードゲートひとつ。

最高速で緩斜面に入る。


ひとつ目のうねり。

ヘアピンゲート。

加速。


ターゲットが刻んでいったライン。

明らかに他のそれよりタイトだ。


乗れている。

コース上に2本目の最速ラインが刻まれる。


ストレートゲートから再びディレードゲート。

「窪み」は、他の選手の苦労を物語っていた。

しかし、必要なのはその内側のライン。

そこには妨げるものは何もない。


うねりふたつ目。

フィニッシュラインが視界に入る。

その向こうで見ている。

見せきってやる。


リズム変化はあとふたつ。

ヘアピン~ディレードとストレート。

オープンゲートのアプローチからリズムを作る。


ここだ。

ヘアピン。

4本のポールが1本に見える。

ポールに絡みつくライン。


ディレードの2本のポール、

そして次のオープンに対するまでは一つの円弧。

1mmでもインを通す。


ひとつ。

ふたつ。

スキートップ。

ポールの根本。


弾かれた。

窪みに吸い込まれる!

失ったラインとスピードは、全ての終わりを意味した....


まさに極限の戦い!(^^

安全マージンなど残すことは許されない、

シビアな戦いを垣間見た気がします。


鈴木選手は確かに「追い込まれていた」のでしょう。

そのぐらいに森井選手の存在は、

圧倒的な圧力となっていたのだと思います(^^


では、最終結果のおさらいです!


女子Sittingクラス

優勝 大日方選手
 2位 田中選手
 3位 村岡選手
 DF  原田選手

男子Standingクラス

優勝 東海選手
 2位 三澤選手
 3位 阿部選手
 4位 山崎選手
 DF  伊藤選手
 DQ 春日選手


男子Sittingクラス

優勝 森井選手
 2位 鈴木選手
 4位 山本選手
 5位 今野選手
 DF  夏目選手
     谷口選手
 DS  横澤選手   以上です♪


お疲れ様でした(^^

我に返ると、雪の降り方が強くなっているのに気がつきます。

よくもまあ、こんな天候でこんなアツいレースが繰り広げられたものだ。

いいものを見せてもらいました♪


さて、次回はDay3、Super-G(スーパー大回転:SG)の模様を、と考えていましたが、

お天道様と相談の結果、

急遽、SuperCombi(スーパー複合:SC)へと開催種目が変更されました。


てことで、Day3はSCレースをお楽しみください(^^

2014年1月30日木曜日

人が動くところにはドラマがある:20140125HakubaGS....

遅ればせながら、白馬入りです(^^;

σ(^^が住んでいる京都府舞鶴市より、車で5時間半の行程。

北陸道糸魚川ICを降りて、さらに1時間半!

なかなかにシビれる距離ですよ♪


ところが!リザルトのみを頼りに書き進める、

「山本新之介のジャパラをまるで見てきたような観戦記」は、

自宅にいながらにしてレースを楽しむことが出来るのです!

σ(^^;が「妄想」に身を任せて悦に浸っているだけですけどね♪


さて、国内最高峰の障害者アルペンレース、

「ジャパンパラ冬季競技大会アルペンスキー競技(通称:ジャパラ)」が、

スキー界では「聖地」とも言われる白馬八方尾根スキー場で開催されました!


ジャパラの開催は例年3月なのですが、

今期はパラリンピックイヤーということもあって前倒しのこの時期です。

「ソチ」までの調整を考える上でもこの時期の開催は最適ですし、

なによりも、3月の「春スキー」レースはうんざりです(^^;

3月は雪が柔らかい上に、雨に降られることもしばしば。

いい雪でのレースは、滑る方も見る方も楽しいものです♪


まずは、25日に行われたGiantSlalom(大回転:GS)の模様から見ていきましょう!

リザルトをお手元にどうぞ!

IPCフォーマット(男子のみ

国内格式(女子男子


前日の24日、気象台白馬観測所で記録された最低気温は-13.5℃。

日中は穏やかな晴れでした。


てことはなんですか?

日中に少し溶けて緩んだ雪面が、

今朝の冷え込みでよく締まったということですか?(^^


25日の最低気温は-9.1℃ですから、

いいレースバーンが出来上がったのか?と、

ワクワクしながらコースへ上がります。


使用されるコースは長野オリンピックの会場ともなった「オリンピックコースⅡ」

そのリフト乗り場のたもとにある駐車場が大会専用になっています。

すでに、たくさんのスタッフの方々のサポートで、選手たちはリフトに乗り込もうとしていますね。


特にチェアスキーヤーは、スタッフ様々なのです(^^

チェアスキー本体とスキー板を、車いすの乗り換え場所へ移動。

そして乗り換えが終わった車いすを、通路を避けて整理整頓。

チェアスキーヤーがスムーズにゲレンデにアクセス出来るのも、

こういったサポートスタッフのおかげです。

本当にありがとうございます!(^^


インスペクション(コース下見)の時間に間に合うようにリフトに乗り込む0715時。

まだ空気は冷たくて、とても心地いい時間です。


もうすでに日は昇っているはずですが、雲が多くてそのお姿を拝むことが出来ません(^^;

天気図でも、高気圧と低気圧がせめぎ合っていて、気圧の谷が真上にいるような状態です。

そりゃ、雲は多くなるわなぁ....


コースへ上がる「国際第1ペアリフト」で10分程度揺られると、GSのスタートハウスはすぐそこ。

インスペクションの開始を今かと待ちわびる選手たちで混雑しています。


「オリンピックコースⅡ」には名物「タテッコ」といわれるバーンがあります。

最大斜度が35°という、圧雪車ですら自力で上がれないほどの急斜面!

















ここの最上部がスタート地点。


「タテッコ」を降りきると、

「馬止めジャンプ」の棚、

















咲花ウェーブ」の緩斜面と続いて、

















その先でフィニッシュです。


このコースの見どころはやはり、「タテッコ」の攻略でしょうね。

35°の斜度。

それはスキージャンプの助走路とほぼ同じの傾斜と言えば、その凄さがよく解りますね(^^

そんな斜面を、正確なターンと圧倒的なスピードで駆け下りてくる訳です。

ここが見ものじゃなきゃなんだ?って話です♪


でも、本当の勝負は「馬止めジャンプ」から先にあるとσ(^^は考えています。

言うまでもなくアルペンレースは、タイムを競う競技です。

つまり、スピードダウンは即、「致命傷」となります。


「咲花ウェーブ」は2つの大きな「うねり」がある、単調ではない「緩斜面」です。

ここでスピードを維持出来なければ、どんなに「タテッコ」でいい滑りをしても台無しになるんです。


また、スキー技術もさることながら、

滑走面に施したワックスの仕上がり具合も大切な要素。

いかにスキーを滑らせるかがこの区間のポイントです。


スタート標高1,192m、フィニッシュ標高904m、標高差288mというコースプロファイル。

そして、そこに1本目の戦場を設定したのは、ジャパンチームの志度コーチ。


ゲート数35、ターン数33。

標高差に対するターン数が11.5%で、

ルールで規定されている標高差(11%~15%)では少なめです。


曇っていた白馬上空にもお日様は顔を出し始め、

「PartlyCloudy(晴れ時々曇り)」と天候は回復傾向。


当然、気温は上がり始めました。

1本目、スタート地点で-4℃、フィニッシュ地点は-2℃。

これ以上暖かくなったらσ(^^はイヤになってグダグダ言い始めます♪


案の定、雪面も緩み始めて、

スタート地点では「Hard」なのに、フィニッシュ地点では、すでに「Soft」

多分、「馬止めジャンプ」あたりから緩んでいるんだろうなぁ....

ちょいと面白くない状況です(^^;


でも、ジャパンチームにとっては、好都合らしいんですよ。

なんでも、「ソチ」の雪質は日本によく似ているんだとか。

だとするならば、走り慣れたこのコースでの感覚は、最高のトレーニングになります。

みんな、鼻息が荒かったでしょうね(^^


では、1本目のスタート順を見ていきましょう!

女子Sitting(チェアスキー)クラス

2番 村岡桃佳選手
3番 大日方邦子選手
4番 原田紀香選手

男子Standing(立位)クラス

10番 三澤拓選手
11番 阿部敏弘選手
12番 伊藤史雄選手
13番 山崎福太郎選手
14番 春日寛人選手

男子Sittingクラス

15番 森井大輝選手
16番 夏目堅司選手
17番 狩野亮選手
18番 鈴木猛史選手
19番 谷口彰選手
20番 横澤高徳選手
23番 山本光文選手
24番 今野英樹選手  以上です!(^^


女子Sittingクラスは、成長著しい村岡選手が「元女王」の大日方選手に牙を剥く!

男子Standing、Sittingの両クラスの「代表組」の仕上がりはいかに?

そして、Sittingクラスでは韓国勢の襲撃をいかにかわすか?

最後の最後、土壇場での「代表」入りを賭ける横澤選手、そして、

「元ナショナルチーム」山本選手はどのように戦うのか?


いよいよ、ジャパラDay1、GSレースの始まりです!

その前に(^^


スタート前、前走者がコースの試走をするのですが、

その2人目に「RINPEI S」とありますなぁ。

野沢温泉の「りんぺー君」でしょうか♪


チェアスキーを始めてまだ間もない彼ですが、

森井選手を始め、みんなが寄って集ってビシビシと指導しているものですから、

メキメキと実力をつけ始めています(^^


この前走を引き受けたということは、

来期のレースデビューに備えてのことかな?(^^

また新たなタレントが誕生する予感♪


さあ、前走が終わり、女子のレースがスタートします!


....緊張の色が隠せない。

今期のジャパラは、彼女にとってその意味を大きく変えた。

大日方選手の引退と入れ替わるようにレースシーンに現れた村岡選手。


「代表」入り、そしてワールドカップでの初優勝。

国内の注目度は、これまでとは桁が違う。

スタートハウスから見える景色も、昨期とは違って見えているはずだ。

何よりも背中に感じる「元女王」のオーラに息苦しくなる。


無我夢中のスタート。

ようやく平静を取り戻したのは、しっかりと滑り降りたフィニッシュエリアであった。


「速くなったわねぇ」大日方選手は、「新旧交代」を喜ぶ気持ちを前面に出す。

村岡選手の成長を「知ってはいた」が、自らのタイムと比較して、さらに「実感」を強めた。

彼女に伝えられること、それはますます高度な要素を含んでいくことになる。


圧巻は三澤選手。

Standingクラスでは、頭ひとつ抜け出すタイムを叩き出す。


同じく「代表組」の阿部選手は、後塵を拝した形となった。


ここでもふたりの戦いは続いている。

伊藤、山崎の両選手は、「因縁」と言えるほど競り合うケースがほとんど。

1本目のその差はわずか0.51秒。

この戦いに終止符が打たれるのはいつのことだろう。


森井選手に死角無し。

万全の滑りで他を圧倒。


「庭」のようなこのコース、

森井選手の滑りに引っ張られるように加速していく夏目選手だが、プッシュしすぎたか。

DidNotFinish(途中棄権:DF)に終わる。


狩野選手。

森井選手を逃がしたくない。

地元長野でのレースはなおさらだ。

しかし、ターゲットのスピードは速すぎた。


食らいついたのは鈴木選手。

0.81秒差は射程圏内か。

いや、2本目は厳しい戦いになると感じていた。


「地元」という恩恵に最も預かったのは谷口選手だろう。

辛く長い自分との戦いに明け暮れたこれまでの遠征だったが、白馬のレースでは気分も一新。

トップとのタイム差は大きいが、狩野選手からは1.19秒落ち。

1本目は胸をなで下ろした。

歯車は確かに回り始めている。


悲運は、横澤選手を襲った。

クラッシュによる深刻なダメージは、

彼から以降のスタートの機会を奪ってしまう。

横澤選手のジャパラは終了した。


韓国勢、そして、しばらくレース活動から離れていた山本選手は、相次いでミスを犯す。

それに加え、ジャパンチームの仕上がりの良さが、彼らに絶望的なタイム差を与えてしまう....


んー、エントリーが少ないとはいえ、やはりドラマは生まれますねぇ(^^

では、1本目の順位を確認しましょう。


女子Sittingクラス

1位 村岡選手   0.00秒差
2位 大日方選手 2.52秒差
3位 原田選手   27.95秒差

男子Standingクラス

1位 三澤選手   0.00秒差
2位 阿部選手   1.68秒差 
3位 山崎選手   6.53秒差
4位 伊藤選手   7.02秒差
5位 春日選手  94.19秒差

男子Sittingクラス

1位 森井選手  0.00秒差
2位 鈴木選手  0.81秒差
3位 狩野選手  2.44秒差
4位 谷口選手  3.63秒差
6位 山本選手  10.69秒差
8位 今野選手  25.82秒差
 DF 夏目選手
    横澤選手

以上のようになりました(^^


さあ、2本目です(^^

コースセッターは韓国チームのコーチです。

ゲート数34、ターン数32、対標高差が11.1%と、さらにターン数が少なくなりました。

でも、かなりクセのあるセットになっているようです。

雪面の緩み方にもよりますが、1本目よりタイムは落ちるでしょうね。


少しずつ気温も上昇傾向。

スタート地点で-2℃、フィニッシュ地点は0℃。


雪面がスタート地点で「Hard」、フィニッシュ地点は「Soft」、天候は「PartlyCloudy」と、

1本目と同じ表現ですが、とどのつまりは「いい天気」。

雪面の「緩み」は進んでいるでしょうね。

1本目より、少しだけ優しく優しくターンする必要がありそうです。


そして、滑走面のケアも忘れてはなりません。

後半の緩斜面で勝負が分かれるということは、

その後半までにワックスを保たさなければなりません。


前日にレース用板を仕上げる訳ですが、

むゃくちゃ滑るむちゃくちゃ高価なワックスは、

レースの2本分、最後まで保たないことがよくあります。


そのため、スタート地点では改めてワックスを塗り直す選手もいるぐらいで。

すでに勝負は始まっているのがよくわかります(^^


その勝敗を決する2本目、スタートリストの確認です。

女子Sitting(チェアスキー)クラス

1番 原田選手
2番 大日方選手
3番 村岡選手

男子Standing(立位)クラス

1番 春日選手
2番 伊藤選手
3番 山崎選手
4番 阿部選手
5番 三澤選手

男子Sittingクラス

1番 今野選手
3番 山本選手
5番 谷口選手
6番 狩野選手
7番 鈴木選手
8番 森井選手

以上の順番でコースへ飛び出します!


そしてその前に、前走で飛び出すのはりんぺー君!

彼の滑りは見たかったぞ!!(^^

さあ、いよいよ2本目のスタートです!!!


....大日方選手の指導は的を射ていた。

まるで「実の妹」のような愛情をかけた、

豊富な経験に基づいた理論での指導は、

彼女のすぐ後ろにいる後輩を急成長させた。


これまでは「口頭」での指導だったが、

これからは実技を「見せる」ことが大日方選手に求められることになるだろう。

背中を見せてスタートすることは、大きな意味を持つ。


もちろん、村岡選手は、そのような指導方針の変更を直接的に聞いてはいない。

「見て盗む」。

それが出来るか否かが、彼女のこれからに必要なスキルだとよく理解しいている。

大日方選手の姿が見えなくなるまで、スタートハウスで目を凝らした。


45秒後。

直前に刻まれたレコードラインをトレースし始める。

そんなところを通ったのか?

目を疑う。

彼女のベストラインよりも、大日方選手はイン側を抉っている。

自分も「そこ」を通らなければ、「女王」には近づけない。

「ソチ」で出会うことになる巨大な壁を乗り越えるためにも。


伊藤-山崎戦。

もう何番の勝負が繰り広げられたか数え切れない。

今回は、時計が勝敗を判定したのではなく、山崎選手のコースアウトで結末を迎えた。


ワールドカップには参戦せず、国内での調整に集中していた阿部選手。

名レーサーは、どの場所であってもトレーニングの質を高めることが出来る。

クセのあるゲートセッティングを、難なくクリアしていく姿は、そのことを証明した。


2本目、逆に後塵を拝したのは三澤選手。

阿部選手から0.87秒遅れとなる。

1本目のマージンに助けられたが、自身の課題へ取り組む必要を改めて感じていた。


1本目、そろってタイムを落とした韓国勢、そして山本選手だったが、

今度は、そろって自らの持てる実力を表現した。

やはり、1本目の滑りが悔やまれる。


水を得た魚。

この時の谷口選手をそう表現しても憚るところはないだろう。

長いキャリアの中で培った実力はまだ褪せていない。

堂々のタイムでフィニッシュ。


2本目、狩野選手はそのタイムに届かず。

1本目のマージンを削られたが、リーダーズボードの最上段はキープした。

しかし、1本目に背負ったビハインドは、そう簡単に取り返せないだろう。

このあとのふたりが速すぎる。


GSで森井選手に勝つ。

それは「世界」で戦う全てのチェアスキーヤーが貪欲に求めている事だ。


鈴木選手もそのひとり。

今期は互角に戦うことが多くなってきた。

この2本目、逆転を狙う。


そのスタートを見送る森井選手。

全身全霊を賭けた戦い、そしてそれに勝利することを何よりの喜びと感じている。

例えその対象が誰であろうと、だ。


ここ白馬の戦場は、彼らにとっては「ソチ」と既に同義。

守る戦いは不要だ。


急斜面中盤にさしかかる。

見慣れたヘルメットのチェアスキーヤー。


猛史?


次の瞬間、強大な遠心力が、雪面から森井選手の体ごとコースから引きはがす。

ふたりの勝敗は、コースサイドの同じ場所で痛み分けとなった....


男子Sittingクラスは、こんな結末だったのでしょうか(^^;

「レースは水物」とはよく言ったものです。

では、その結末をおさらいします♪


女子Sittingクラス

優勝 村岡選手
 2位 大日方選手
 3位 原田選手

男子Standingクラス

優勝 三澤選手
 2位 阿部選手
 3位 伊藤選手
 4位 春日選手
 DF 山崎選手

男子Sittingクラス

優勝 狩野選手
 2位 谷口選手
 4位 山本選手
 6位 今野選手
  DF 森井選手
     鈴木選手
     夏目選手
     横澤選手  以上です♪


この内容をじっくりと見てますと、大変面白い事が解ります。


2本目の大日方選手の滑りは、素晴らしいタイムでした。

全選手を通して2番目スタートの大日方選手が滑った跡は、

はっきりくっきりと村岡選手には見えていたはずです。

その「最速ライン」をきっちりとなぞった村岡選手は、大日方選手に遅れること0.3秒。

これはものすごいことですよ。

村岡選手の吸収力と表現力、マジッパねぇ(^^


男子Standingクラス優勝の三澤選手は、

ワールドカップでも痛感した「2本揃える難しさ」を改めて感じた事でしょう。

男子Sittingクラス優勝の狩野選手も同じ思いだったに違いないはず。


ところで、何よりも谷口選手が調子を取り戻し始めたことが喜ばしい(^^

これをきっかけに「ソチ」まで駆け抜けて欲しいものです♪


2本目の森井選手と鈴木選手は、どんなDFだったのかなぁ?

「見てきたように」書きましたが、本当のところは解りません。

このあたりが「観戦記」の限界ですね(^^;


まあ、妄想主体で嘘八百の「観戦記」、そのあたりは割り切って頂ければ幸いです♪

では、次回はDay2のSlalom(回転:SL)レースの模様をお送りします!

2014年1月28日火曜日

難しいなぁ....

昨日から今日のお昼まで、ポカポカ陽気が続きました♪

こんな日には、ずいぶん前のリリースですが、思い出す曲があります。


本当に、仮病使ってサボりたいものです(^^


「くらぁっ!ジャパラ始まってんだろうがよ!観戦記をとっとと書きやがれ!」

....申し訳ありません(^^;


「ジャパンパラ冬季競技大会アルペンスキー競技(通称:ジャパラ)」、

2014ジャパンパラ アルペンスキー競技大会

大会そのものは、本日が最終日、すでに無事に終了しているようです♪


ジャパラは、アジアカップというIPC公認レースですが、

日本障害者スキー連盟主催の「国内戦」も兼ねています。


何が違うかって?

IPCレースは、VisuallyImpaired(視覚障害:VI)クラス、Standing(立位)クラス、

Sitting(チェアスキー)クラスの3クラスのみで開催されるのですが、

「国内戦」はそれらに加えて、 Intellectual Disability(知的障害:ID)クラス、

Deaf(聴覚障害:D)クラスがエントリー可能になっています。


「世界」での所管は違うけれども、

日本国内では、一緒にレースをしましょうよ♪

と言うことで、何年か前から併催されるようになりました。


それは大変いい事だと思うんです。

「身体」障害者とはいえ、「知的」や「聴覚」との交流はなかなかないですからね。


さて、タイトルの「難しさ」ついてなのですが....


まずですね。

エントリーが非常に少ないんです。

ナショナルチームであれば、全員参加が「義務」のようなものですが、

それに続こうとする「居残り組」がほとんどいない!(^^;


例えて言えば、一流プロ野球選手や日本人メジャーリーガーがいるけれど、

それらに憧れ、目指そうとする子供たちがほとんどいない、というところでしょうか。

なおかつ、プロ入り間近な高校球児は皆無!(^^;


エントリー選手のうち、はるばるいらっしゃった韓国選手数名と、

ジャパンナショナルチームメンバー、そして「元」メンバーを除けば、

男女あわせてたったの4名のみなんですよ(^^;

言葉を悪く言えば、「ナショナルチーム内の模擬戦」になっちゃってる訳です。


本当はね、ジャパラの「観戦記」は、ナショナルチームVS居残り組という、

「下克上」の構図を書きたかったのですけども、今期のジャパラはそうはならなかったようで(^^;


ワールドカップは世界各国から男女100名の選手がエントリーしていますから、

リザルト見ているだけでも、数々のドラマが頭に浮かんできます。

ところが、このジャパラはそんな状態ですから、どうにも書きづらいのです(^^;

どんな書きぶりが出来るかなと、頭を悩ませているところです♪


ところで、国内にチェアスキーヤーはまだまだたくさんいらっしゃるはずですが、

「レース志向」という方は少ないのでしょうかね?

「勝負にこだわる」ところまではいらないとしても、

「レースを楽しむ」という方を増やさないといけませんなぁ....


「エントリーもしてないヤツが偉そうに言うな!」

そう言われるとぐうの音も出ません。

もう一度始めたいのは山々なんですけどもムニャムニャ....(^^;


やっぱりσ(^^もエントリーして、なおかつ、

「レースしようぜ!」と声を掛けていかないといけないのかなぁ....


「放っときゃいいじゃん?」

そんな訳にもいきますまい。

ねぇ?(^^;ダレニドウイヲモトメテンダ?

2014年1月26日日曜日

「観戦記」お休み中....

本日は、一周年です♪














あの日から、もう1年がたっちまった(^^;






















この1年、姫様のお世話は妻に任せっぱなしで、

父親らしいことなんて何もしてなかったなぁと反省しきり(^^;

それでも、σ(^^の顔を見て、微笑んでくれる姫様にベタ惚れ♪


人並みの幸せを味わえる、本当にありがたいことです(^^

また、明日から頑張っていきますか♪

2014年1月24日金曜日

2本揃えることの難しさ:20140120CopperMt.GS2....

障害者アルペンスキーワールドカップのリザルトとにらめっこしていると、

心はレース会場に行きっぱなしです♪

現実世界に残っている体は、ただの抜け殻です(^^


伝え聞くところによれば、ジャパンチームはすでに帰国済で、

明日から開催されるジャパンパラ大会への準備万端だとか?

σ(^^はまだ、CopperMt.スキー場にいますよ!


ということで、毎度おなじみの、

「山本新之介のワールドカップをまるで見てきたような観戦記」、

今日も元気いっぱいお届けします!(^^


フィニッシュエリアから見渡せる風景は、相も変わらず同じです。

4日間通して、この場所でドラマの結末を迎えてきました。

名残惜しいもので、今日は最終日。

明日になれば、ここは「夢の跡」となるんでしょう。


精一杯、本日のレース、GiantSlalom(大回転:GS)を堪能したいと思います!

リザルトをご覧になりながらお楽しみ下さい(^^ (女子 男子


いつもの「Rosi's」コース、

スタート標高3,310m、

フィニッシュ標高2,973m、

標高差337mの特設レースバーンです。


今日は雲が多くなっていますねぇ。

「Partly Cloudy」という表記、日本語にするにはなかなか難しい(^^;

「部分的に曇り」と直訳するのは簡単ですが、空の3割~4割ぐらいに雲が広がっているのか、

時間的に「Partly」、つまり「晴れ時々曇り」なのか....英語とは難しいものです。


昨夜は、ゲレンデが寒気にさらされることもなく、冷え込みも少なかったようです。

1本目の記載はありませんが、2本目のそれから考えると、そう考えてもいいのかな。


雪質も「Packed」になっていますのでそんな固くなく、

「圧雪しましたよ」というぐらいでしょうか。


さて、1本目のコースセッター。

この「観戦記」では度々ご登場のGRAHAM Steve氏(AUS)がお務めでした。

ゲート数38、ターン数37、標高差に対するターン数が11%と、ルール上、最少の設定です。
                                 (ルールでは標高差の11%~15%)

σ(^^は相性のよかったGRAHAM氏のセット、

ジャパンチームはどのように攻略するのでしょうか?

では、さっそく、スタートリストを確認しましょう!


女子選手は11カ国32名。

Sitting(チェアスキー)クラス

32番 村岡桃佳選手


男子選手は17カ国71名。

Standing(立位)クラス

53番 三澤拓選手
59番 東海将彦選手
70番 山崎福太郎選手

Sittingクラス

76番 森井大輝選手
79番 狩野亮選手
81番 鈴木猛史選手
90番 夏目堅司選手
99番 谷口彰選手

以上のようになっとります(^^

本日のお休みは小池岳太選手ですね。


このレースが、実質的に「ソチ」までの最後のトライアルとなります。

「代表」を賭ける局面はすでに終了しておりますが、

国内の調整局面に向けて滑りやマテリアルのチェックなど、

レースの現場で確認出来るのはこのレースが最後。


しかも、種目は「スキーの基本」と言われるGSです。

今の問題点の洗い出しを、しっかりと行う事が出来るか。

選手たちはいつも以上に気を遣っていることでしょう。


もちろん、ジャパンチームの連続メダル獲得も掛かっています。

その快進撃が続くのか?最後のメダルは誰がもぎ取るのか?

いろんな見どころのあるGS2戦目。

間もなくスタート時刻を迎えます!


....「あっという間だったなぁ」

10月のゾルデン合宿から3回の遠征。

村岡選手にとって日々の出来事が全て、初めての経験だった。

積み重ねるトレーニングとレース。

その都度、新たな発見と勉強を繰り返した。


正直、それらの糧を全てを自分の技術に繋げるところまでいっていない。

「宿題」が積み上がっているという感覚に近い。

しかし、楽しかった。

帰国してからのトレーニングで、その「宿題」をひとつずつ片付けていくのも待ちどおしい。


このGSでも、どんな「宿題」が得られるだろうか。

最終日、最高の気分でスタートを切ったというのも彼女にとって貴重な経験になったはずだ。


三澤選手も気分よくスタートを切ったひとりだろう。

Slalom(回転:SL)ほどではないにせよ、

技術系種目のGSを「やっつけたい」という思いをうまく昇華させた。

でも、もう少し上に行けたかなと、リーダーズボードを眺める。


固くない雪だと、それはそれで古傷を気にしなくてはならない東海選手。

固くグリップのいい雪面だと、得られる反応がピーキーすぎて神経質になるが、

荒れてくる雪面だと、ブーツを介して伝わる衝撃も大きくなる。


「ソチ」の雪も柔らかいはず。

いま一度、足の状態を確認しながらのランとなった。


雪質の変化に戸惑っているのは山崎選手も同じ。

ゲートセッティングが毎回変わるアルペン。

しかも全く同じ雪質のレースはない。


今は「引き出し」の数を増やしているところだが、その作業が追いつかない。

「引き出し」の図面を書くのが精一杯といったところか。


さすがに疲れが溜まっているのか、

森井選手はコースサイドでDidNotFinish(途中棄権:DF)。

現在、GSポイントランキング3位。

さらなる積み上げをしたかったが、弘法も筆を過った。


狩野選手はこの北米シーズでは好不調の波にもまれている。

この1本目は上げ潮のようだ。

まずまずのタイムでフィニッシュする。


それに遅れること0.06秒の鈴木選手。

エース不在となる2本目で、狩野選手とともにポディウムを狙う。


夏目選手は精彩を欠いたひとり。

大きく出遅れた1本目、有終の美を飾るには厳しい状況となってしまった。


肉体だけではなく、精神的にも疲れ果てている谷口選手。

思うような滑りが全く出来なかった1本目。

しかしなお、モチベーションの糸は切らしていない....


こうやって見てますと、各選手の相当な疲労が、

リザルトの行間に見えてくるような気がします(^^;

みんな、柔な鍛え方をしていないのですが、

それでも体力、精神力をすり減らしていくという事なんでしょうねぇ。

「世界」を相手にするというのは、本当に厳しいものです。


では、1本目の結果を見てみましょう!

女子Sittingクラス

4位 村岡選手 ?秒差
(1本目ラップ(トップタイム)の表記がないので計算出来ません^^;)

男子Standingクラス

 7位 三澤選手 3.30秒差
15位 東海選手 4.77秒差
27位(ぐらい?^^;)山崎選手 ?秒差

Sittingクラス

 5位 狩野選手 0.89秒差
 6位 鈴木選手 0.95秒差
24位 谷口選手 8.28秒差
  DF 森井選手

以上のようになりました。


ところで、σ(^^は常々、パラリンピックは「世界最速」を競う大会だと思っています。

4年に一度、たった1レースで勝敗を決める。

「魔物が棲む」といわれるほど、激しい一発勝負の世界です。


一方、ワールドカップはそのシーズンの「世界最強」を決定するシリーズだと思うんです。

長いシーズン、数多くのレース。

一回勝ったぐらいでは、チャンピオンシップに手を掛ける事なんて出来ない。

種目別に、安定した結果を出し続けてようやくタイトルに挑戦する権利が得られるのです。


「速さ」に加え、それを維持させる「体力」、「精神力」、

さらには活動を維持出来る「資金力」、「環境」....

そのいずれかひとつが欠けてもなりません。


パラの「派手さ」は無いのですが、

真の「強者」はワールドカップチャンピオンなのです。


そして、全ての種目のポイントを全て合計する、

オーバーオール(種目総合)タイトルを手にすることが出来るのは、

「最強」にふさわしい、世界でたったひとりのアスリートだけなんです。


リザルトを追っかけていると、その辛さと苦しさ、

そしてその向こうにある栄光がありありと目に浮かぶような気がしています(^^


さて閑話休題。

2本目の準備が粛々と進んでいますよ♪

どんなコースになったか、見ていきましょう!


コースセッターはオーストリアチームのコーチです。

ゲート数38、ターン数37、対標高差が11%と数字の上では全く同じ。

ところが、どうもセッターのクセが大きく違うようですねぇ。

さすがスキーの本場オーストリアと言ってもいいかも。


とにかく、難しい!

ターン弧の大小にメリハリがあって、斜面の特徴を最大限に活かした設定。

当然のように仕掛けられた数々のトラップ。

これは大変そうだぞ(^^;


1本目のセッター、GRAHAM氏はオーストラリア。2本目はオーストリア。

国名こそわずかな違いですが、設定された戦場は、その性格が大きく違います。

選手たちはどのように戦うのか?


2本目のスタート順はこうなりました!

女子Sittingクラス

6番目 村岡選手


男子Standingクラス

1番目 東海選手
8番目 三澤選手
27番目 山崎選手


男子Sittingクラス

10番目 鈴木猛史選手
11番目 狩野選手
19番目 夏目選手
24番目 谷口選手    以上!(^^

さあ、泣いても笑っても、北米シリーズ最後のランが、いま始まります!


....最後に賭ける底力というものは、時に素晴らしい結末を引き寄せる。

女子Sittingクラス4番目スタートのSTEPHENS Laurie選手(USA)がこの2本目に気を吐いた。


地元開催のレース。

そのラストラン。

追い風に乗るとはこういう事か。


そのタイムを耳にした村岡選手は感嘆しきり。

まるで人ごとのような受け止めはリラックスしている証拠でもある。


地元勢は続く。

VICTOR Stephani選手(USA)。

ベテランだが、地元での高ぶり方はやはりアメリカ人、とも思える。


気負うことは何も意味しない。

村岡選手は静かにスタートバーを押した。


やっぱり忙しいコースだ。

ともすれば、次々と現れるゲートを目で追いがちになる。

それじゃダメなんだ。

しっかりとセンターラインを意識しなおす。


急斜面の途中、VICTOR選手が天を仰いでいる。

攻め過ぎちゃったのかな。

高ぶりがもたらす結末は、哀しいものに終わることもある。


村岡選手は自分を見失っていなかった。

ひとつひとつ、丁寧に攻めた。


まだまだ荒削りだが、難しいコースであればあるほど彼女の武器が威力を発揮する。

その小さな体は、誰にも表現出来ない「深いバンク角」という恩恵を受ける。

他の選手が苦しむターン弧でも、彼女にとってはレーシングスピードを維持出来るのだ。

フィニッシュラインを断ち切るまで、その威力を維持した。


STEPHENS選手の先制攻撃を、0.46秒差であっさりとかわす。

リーダーズボードはその小さな選手の名を大きく表示していた。


その後の数分間。

村岡選手は取り残されたような感覚に陥る。

誰も滑り降りてこないのだ。


マシンガンのようにけたたましい英語でアナウンスされているが、

その内容は、まるで聞き取れるものではない。

何が起こったの?スタートが止まってる?


「桃佳!おめでとう!!」

我に返してくれたのは、スタッフの激しいハグだった。

「あとのみんな、DFだってよ!」

....するとどうなるの?

やはり、すぐには理解が出来なかった。


東海選手には、ありがたいスタート順だった。

Standingクラス最初のスタート。

雪面が荒れる前のラン。

実際に滑ってみても、足への負担は少ない。

おかげで、このトリッキーなコースでも、積極的に古傷との「相談」が出来ている。

この2本目は、貴重なトライが出来たことを喜んだ。


難しいコースなら、持ってこいだ。

三澤選手にとって、ターン勝負が出来るのは嬉しかった。

疲労はピークにきているが、最高のパフォーマンスは楽しんで滑ることから生み出される。

最後の最後に満たされた気がした。


最後の最後。

ちょっと頑張ってみたんだけど。

いまの自分へ挑戦した山崎選手。

その結末はほろ苦いものとなったが、

作るべき「引き出し」の図面が増えたことを素直に喜んだ。


大きくジャンプアップする選手たち。

男子Sittingクラスでは、1本目に苦戦した選手たちが次々と好タイムを叩き出す。

CALHOUN Heath選手(USA)、

van der KLOOSTER Kees-Jan選手(NED)、

KREITER Georg選手(GER)、

WALKER Tyler選手(USA)。


鈴木選手もそのひとり。

1本目6位から、大きく上を狙うタイムアップに成功した。

リーダーズボードのトップに立ち、後続を待つ。


その後は、状況が一変する。

順位を落とす選手が続出した。


狩野選手もそのひとりだった。ポディウム圏外に沈んでしまう。


続くRABL Roman選手(AUT)も、KUNZ Christoph選手(SUI)も。

KUNZ選手は、1本目のマージンにかろうじて守られ、鈴木選手の上に立つ事が出来た。


1本目2位のFRANCOIS Frederic選手(FRA)、コースセットに悩まされた。

飛び込んだフィニッシュ、刻まれたタイムは鈴木選手と同じ。

かろうじて表彰台を確保した。


0.95秒差。

鈴木選手は、そのビハインドの結末を覚悟した。

1本目ラップのPETERS Corey選手(NZL)。

もっとも栄光に近い選手のはずだった。

しかし、彼を迎え入れたのは6位という立ち位置だった。


夏目選手、谷口選手は、ポジションアップに成功した選手たちだ。

もちろん、満足などしていないだろうが、

ワールドカップポイントを得て、北米シリーズのピリオドを打つことが出来た....


まずは、何はともあれ声を大にして言わなければなりません。

村岡選手、優勝おめでとうございます!!
                                           ございます!!
                                         ございます!!
                                          ございます!!
                                            ございます!!
                                                 ....

ワールドカップデビューイヤーで初優勝を飾るなんてなんて、

あなた一体どこのスーパーヒロインですか?(^^


そりゃ、口はばからない人は言うと思います。

「上が全部転けてくれたからだろ?」と。

でも、そんなこたぁ、好きに言わせときゃいいんです。


上位陣全てがいなくなるような難しいコースを、

きっちりしっかり滑りきった訳ですから、

この結果は実力以外の何モノでもありません(^^


それに、「負けに不思議な負け無し」です。

負けてしまった選手たちには、負けてしまうだけの理由があるんです。


村岡選手は負けなかった。

だから、栄冠を手にすることが出来た。

単純明快で素晴らしい勝利です(^^

繰り返しですが、本当におめでとうございました♪


鈴木選手も、「天晴れ」です(^^

ジャパンチームの北米シリーズ、

全戦メダル獲得のトリをしっかりとお務め。実に素晴らしい♪


あとは、遠征での行動の中で最も難儀な「パッキング」という作業が残っていますが、

うまく荷物を丸めて、みんな無事に帰国してくださいね(^^
                           モウキコクズミデスケドネ....

さて、タイトルにも書いている「2本揃えることの難しさ」について少し書いて、

北米シリーズの「観戦記」を終わりたいと思います。


アルペンのGSやSL、つまり技術系レースは2本滑走の合計タイムで競われます。

そのため、タイムを「2本揃える」事が必要だとよく言われます。

どちらか1本だけがよくても勝負になりませんので、

当たり前っちゃあ当たり前なんですけどね。


これがそう簡単にできるものではないんですよね(^^;

σ(^^;の10年を超えるレースキャリアの間に、

満足出来る揃え方が出来た事なんて、数えるぐらいしかありません。

まあ、その程度の選手でしたから、その程度の成績しか残らなかった訳ですが....


だからこそ、しっかりと勝ち続けられるトップ選手たちには、脱帽します。

その秘訣を是非ご教示頂きたいものですが(^^


とは言え、教えてもらったところで、

電卓を叩くような簡単さでややこしい計算が出来るというようなものでもなし。

自分の中でその方法を見つけ出さなくてはならなかったのですが。


今回のGS、リザルトをよくよく見ていると、

上位で2本揃えられた選手はそんなにいませんでした。


女子Sittingクラス、

村岡選手以外のポディウムを狙える選手は全て、2本のうちどちらかがダメでした。


男子Standingクラスでは、

優勝したLANZINGER Matthias選手(AUT)と、

2位のGAUTHIER-MANUEL Vincent選手(FRA)、

あとは4位のPFYL Thomas選手(SUI)ですか。

その3人を除いて、上位陣に安定的に滑り降りた選手はいません。

そんな中、三澤選手はしっかりと2本揃え、7位という好成績を出しました(^^


男子Sittingクラスはというと、この傾向が非常に顕著です。

優勝したKUNZ Christoph選手(SUI)は1本目3位、2本目5位と、

けっして「いいタイム」で滑ってはいまんでした。でも、堂々の優勝です。


鈴木選手は1本目にロス。

同着2位のFRANCOIS Frederic選手(FRA)は2本目で。


まあまあ、2本揃ったねと言えるのは、

11位のBONADIMANN Philipp選手(AUT)まで順位を下りなくてはなりません。


そして、2本揃えられなくて最も涙をのんだのは、

6位のPETERS Corey選手(NZL)と、

7位のKREITER Georg選手(GER)です。


PETERS選手は1本目ラップ、KREITER選手は2本目でラップ。

にもかかわらず、そのもう一方のランで大きく順位を落としているんです。


こういったことにどのような背景があったんでしょうね?


コースセットの好き嫌いもあるでしょう。

天候の変化が雪面に影響を与えたということもあるでしょう。

2本それぞれのスタート順も大きく影響するでしょうし、

メンタル面や技術面での弱点が出てしまうということもあるでしょう。


そして、アルペンレースは「相対的」な結果しか出ませんから、

誰かがダメなら誰かが上に行くという状況になるはずですが、

このGSのように、こうまで2本の不安定さが出る事なんて、そうそうありません。


一体、現地で何が起こっていたのか?

機会があれば、チームの誰かに話を聞いてみなきゃ、です(^^


あと、これは蛇足ですが。

わざと1本目で「手を緩めて」滑る方法があるとおっしゃる方がいます。

通常、2本目のスタート順は、上位15位(健常者なら30位)の順番を逆転させて決めます。

2本目は少しでも荒れていない雪面で勝負したいという考えから、

1本目は「遅く」滑るんだという考え方です。


でも、これってどうなんでしょうね?

わざと遅く滑るということは、その分、余分なビハインドを背負わなければなりませんし、

1本目15位を狙って、結局16位になっちゃったなんてマヌケなこともあり得ます。

それに、15位を狙うとしても、そのターゲットタイムが何秒かなんてわかるものですか?


それに、1本目に遅く滑って早いスタート順を確保したとしても、

2本目にちょー苦手なセットが立つなんて事もあるでしょう?


もうひとつ。

そもそも、選手全員が15位を狙ったとして、そんなレースは楽しいですか?(^^;


早いスタートが有利なんて、「結果論」でしかないと思うんです。


やはり、1本目も2本目も常に「全開」で、そして好タイムを揃える、

これがアルペンレースの醍醐味だと考えます。


で、2本揃えるにはどうすりゃいいの?

σ(^^;ごときでは正解は解りません。


やっぱり、1本目も2本目も「限界まで集中」して、

どのようなコースセットでもそつなく滑り降りる事が出来る「引き出し」をたくさん用意して、

やるべきことを淡々とこなす、まるで「機械」のような「無機質」さが必要ではないでしょうかね?


こう考えると、やはり「強者」と言われる選手たちは、

常人の理解を超えたところで勝負しているんだなとつくづく感じます(^^


さあ、これでσ(^^も「帰国」出来ます♪

次は、白馬八方尾根スキー場へ移動だ(^^


ではまた、ごきげんよう!

2014年1月23日木曜日

昨日の今日:20140119CopperMt.SL2....

日々の時間の流れというものは、その瞬間だけに意味があるものではなくて、

昨日、一昨日、はたまたそれ以前からと、何らかの影響を受けているものです。

ああ、考えてみれば、あの時こうだったから、今はこういう流れになっているんだなと、

思われる事も多いのではないでしようか?


人間とは、感情の生き物。

経験したことをどのように活かすのかはその人次第。

前向きに生きるのか、後悔に押しつぶされそうになるのか....


σ(^^;は後者の場合が圧倒的に多いですねぇ。

で、よく呟くのが「前向きに!(Let bygones be bygones)」という言葉。

それはそれ、これはこれと、元気よく生きていきたいものです♪


障害者アルペンスキーワールドカップCopperMt大会も3日目。

Slalom(回転:SL)レースの2戦目を迎えます。


「見てきたような観戦記」は、

後日判明する「事実」の前に立ち尽くすことが多いのですが、

それはそれ、これはこれ(^^;

「物語」は滔々と進みます♪


まずはリザルトをご確認願います(^^ (女子男子


昨日今日は週末ということもあるのでしょう。

晴天続きのCopperMt.スキー場には、

この日もフィニッシュエリアを埋め尽くす観客で賑わっております!


普段、アルペンレースをそんなに見ない一般スキーヤーの方も、

観戦に訪れているようですね(^^

昨日に苦杯をなめた鈴木猛史選手の大応援団は、今日こそはと気勢を上げていますね(^^


使用されるコースは昨日と同じ「Rosi's」コースの特設会場。

スタート標高3,120m、フィニッシュ標高2,973m、標高差147mのレースバーンです。


気温はスタート地点で-3.3℃、フィニッシュ地点では-2.8℃とやや暖かいものの、

雪面状況は「Hard Packed」のまま。

昨夜はよく冷え込んだのでしょうね。

で、お日様が頑張って、ぐんぐんと暖かくなってきたと。

そんなところでしょうか。


コースセッターは....あれれ?

女子と男子のリザルトのコースセッターの名前が入れ替わっているぞ??

これではどちらが1本目か解らない!(^^;

どうしようか....


1本目にイギリス選手のDidNotFinished(途中棄権:DF)が多くて、

オランダ選手のDFは2本目が多い。

てことで、1本目はオランダチームのコーチがセッターをお務めということにします!
                                           ナンテイイカゲンナ....(^^;

ゲート数は45、ターン数が44。

標高差に対するターン数は29.9%という設定です。

この1本目もかなり少なめのターンで競われるということですな。


では、いつものようにスタートリストの確認です!


女子選手は11カ国32名。

Sitting(チェアスキー)クラス

29番 田中佳子選手


男子選手は16カ国67名。

Standing(立位)クラス

42番 三澤拓選手
62番 東海将彦選手
70番 山崎福太郎選手

Sittingクラス

80番 夏目堅司選手
82番 鈴木猛史選手
86番 森井大輝選手
90番 狩野亮選手
95番 谷口彰選手   です。


村岡桃佳選手と小池岳太選手はエントリーをしていませんでした。

トラブルがあったということではなく、休養のため調整日という事であると信じたい(^^


スタート付近では、レース前の独特の賑わいを見せています。

この時間が大好きという選手もいるでしょうね。


何てったって、アルペンレースでは自分だけがコースを占有出来るのです。

普段のフリースキーでは絶対に味わえない感覚。

これを待ちわびる時間はとても楽しいものでしょう♪


ジャパンチームも、和気あいあいとこの雰囲気を楽しんでいます。

....あれ?夏目選手の姿がないですねぇ。

エントリーはしていたけど、急遽、「調整」に入ったということかな?

こちらも「トラブルでお休み」でない事を祈ります。


さあ、いよいよ女子Sittingクラスのスタートです!


ジャパンチームの1番機、田中選手。

その前には「女王」の背中。

その微笑みには引き込まれてしまうが、

そんな自分を許せない感覚にも陥る。


この「女王」を引きずり落としたい。

しかし、田中選手の歯車は噛み合わないままだ。

リーダーズボードに表示されたタイム差は、目眩がするほどの開きがあった。


得意のSL。

Standingクラス2番手という好順のスタート。

今回の遠征最後のSLレース。

またとないチャンス。

珍しく三澤選手は高ぶっている。


その体をしなやかにコースへ放り出した。

ゲートのリズムが彼の心臓の鼓動とシンクロする。

それほどまでに違和感のない滑り。

この後、30名以上の選手がスタートするが、

彼の上に躍り出た選手は3名しかいなかった。


「ちょっと違うな....」

東海選手の両足は、

インスペクション(コース下見)で作り上げたイメージどおりに動いていなかった。

まだどこかで、「無意識」のブレーキを掛けてしまっているのか。

まだ調整が必要なようだ。


山崎選手の小脳は実に優秀だ。

大脳に蓄積された「経験」という名の情報の中から、

その瞬間に最も効果的な部分を抽出し、

余すところなく体をコントロールしている。

しかし、「経験」以上の働きはしない。


それでも、新たな経験を元に新たな情報が蓄積されていく。

昨日より今日、今日より明日。

その歩みは確実に前に進んでいた。


前日の優勝者は、コースサイドへと消えていた。

勝ち逃げされたという、「切なさ」に似た感情が鈴木選手を襲ったが、

次々と襲いかかるライバルのひとりが消えただけだ。

いちいち、誰かの動向を気にしてはいられない。


むしろ、「あの数mm」に影響されて負けたこと自体に、大きな憤りを感じている。

今度は、その「数mm」すら制してみせる。

この1本目、彼の滑りを目撃した者は幸福である。

「最速」の称号を手にした者だけが放つオーラを、肌で感じることが出来たからだ。


39.49秒。

鈴木選手のタイムを耳にした彼は、少し呆れた。

しかし、どのような状況も「強み」に変えていける数少ない選手のひとりが、

森井大輝という男である。

鈴木選手のすぐ後に続く順位で1本目を終えた。

そのタイム差は、彼の「伸びしろ」であると理解した。


狩野選手自身、悪くない滑りをしたと思っている。

圧倒的な大差をつけられたのは、ラップ(トップタイム)が速すぎたからだ。

悪く考えがちな感情を押し殺す。


昨日は昨日。

割り切るのは谷口選手。

わずかだが見え始めた光の方向を、この1本目は確認出来た。

もう少しだ。

しばらくの間、彼はリーダーズボードを眺めていた....


鈴木選手の滑りには、森井選手でなくとも呆れますな(^^;

唯一の39秒台。2位の森井選手とは1.33秒差。

鈴木選手を凌ぐには、いったいどのような方法があるんでしょうかね?


では、あらためて1本目の順位を見てみます。


女子Sittingクラス

 7位 田中選手 10.8秒差


男子Standingクラス

 4位 三澤選手 0.54秒差
14位 東海選手 4.25秒差
21位 山崎選手 9.12秒差

Sittingクラス

 1位 鈴木選手 0.00秒差
 2位 森井選手 1.33秒差
 8位 狩野選手 2.76秒差
15位 谷口選手 5.65秒差       でした♪


2本目、三澤選手のポディウムなるか?

Sittingクラスはジャパンチームのワンツーフィニッシュが焦点!

はてさて、どのような結果となりますやら(^^


ところで、鈴木選手のバケモノじみた強さって、いったいどこから来るんでしょうかね?

先日に放送されたNHK-Eテレ「ハートネットTV」で、その速さが紹介されていました。


「世界を震撼させる脅威の神業」として、「逆手」でゲートをくぐり抜けるシーンの解説。

まあ、その「神業」を使っている事だけが鈴木選手の速さの秘密ではないのですが(^^;


手前味噌ですけど、その番組の製作スタッフから電話取材がありまして、

「逆手」がSLレースでどれだけ有効かということを、だらだらと、得意げに話しましたσ(^^;

それが番組で使われたというのは、ちょっぴり嬉しいことです♪

もしかしたら、そんなことは誰でも知っていて、

たまたま、σ(^^;が同じ事を話しただけなのかも知れませんが....


で、なぜ「逆手」が速いのかを補足しておきたいと思います。


大抵のチェアスキーヤーがSLレースを攻める場合、ゲートポールは体に当てていきます。

一方、「逆手」の場合は、アウトリガー(両手に持っているヤツ)でポールを倒します。


SLのような細かいリズムでターンを繰り返す場合、

どうしても「外力」を利用して「切り返し」のきっかけを作っているのが現状で、

その「外力」とはつまり、ポールから受ける「抵抗」そのものなのです。


では、その「外力」を利用したターンで、「逆手」と「通常」との差は何かということですが。

「逆手」の場合、約1m前方で「通常」より早くポールに接触します。

SLでのターンスピードが何km/hかはっきりと知りませんが、

それが30km/hだった場合、1mを進むのに掛かる時間は約0.12秒。

この時間だけ、早く切り返しを始めることが出来て、

その分だけ次のターンに対して早い「仕掛け」が可能になります。


早い仕掛けが出来るということは、次のターンに対して余裕が出来るだけではなく、

ターン弧を「縦長」にして落下速度を上げることにも繋がります。


1ターン当たり0.12秒仕掛けを早くすることが出来たら、

フィニッシュまでどれ程の差に繋がることになるでしょうかね(^^


今回のSLレースの1本目の場合ですとターン数は44。

0.02秒ずつタイムを短縮させたとしても、その差は、0.88秒。

これはもう、「圧倒的」と言ってもいいでしょう♪

鈴木選手の強さの秘密は「逆手」にありというのがよく解ります。


じゃあ、誰も彼も「逆手」で滑ればいいじゃん?おっしゃるとおり(^^

でも、そう簡単には出来ない理由もあります。


ほとんどのチェアスキーヤーが初心者の頃に教わるのが、

アウトリガーを利用したターンです。

これは、アウトリガーから受ける抵抗を利用して、

体の重心を回転またはそのバランスを左右に崩してターンさせる方法です。


一方、鈴木選手の重心移動は、

重心付近の体幹バランスを自ら移動させることで行います。

つまり、鈴木選手はアウトリガーを雪面に接触させていなくても、

ターンを始めることが出来るのです。


これは、アウトリガーに頼って滑っているチェアスキーヤーには絶対に出来ないことで、

SLレースのような特殊な局面では、とても大きな差になるということです。


こう考えると、鈴木選手の「速さ」の秘密というのは、

体を含めたコントロールがずば抜けているからであって、

「逆手を使う」から早いのではなく、

「逆手が使える」というだけ、ということがよく解ります。

以上、「ろぼ理論によるちょーテケトーな逆手解説」でした(^^


おっと、こんな事をウダウダ書いている間に、

2本目のスタート時刻が迫ってきました。

駆け足で2本目のコースプロファイルなどを確認します。


天候は変わらず「Sunny」

気温も1本目と変わりません。


コースセッターは、誰がなんといおうとイギリスチームのコーチです(^^;

ゲート数44、ターン数42、対標高差28.6%。

ターンの数が少なくなっていますが、簡単なコースという訳ではなさそうです。


ゲートが立てられている横の間隔、つまり「振り幅」が広くなっているようです。

結構、窮屈にターンをしなければなりませんねぇ。

うわ!女子Standingクラスが始まっちまった(^^;


本目のスタート順はこうです!

女子Sittingクラス

 2番目 田中選手


男子Standingクラス

12番目 三澤選手
16番目 東海選手
23番目 山崎選手


男子Sittingクラス

 1番目 谷口選手
 8番目 狩野選手
14番目 森井選手
15番目 鈴木選手   です!


よかった、田中選手のスタートに間に合った(^^;

それいけぇ!佳子ちゃん!!


....違う。こんな滑りをしたいんじゃない。

田中選手は固い硬い雪面と戦い、呟いた。

もう一度、何もかもを組み直そう。

フィニッシュエリアで再起を誓う。


三澤選手が背負うビハインドは0.54秒。

完全に、目指す高みが射程圏内に入っている。

このスタートバーを押し込めば、そこは「彼の世界」のはずだった。


「落ち着け」

どこからか声が聞こえたような気がしたのは、

気負いすぎた滑りが荒くなってきたことに気がついてからだ。


いつの間にか、リカバリーを続けていた。

いったん失ったエッジグリップは、彼の意に反して戻ってこない。

同時に、大きな時間を失った。


絶対に無理はしない。

「ソチ」までの道のりを考え、東海選手はこの2本目に対する意識をそう決めた。

古傷の具合はよくなりつつあるとはいえ、

ガラスのような脆さも合わせ持っていることも知っている。

「調整」方法は既に見えている。

2月のインターバルが勝負だ。


「こうではないのか....」

1本目に掴みかけた自身の滑り方。

再現しようとしたが、うまくいかない。

山崎選手はスキーの難しさを改めて認識した。


トライ&エラー。

これはこれでいい。

あとでゆっくりと整理しよう。


こちらは、その「再現」に成功した。

谷口選手は、急いで次を求めようとはしなかった。

一昨日で得られた「きっかけ」を、

この2本目でもう一度体現することを目標に置いていた。

これでいい。

まずは満足してフィニッシュエリアを出た。


ナイフエッジ。

狩野選手をそう表現する人は、

彼のスキーコントロールの鋭さ、

そして同時に伴う危うさに魅せられる。


SLレースにおいては、

それらの魅力に、諸刃の剣の美しさも纏う。


振り幅の大きなターンの繋ぎ。

板が加速する感覚は、まさにナイフの鋭さ。

滑り降りた時、彼の名前は2段目に表示されていた。


師。

兄。

友。

森井選手には、様々な思いを抱く鈴木選手。

師に教えられ、目指し、兄のように頼り、友のように気を許す。

森井選手の存在がなければ、昨期に実を結んだ成長はなかった。


その姿をスタートハウスで見送る。

「Gentleman, Start your engine!」

エンジンないんですけどワラ

思わず頬を緩めた。

ジョークが好きなスタッフなのだろう。


口頭でのカウントダウンが始まる。


Five Seconds.

その瞬間。

コース上、遙か彼方で大きな雪煙を見た。

森井選手のドリフト。

思わず呻いていた。


Three Seconds.

インターバルの間に話していたワンツーフィニッシュは夢と消えた。


「Gooooooo!!」

それならば、圧勝で花を飾ろう。


現在のリーダーはCALHOUN Heath選手(USA)。

マージンは1.67秒。

絶対的な優位。


しかし、昨日の今日。

そして、森井選手のランクダウン。

誰にも止められたくない。

誰も止められない。

守る事など考えもしなかった。

世界最高の精密機械が、斜面を駆け抜けていく。


追われる立場のレースリーダーなら、このような時、神に祈りを捧げる。

しかし、遠く斜面を見上げるCALHOUN選手は、それすらも諦めた。

この恐るべきライバルに対峙すること、そしてこの結果は、神が与えた試練なのだから....


んー、乱暴に言っていいですか?

何だこの差は???

草レースじゃないんですよ?

ワールドカップですよ?

2.52秒差って、一体どういうことですか(^^;


いつものようにおおざっぱで狂いのない計算をしますと....

平均時速が40km/hだったとして、

鈴木選手とCALHOUN選手との、タイム差から計算した距離は約28m!

小学校のプール1杯分より遠い距離ですよ!!
              イツモキジュンガショウガッコウトイウノモドウカトオモイマスガ....


はぁ~....思わず言葉を忘れてしまいますが、

これだけは言っておかなくてはなりません。

鈴木選手、優勝おめでとうございました!(^^


では、最終順位をおさらいしておきます。


女子Sittingクラス

7位 田中選手


男子Standingクラス

7位 三澤選手
14位 東海選手
21位 山崎選手


男子Sittingクラス
優勝 鈴木選手
 6位 狩野選手
 7位 森井選手
14位 谷口選手
DidNotStart  夏目選手
(不出走:DS)

と相成った(^^


これで、Panarama大会から続いている、

ジャパンチームのメダルゲットは7戦連続となりました。


CopperMt.大会最終日の明日、GiantSlalom(大回転:GS)2レース目で、

8戦連続、つまり北米シリーズ全戦ゲットなるか?(^^

大いに期待しましょう!ではまた次回にお会いします♪

2014年1月22日水曜日

ミリ単位の勝負:20140118CopperMt.SL1....

ソチオリンピックまであと何日とか、

TV番組でも頻繁に伝えられるようになりましたね。

今期は、まれに見るメダルラッシュが期待出来るとか鼻息の荒い番組もあります♪


一方、パラリンピックはといえば、どうにも寂しい限り(^^;

まあ、開催がオリンピックの1ヶ月後と言うこともあるので、

「火がつく」のがひと月遅れなんだと期待して待ちますかね。


そうそう、既にご存じの方も多いと思いますが、

ソチパラリンピックはスカパーで全競技が放映されるそうですね。

リアルタイムで手に汗握るのも良し、録画でしっかりと堪能するのも良し。

パラがお茶の間へ届く時代になりました(^^

ありがたい事です♪


....待てよ?

するってぇとなんですか?

「見た来たような観戦記」は用なしって事ですか?(^^;


現地からの映像はもちろん、障害者アルペンスキーの情報が、

あまりにも少ないからってんで始めた「観戦記」ですが、

TVで見られるのなら何の役にも立たないじゃないですか。

どうしよう?....

身の振り方を考えることにします(^^;


それまでは、元気よく書き進めますよ!

ワールドカップCopperMt大会2日目。

この日はSlalom(回転:SL)競技が行われました。


寒波が緩んだ現地では格好のアルペン日和ということで、

たくさんのファンたちが会場を埋め尽くしています!

中には、地元に精通している方もおられますね。

どうやってこんなところに出て来たんだ?と目を疑うようなところで観戦する強者もいます(^^;


使用されるのはGiantSlalom(大回転:GS)と同じ「Rosi's」コース。

その下部にSLコースが設定されました。

スタート標高3,120m、フィニッシュ標高2,973m、標高差147mのレースバーンは、

フィニッシュエリアからかなりの範囲で勝負の行方を見守ることが出来ます。


林立するゲートボール。

1本目はゲート数45、ターン数43。

標高差に対するターン数は29.3%というプロファイルとなっています。

セッターはスペインチームのコーチでした。


ルール上、最少のターン数は標高差の30%-3ターンの42ターンです。

ということは、かなり少なめなターンセッティングということですな。

ちなみに、この標高差で最大ターン数を立てるとなると、

標高差の35%+3ターンで54ターンになります。

そんな忙しないSLなんて、想像したくもありませんやね(^^;


なぜ少ないターン数でレースを行うかというと、やはり雪面状況にあります。


スタート地点で-8.3℃、フィニッシュ地点では-7.8℃と冷え込みは弱いながらも、

前日に引き続き「Hard Packed」な雪面、つまりは「氷」。

そんな難しい雪面状況で、くるくるこまごまと回るセットだと、

きっと選手たちは次から次へとコース外へ弾き出されること山のごとしでしょう。

そんなレースをさせる訳にはいきませんものね(^^

にしても、難しいレースには違いありませんが....


ところで、「氷」の経験がない方にその難しさ恐ろしさをお伝えするには、

どうしたらいいものやらと、少々頭を悩ましています。

なかなかいい表現方法が見当たらないんですよねぇ....


氷といっても、スケートリンクや、冷え込んだ朝の水たまりのように、

「チュルチュル」と滑る氷とはちょっと違います。


ゲレンデの「氷」とは、

雪の結晶の表面が少し溶けて、

圧雪車に踏みつぶされてガチガチに固められて、

さらにキンキンに冷やされて凍ってしまうものです。


通常のゲレンデ状況なら、エッジを雪面に立てて静止します。

この時、どんなに固く踏み締められていたとしても、

少なくとも10mm程度はスキーが雪に食い込みますので、安定して立っていられます。


ところが、「氷」の上だと、1mm程度しかエッジが食い込みませんので、

ふとした拍子にチュルチュルチュルルルル....

ひどい時には、立ってられないからインスペクションもまともに出来ずに、

レースそのものを諦めたという選手もいるぐらいです。


まともに立つことすら出来ない雪面で、

ぐいぐいとターンをしていくワールドカッパーたち。

滑走ラインから、スキー板が進もうとする方向が数mmでもがずれてしまうと、

たちまちバランスを崩して、行き先はまっしぐらにコースサイドのネット!

もしくは何十mもの滑落という悲劇!

....こんな書き方でわかります?(^^;


そんなコース状況の中、ジャパンチームはどう戦うのか?

1本目のスタート順を見てみましょう!


女子選手は10カ国32名。

Sitting(チェアスキー)クラス

28番 田中佳子選手
31番 村岡桃佳選手

男子選手は16カ国71名。

Standing(立位)クラス

54番 三澤拓選手
59番 小池岳太選手
64番 東海将彦選手
72番 山崎福太郎選手

Sittingクラス

80番 鈴木猛史選手
82番 森井大輝選手
91番 夏目堅司選手
98番 谷口彰選手   です。


このレースから田中選手と東海選手が合流しました(^^

そして、狩野選手の名前がありませんねぇ....

何かトラブって安静にしているとかでなければいいのですが(^^;


では、1本目の様子はダイジェストでご紹介します!


田中選手。

自主トレを繰り返し慣れ親しんだ北米の雪だが、

それでもこの「氷」には歯が立たなかった。

完走はしたものの、大きく遅れた。


村岡選手。

トップから13.72秒遅れと、こちらも悔しい結果。


気負いすぎたか三澤選手。

こんなはずでは、の4.43秒遅れ。


小池選手は、なにか様子がおかしい。

1本目終了後、ゲレンデを後にする。


東海選手は古傷を労りながらの滑走。

無理をせず手を抜かず。


山崎選手には、まだ「氷」の楽しみ方が解らない。

だが、破綻することは少なくなった。


SL王者健在。

鈴木選手は貫禄のラップ(トップタイム)を叩き出す。


それに続くは森井選手。

0.8秒差から逆転を狙う。


夏目選手は攻めきれなかったか。

少々多めのビハインドを背負ってしまった。


谷口選手。

「きっかけ」を求めて攻めたのか。

その思いはコースサイドで途切れてしまう。


ちょいと書き方を変えてみようと試してみましたが、

短い文章で表現するのは、どうも苦手なようで(^^;

といっても、しっかり文字数を使って書いたところで、

だらだらで読みづらいものしか出来ないんですけども。シツレイシマシタ....


ということで、1本目の順位をおさらいです。

女子Sittingクラス

7位(多分^^;) 田中選手       ?秒差
9位        村岡選手     13.72秒差

男子Standingクラス

11位       東海選手       4.07秒差
13位       三澤選手       4.43秒差
18位(多分^^;) 小池選手        ?秒差
24位       山崎選手      12.75秒差

Sittingクラス

1位        鈴木選手      0.00秒差
4位        森井選手      0.80秒差
12位       夏目選手      5.10秒差
DF        谷口選手

以上の結果でした♪


そして、実に荒れに荒れたレースだったということもお伝えしましょう。

1本目にスタートした選手は男女合計で99名。

1本目ですでに28名の選手がいなくなってしまいました!

完走率71.7%!

10人中約3人がアウトという計算です。


男子Sittingだけで見れば、24名中9名の62.5%!

いくらなんでも激しすぎる(^^;

各国を代表する選手たちを持ってしてもこの状況ですから、

「氷」がどんなに難しい雪面かお解り頂けたかと....


さて、気を取り直して2本目ですよ♪

お日様は偉大ですねぇ(^^

気温が上がり始めてきました。


スタート地点で-3.3℃、フィニッシュ地点では-2.8℃。

こんな高地でもここまで気温が上がると....

雪面もHardの文字が取れて「Packed」になってしまいました。


少し緩んだ雪面になったのでしょうか。

そんな極端には変わらないでしょうが、

少しなりとも「優しい」コースになったかな?


コースセッターはカナダチームのコーチ。

ゲート数46、ターン数45、対標高差が30.6%。


2ゲート1ターンの「ディレードゲート」がひとつ減ったので、

実質的に1本目より3ターン多いことになりました。

このあたりも、雪面状況が変わったことを示していますね。


さあ、2本目への準備万端!

ジャパンチームのスタート順です!


女子Sittingクラス

村岡選手 3番目
田中選手 5番目

男子Standingクラス

 3番目 三澤選手
 5番目 東海選手
24番目 山崎選手

男子Sittingクラス

 4番目 夏目選手
12番目 森井大輝選手
15番目 鈴木猛史選手  です。

やはり、小池選手はスタート地点に姿を見せませんでした。

深刻なトラブルでなければいいんですが....


男子Sittingクラスの1本目は15名以上の完走者がなかったので、

鈴木選手がこの日の大トリとなってしまいました(^^

さあ、最後の最後でどんなドラマを作ってくれるのか?

いよいよ始まります!


....「ソチ」までの短い期間で、

全ての種目で戦えるようにするなんてのは無理難題。

村岡選手は、いい意味で開き直っている。


そう思い直した時、どんな状況でも楽しんで滑れる事に気がついた。

楽しめば、得られるものも多い。

笑顔で滑り降りられたことに、まずは満足。


一方、田中選手には後がない。

求めれば求めるほど逃げて行く結果。

失意のリタイアとなった。


三澤選手は1本目の挽回を図り、猛烈にプッシュ。

大幅なランクアップを果たしたが、

2本の合計タイムで勝負するのがアルペンレース。

この難しさに唇を噛む。


東海選手は安定感を取り戻しつつある。

急激な復調は望めないと理解している分、焦りはない。

今はまだこれでいい。


Standingクラスは2本目もコースアウト続出。

その恩恵を受けた順位の山崎選手だったが、

自身の滑走タイムは自らの努力で大幅に向上している。

その歩みは例え小さくても、確実に前に進むだけだ。


夏目選手。

苦戦した。

思った以上に体が動いていない事に気がつく。

フィニッシュエリアでは大きなため息をついた。


勝負の行方は、4名が握っている。


0.8秒のビハインドでスタートする森井選手から。

オールラウンダーでもある彼には、鈴木選手ほどではないが、

SLでも常に勝負を賭けられる位置にいる。

まずは順当にトップに躍り出た。


しかし、LE MEUR Jean Yves選手(FRA)が魅せた。

森井選手からは0.13秒というわずかなマージンしか持ち合わせていなかったが、

2本目は落下スピードを上げていくことに成功した。

彼がトップに立った時のタイム差は、1.91秒にまで広がっていた。


BONADIMANN Philipp選手(AUT)が、森井選手の上へ滑り込む。

コンマ1秒以下の戦いを制し続けてきた森井選手だったが、

この日は0.09秒差で沈んでしまった。


かなり厳しい戦いになる。

スタートバーを前にした鈴木選手は、表情を厳しくした。

42秒32というLE MEUR選手のタイムを耳にしたからだ。


マージンは0.67秒。

42秒台はまだ誰も到達していない。


インスペクションでは43秒の前半が勝敗の分かれ目と読んだ。

しかし、事態は大きく動いた。

43秒フラット。

その壁を越えられるか?


アウトリガー(両手に備える補助具)がポールを叩く軽快な音。

彼独特の「逆手」というテクニックから紡ぎ出されるリズム。

その姿を見る全てのオーディエンスは、彼の逆転劇を期待していた。


LE MEUR選手も鈴木選手も、同じ「係数」のLW12-2の障害を持つ。

つまり、ややこしい計算は必要なく、「現実」のスピードが勝敗を分けるのだ。


速い。

旗門員が呟く。


LE MEUR選手のアグレッシブさとは対照的な滑らかすぎるシルエット。

その姿は、レーススタッフですら「観客」にしてしまう。


連続するオーブンゲートからストレート。

一瞬の乱れもない。

ヘアピン~オープン~ディレードといった不規則な区間でさえ、

予定調和であるかのように通過する。


緩斜面。

スピードは落ちない。


その先の急斜面。

次のゲートは見えない。

しかし、スキーの射角は押さえてある。


斜面変化前のオープンゲート。

ポールが倒れる。

その時の光景もインスペクションと同じ。


目の前に広がる急斜面。

1mmのズレもなく次のゲートが現れる。


決まった。

体はすでにその次のゲートに備えている。


一瞬の無重力感。

スキーの先端が接地する。

ゲート際のレコードライン。

深く刻まれた溝。

取られるエッジ。


ほんの数mm。

自由を奪われたトップエッジは、

鈴木選手のコントロールに逆らい、一瞬だけ板を波打たせた。


30cm程度か。

急斜面で滑走ラインを外した。

次のゲートに入れない。

とっさに大きく板をグラインドさせた。

リカバリーに2ターン。

失ったタイムは大きかった....


いやはや、まさかこんな結末が鈴木選手に襲いかかるとは(^^

これはもう、「ミス」ではなく「事故」といってもいいかも?


そこまで鈴木選手を追い込んだLE MEUR選手に「天晴れ!」ですね。

もちろん、鈴木選手の2位も素晴らしい結果でした!


では、最終結果を整理します(^^

女子Sittingクラス

7位 村岡選手
 DF 田中選手

男子Standingクラス

 7位 三澤選手
 9位 東海選手
17位 山崎選手
 DS 小池選手

男子Sittingクラス

 2位 鈴木選手
 4位 森井選手
11位 夏目選手
 DF 谷口選手  以上です!


長く激しい戦いの途上で、そろそろ疲れが溜まってきている頃でしょうか。

リザルトからも、やや精彩を欠き始めた選手もいるように見えます。


男女あわせた2本通した完走率も58.2%!

難しいコースだったとはいえ、

各選手たちの疲れもこのあたりに現れているのではないかと(^^;


さあ、あと2レース。

そして、帰国直後のジャパンパラ大会。

どうか、ジャパンチームのみんなには息災に過ごして欲しいものです(^^


話のついでと言ったら怒られるでしょうが、

そのジャパンパラ大会について告知をしておきます!


IPC公認 2014 ジャパンパラアルペンスキー競技大会

日程:平成26 年1 月25 日(土)~28 日(火)

場所:長野県北安曇郡白馬村白馬八方尾根スキー場
    (開会式:八方文化会館

実施種目(予定): 大回転     (25日)
            回転      (26日)
           スーパーG   (27日)
           スーパーコンビ(28日)


今週末の土曜日からの開催です。

「お、その時には八方にいるよ!」という方は是非、

「世界」を席巻するジャパンチームの滑りをご覧になってください。

当然ですが、入場料は無料です♪


まだ週末のゲレンデを決めておられない方は、何が何でも八方へ(^^

しつこいですが、入場料は無料です♪


そして、もう予定が決まっちゃってる!とか、スキーは行かないなぁ....という方は、

速報ページで熱戦の行方をチェックしていただければ♪

速報ページも無料です(^^


また、「Ustream」でも、レースの模様が配信されるとかなんとか。

こちらもお楽しみに!


ん?Ustream?

....てことは、やっぱりアレか。

「見てきたように」書けないって事じゃん(^^;ドウシタモノカ....


では、次回もSL。2戦目の模様をお送りします♪

2014年1月21日火曜日

氷上の戦い:20140117CopperMt.GS1....

「国境を股に掛ける」って、どういう感覚なんでしょうね?

σ(^^;はせいぜい、「県境」を越えるという感覚しかわかりません。

きっと彼らには、「県境」を跨ぐような感覚しかないのかも(^^;


障害者アルペンスキーワールドカップは、カナダからアメリカへ。

年末に繰り広げられたNORAMカップの死闘

その記憶もまだ暖かいCopperMt.スキー場へ舞台を移しました♪


メダルラッシュとなったNORAMカップの再現、

いや、それ以上の結果が現れるや否や。

「山本新之介のワールドカップをまるで見てきたような観戦記」も、

無駄なほどに力が入ります(^^


この日は、GiantSlalom(大回転:GS)が行われました。

では、さっそく現地の状況を見ていきましょう!

まずは、リザルトをお手元にどうぞ♪(女子男子


NORAMカップと同じ会場とはいえ、使用されるコースは違うようですねぇ。

「Rosi's」コースに設定された特設コースのプロファィルは、

スタート標高3,310m、フィニッシュ標高2,973m、標高差337mです。


Panoramaから比べると、結構な高地。

ジャパンチームは既に経験済みの標高とはいえ、

体の順応はスムーズに出来たかな?


1本目のコースセッターはアメリカチームのコーチでした。

ゲート数は38、ターン数37。

標高差に対するターン数は11%と、ルール上最小のターン数が設定されています。
                                  (ルールでは11%~15%)

天候は快晴。気温はスタート地点で-8.3℃、フィニッシュ地点では-7.8℃。

「Hard Packed」という硬い硬い雪面は、まさに「アルペンレース」といえる条件でしょう(^^
                                                カナリムツカシイケドネ....

NORAMカップでは-22℃なんて寒さの中でのレースもありましたから、

それに比べりゃ、こんな気温はまるで南国に逃避したような気分でしょうね(^^


ではいつものように、ジャパンチームのスタート順から見てみましょう!


女子選手は11カ国32名。

Sitting(チェアスキー)クラス

32番 村岡桃佳選手

男子選手は17カ国74名。

Standing(立位)クラス

45番 小池岳太選手
52番 三澤拓選手
61番 東海将彦選手
72番 山崎福太郎選手

Sittingクラス

80番 鈴木猛史選手
84番 狩野亮選手
88番 森井大輝選手
93番 夏目堅司選手
102番 谷口彰選手  です。


このレースから東海選手が合流しました。

ひとレースごとに復調の兆しを見せている東海選手の戦いぶりにも注目です!


さて、レースが進むにつれエントリーが増えてきてまして、

ビブ(ゼッケン)ナンバーがとても大きな数字に変わってきています。

世界中から100名を越える選手たちが集まるのですから、

その凌ぎの削り合いもハンパないものになるでしょうねぇ(^^

選手たちは大変でしょうが、見ているこちらは楽しみでしようがありません♪


おっと、ウダウダと言っている間に、

レースは女子VisuallyImpaired(視覚障害者:VI)クラス、Standingクラスと進んでいます。

女子Sittingクラスもいよいよスタートです!


「課題が多いなぁ....」

村岡選手はスタートハウスで呟いていた。

Panarama大会で明らかになった高速系でのハンデに加え、

ここでもその体格に悩まされることになりそうだ。


「氷」と表現してもいいこのレースバーンにおいて、

体重に起因するエッジグリップの弱さと戦わなくてはならないのだ。


軽さ故の、リカバリーでの有利さはあるにせよ、

そもそも、リカバリーが必要な局面とはエッジが雪面から離れてしまっている状態なのだ。


よりエッジグリップを発揮出来る選手たちに比べて、

彼女にはより高度なスキーコントロールが求められる。

この雪面は、彼女に優しくはなかった。


ありとあらゆる雪面は経験済み。

小池選手にとっては、アイスバーンでもレース運びに影響はしない。

技術と自信に裏付けられたタイムを叩き出す。


それに続くは三澤選手。

氷の上は、むしろ望むところ。

1本スキーの強大なエッジグリップは他を凌ぐ。

好位置で1本目を終えた。


硬い雪面は、激しい負担を両足に強いる。

技術面では東海選手に不安がないが、古傷の影響だけが気がかり。

復調途上としては、まずまずの滑りではなかったか。


1本目ラップ(トップタイム)から10.03秒差。

山崎選手にはそのタイム差よりも、

この雪面で滑り終えられたことが自信になったはずだ。

この経験は彼の中で確かに蓄積された。


GSで花開くか。

鈴木選手はフィニッシュエリアで満面の笑みを浮かべた。

早いスタートとはいえ、好タイムでリーダーズボードのトップに立つ。


一方、狩野選手はやや苦戦を強いられている。

NORAMカップとは勝手が違ったようだ。


森井選手が駆け抜けたゲート際には、

まるでそれまでに誰も滑っていなかったかのようなレコードラインが残る。

それは美しさをまとった、まさに「Carving」と言えるものだった。

決して早くはないスタート順から、唯一の56秒台を叩き出して1本目を終えた。


夏目選手。

ほんの一瞬の出来事だった。

この雪面でなければミスとも言えないスキー操作。

しかし、容赦のないアルペンレースの厳しさを、

彼はコースサイドで噛みしめることとなった。


焦るな。

この言葉を自分に言い聞かせたのは、何度目のことだろうか。

谷口選手。

崩れ落ちそうになる自我を、必死に支えている。出口はどこだ....


1本目、1割近い選手がDidNotFinished(途中棄権:DF)という厳しいレースでした。


「氷」の雪面は、σ(^^も菅平高原スキー場で何度か経験がありますが、

それはそれは難しいんですよ。


それでも1/10というDFで済んでいるのですから、

ワールドカッパーのレベルの高さと来たら素晴らしいものがあります。

σ(^^;と比べるのも失礼な話ですけどね。


では、1本目の順位を確認します。

女子Sittingクラス

DF 村岡選手

男子Standingクラス

7位 小池選手 1.92秒差
9位 三澤選手 2.53秒差
13位 東海選手 3.52秒差
24位 山崎福太郎選手 10.03秒差

Sittingクラス

1位 森井選手 0.00秒差
(↓多分^^;)
5位 鈴木選手 ?秒差
9位 狩野選手 1.75秒差
23位 谷口選手 6.24秒差
 DF 夏目選手        以上です♪


ところで、硬い硬いと事あるごとに書いていますが、

そのご苦労は選手たちだけではないんですよ(^^


コースセッターの指示どおりに戦場を整えていくスタッフの方々も大変な思いをされています。


ドリルで雪面に穴を空けてゲートを差し込み、

その根本にある「ネジ」をぐりぐりとねじ込んで固定します。


この時、「レンチ」といわれる専用の工具を使うのですが、

雪が硬いと、ネジの部分が入っていかないんです(^^;

両手で、渾身の力を込めてレンチを回すのですが、

足下がつるつる滑るので、それはもう一苦労。


苦労してねじ込んだゲートも、2本目はセット替えをするので抜いて差し直し。

ねじ込んだポールは当然のように、簡単には抜けてくれません(^^;


「はい、次はここね♪」

と、セッターは気楽そうに(失礼^^;)指示を出しますが、

コーススタッフのご苦労は本当に大きなものなのです。

こういったことも、選手にとっては大変ありがたい事なのです(^^


ちなみに、σ(^^は本気で「電動レンチ」なるものを作ろうと思ったことがありますが、

巨大でかなり重い装置になると解って、断念しました。ンナコタドウデモイイカ....(^^;


そんなご苦労と共に、完璧に設定された2本目のコース、

どのようなセットになったか見てみましょう!


コースセッターはフランスチームのコーチ。

ゲート数40、ターン数38、対標高差が11.3%。


1本目より1ターン多いだけじゃん?と侮るなかれ。

ゲート数よりターン数が2つ少ないということは、

2ゲート1ターンの「大きな」ターンが2つ設定されているということです。


ターン弧が大きくなるということは、速いスピードで長く板に乗らなければならないんです。

この硬い雪面で、それがどんなに難しい事か。

「氷」をご経験された事のある方なら、簡単に想像していただけるかと(^^


スタート地点で-5.5℃、フィニッシュ地点では-5.0℃と、

少しだけ気温は上がっていますが、この程度で緩む雪面ではありません。

相も変わらず「Hard Packed」

きっと、2本目はサバイバルレースとなるでしょう!


その2本目のスタート順はこうです!

男子Standingクラス

 3番目 東海選手 
 7番目 三澤選手
 9番目 小池選手
24番目 山崎選手

Sittingクラス

 7番目 狩野選手
11番目 鈴木猛史選手
15番目 森井大輝選手
23番目 谷口彰選手   となっています。


さあご注目!まずは東海選手が飛び出した!


....1.5秒から2秒。

インスペクション(コース下見)の時、

東海選手は、1本目とのタイム差を予測していた。

このセットだったらと直感的に計算したのだ。


その予測タイムどおりに降りてこられれば、

自身のコース攻略と古傷の状態が、

よりよい復調途上にあると確信出来る。

ほぼ誤差のないフィニッシュタイムは、

「ソチ」に向けて新たなカリキュラムを組めることを証明していた。


足下を掬われる感覚。

いつ味わっても気持ち悪いものだ。

三澤選手にとって、「氷」に苦手意識はない。

だからこそなおさら気が滅入る。

エッジグリップを失い、ラインを外してしまった代償は、大きすぎた。


このコースは、小池選手をも餌食にした。

絶妙に計算されたトラップ。

見抜いていたつもりだったが、ほんのわずかにスキー操作を破綻させられた。

滑走ラインを取り戻すまでに3ターン。

最後まで、それを取り返すことは出来なかった。


スタート前、山崎選手の表情は明るかった。

タイム差は全く関係ない、そう開き直っている。

インスペクションの時から、この「氷」の上でどんなことを試そうかと、

様々なアイディアが浮かんできたからだ。


荷重のかけ方。

スキー板のグラインド。

重心高さの調整。

あるいは重心そのものを崩してみる。

様々なトライに即効性がないのは承知。

レースバーンでそれらを試したことが、貴重な経験となる。


セッターを務めたCHARRIERE Mickael氏(FRA)とは、どのような人物だろうか。

きっと、芸術的なコースセットを信条にしているのかも知れない。


斜面変化、うねり、バンプ。


さまざまな雪面状況を巧みに利用し、

インスペクションでは見抜くことが難しいトラップが、

ありとあらゆる局面で現れるようにしていたのか。


狩野選手が大きくタイムロス。

鈴木選手がコースアウト。


フランスチームが順位を維持、もしくは大幅に上げているのと対照的に、

多くの選手たちがドロップしていった。


対照的に、トップに躍り出た選手がいる。

PETERS Corey選手(NZL)だ。


鈴木選手よりふたり前にスタートしたPETERS選手は、

誰も届かないと予想された59秒台を叩き出し、後続を待つ。


あと4人。

CALHOUN Heath選手(USA)が脱落。


あと3人。

KREITER Georg選手(GER)。

PETERS選手の1本目からのマージンは0.38秒。

マージンを使い切り、わずかに逆転を許してしまった。


あと2人。

RABL Roman選手(AUT)のマージンは0.4秒。

2本目の遅れが0.48秒。

0.08秒差でPETERS選手を取り逃がす。


あと1人。

0.88秒差、小さくはない。

しかしようやく、「Moriiに勝てるチャンス」が来た。

心臓の鼓動が心地よい騒音となっている。


アナウンスが運命のスタートを告げている。

フィニッシュエリアからは何も見えない。

確認出来るのは最後の斜面だけだ。


たった数十秒。

待てない。

体の深いところから込み上がってくる興奮を押さえられない。


目に映る最も上のゲート。

大きく揺らめく。


門扉をこじ開けて飛び込んでくる姿には神々しさすら感じる。

自らもあのような光を放っていたはずだ。

しかし、今、コース上の光に見とれている自分に気づく。

声が漏れていた。


ラストゲート。

はじき飛ばされたのはゲートだけか。それとも。


フィニッシュラインが断ち切られた。

リーダーズボード。

表示が変わる。

彼の光は小さくなっていった。


谷口選手にとってのこの2本目の滑りは、わずかだが何かが変わった。

誰も気がつかないかも知れない。

しかし、それは2本目のタイム差が証明している。

何よりも彼自身の感覚が、「きっかけ」を掴んだことに気がついていた....


とにもかくにもまずは、森井選手。

優勝おめでとうございました!


しかしまあ、入れ替われ立ち替わりいろんな選手が挑んできますなぁ。

それを跳ね返すのも素晴らしいし、何よりも必ず上位に名を連ねるなんて、

森井大輝とはどんなタフな選手でしょうか(^^


では、このレースの最終結果です!

女子Sittingクラス

DF 村岡選手

男子Standingクラス

 9位 小池選手
11位 三澤選手
12位 東海選手
19位 山崎選手

男子Sittingクラス

優勝 森井選手
 8位 狩野選手
19位 谷口選手
 DF 鈴木選手
    夏目選手 以上です!


ちなみに、このレースの厳しさもリザルトには表れています。

男女合わせて101名の選手がスタートを切り、

1本目は9名、2本目はなんと16名の選手が姿を消しました。

完走率は、実に75.2%!

4人にひとりがいなくなっちゃったんです。

これがインフルエンザだったら、学級閉鎖ですよ(^^;ドンナタトエダヨ....


さあ、北米シリーズも残すところあと3レース。

ジャパンチームには、もうひとつ、ふたつ、みっつと大暴れを期待しましょう!

Next up Slalom(回転:SL)!(^^

2014年1月20日月曜日

大会ラスト:20140114PanaramaSG....

本当にお寒うございます。

みな様方におかれましては、体調その他もろもろ、くれぐれもつつがなきよう(^^


何でも、今期最強の寒波が襲来したとかで、

今朝はσ(^^の通勤もブラックアイスと戦う道中になりました。

「大寒」と聞けば、さもありなん。

今期は、BSの新タイヤをインストールしたのですが、

これが実に素晴らしいタイヤで。お陰さまで、楽しく路面と戦うことが出来ました♪


さて、そんな寒い朝から遡ること約1週間、

障害者アルペンスキーワールドカップPanarama大会が最終日を迎えていました。

種目は高速系のSuper-G(スーパー大回転:SG)です。
                      (リザルトはこちら) 

まずは大会ひと区切りのレースの模様はいかがなものだったか?

いつものように「山本新之介のワールドカップをまるで見てきたような観戦記」をお送りします!


その前に....

最近、このブログにお越しの方が急増しておりまして、いま一度のお断りをしておきます。


「見て来たような観戦記」は、公表されているリザルトの情報のみを頼りに、

止めどなく「妄想」を重ねて書き進めています。

リザルトに記載のあること、またはそこから読み取れること以外は、

全て「フィクション」ですので、間にお受けにならぬようお願いいたします(^^

くれぐれも、「事実と違うじゃねーか!」と訴えたりしないでくださいね♪


ところで、リザルトの情報のみが頼りとはいえ、

今回のSG、一部では「ドラえもん」がレースに荷担したという事もささやかれています。

どのようなレース展開だったのか、「妄想」すら出来ないのもこのレースの特徴でした。


いろいろと「ぶっ飛ばす」ことになるSGレース。

では、現地の状況を確認していきましょう!


使用されたのは、PANORAMA MOUNTAIN VILLAGEスキー場の「Skyline」コース。

スタート標高1,802m、フィニッシュ標高1,236m、標高差566m、コース延長2,120m。


コースセッターはアメリカチームのコーチです。

ゲート数は36、ターン数も同じ数で36。

標高差に対するターン数は6.4%の、

ルール上最小のターン数を下回るハイスピードコースです。


天候と気温、それに雪質は公表されていません。

多分ですけどね、前日のGiantSlalom(大回転:GS)と同様に、

かなり暖かいコンディションだったのではないでしょうか。


ルールでは最小ターン数は40になるはずなので、

コースが荒れてレースにならないような事態を、

出来る限り避けようという目論見だったのでは?


標高差684mのDownHill(滑降:DH)が31ターンで競われたのと比較しても、

そんなに多くのターンが設定されたということではなさそうです。


では、我らがジャパンチームのスタート順を見てみましょう!


女子選手は11カ国24名。

Sitting(チェアスキー)クラス

24番 村岡桃佳選手

男子選手は17カ国59名。

Standing(立位)クラス

45番 小池岳太選手
51番 三澤拓選手

Sittingクラス

60番 森井大輝選手
62番 夏目堅司選手
63番 狩野亮選手
68番 鈴木猛史選手
77番 谷口彰選手

と、なっています。

泣いても笑っても1本勝負の高速系レース。いよいよ始まります!


....インスペクションの時から、村岡選手は苦戦することを予想していた。

ターン要素の強いSGならば自信があった。

その体格から表現される世界最深のバンク角と、

雪面に対する最少の荷重量が彼女の最大の武器だからだ。


しかし、このコースでは浅めのターンで、ただひたすら重力に身を任せるレースになる。

慣性重量の少ない彼女にとっては、その体が恨めしいコースになっていた。


この条件、チームメイト以外はおそらく理解出来ないだろう。

それはつまり、レースだからだ。

どのような条件でも勝てるレーサーにならなくてはならない。

この辛さ、悔しさ、いずれ晴らしてみせる。


伸び悩んでいるのは小池選手。

本来ならば、その類い希なる技術力で戦いたかったのだが、

自らが仕掛けられる要素の少ないレースでは、フラストレーションもたまる一方だった。

IT1~IT2の区間では2番手と、好タイムで滑り降りたが、

IT2以降で痛恨のミスを犯してしまう。


コースの恩恵を受けられなかったのは、三澤選手も同様。

Standingクラス唯一の1本スキーで戦うLW2の選手。

「係数」である程度は救済されるとしても、

滑走面に掛かる摩擦係数は、単純に考えても他の選手の「倍」。

ターン技術で戦う要素が少ないコースでは、当然のように苦戦を強いられた。


Sittingクラス、ジャパンチーム一番機は森井選手。

好調の波に乗りきった不動のエースに死角はない。

クラス3番手と早いスタートから、見るものを閉口させる程のスピードとタイムを叩き出す。


ひとり空けてのスタートは夏目選手。

IT1~IT2の区間タイムはクラス2番手をマーク。

これまでに取り組んできたことが着実に芽を出し始めた実感がある。

「ソチ」までの短い期間でさらなる飛躍を遂げたい。

まずは満足のいくフィニッシュだった。


間髪入れず狩野選手がスタート。

ここPanaramaでは、彼に女神はほほえんでいない。

だが、失意に浸るほど彼は弱くもなかった。


IT1。

「またか」と自分に嘯くほどのタイムしか出ていないとはっきり解ったが、

その直後から、歯車が噛み合い始める。


ゲート際を抉るようなスタイルは彼の持ち味。

フィニッシュへ続く最速ライン。

見えている。

行ける。


IT2以降、重力を最も味方に付けたのは彼だった。

リーダーズボードに掲げられた彼の名は森井選手の一段下。

ようやく胸をなで下ろす事が出来た。

しかし、0.6秒差。

森井選手は15m先でフィニッシュしていた事を瞬時に覚る。

もう少し、もう少しだ。


逆に、後半区間で急速にスピードを落としてしまったのが鈴木選手。

彼のいつもの照れ笑いも、少しぎこちない。


「Licencier le Morii」

これまで幾多のライバルたちが、それだけを狙ってスタートを切った。

しかし、止めるどころか、その差を1秒以内に収められたのは狩野選手ただひとりだった。

「Dans ma gloire」

DUECK Josh選手(CAN)は胸に秘めていた。


コーチからもたらされた分析では、

森井選手はIT1~IT2区間でタイムロスをしていること、

IT1までが速すぎた事が解っている。

そして、コースは荒れてしまっているということも。


突破口はある。

IT1までを耐え、それ以降、自分の限界に挑むことだ。

勝算?なければスタートしない。


まずはゲート3つ。

ここが決まらなければ勝負にならない。


4つ、5つ。気にいらない。

「この区間、なぜMoriiはそんなに速く?」

DUECK選手の体内時計が表示するタイムは彼を舌打ちさせるに十分だった。


同時に舌打ちしていたのは彼のコーチ。

手元のストップウォッチは1.7秒という圧倒的なタイム差を示していた。

巻き返せるのか?

同じようにIT2で時計を握るコーチに、無線で通過を知らせる。


荒れているはずの雪面。

DUECK選手のライン上には、ギャップが無いように見えた。

限りなく少ない雪煙。

緩まない落下スピード。

そのシルエットに、一瞬、手元が震えたが計測ミスは絶対にしない。

IT2で、コンマ9秒近く短縮された森井選手との差。


DUECK選手には、20mほど先に獲物のゴーストが見えていた。

少しずつ近づいている。

ゲートはあと10。

大きくなる森井選手の背中。

彼のラインよりインを抉る。


あと3つ。

間に合うか?

フィニッシュが見える。

飛び込め。


見上げたリーダーズボード。逆光に遮られた。

目を凝らすDUECK選手の耳に飛び込むジャパンチームと観客の歓声。

「負けた....」

0.54秒差。

果てしなく遠い0.54秒だった。


もう、見慣れた光景のフィニッシュエリアだった。

谷口選手の焦燥感は極限まで募っている。

何をどう試そうと、自身の滑りが好転してこないのだ。


復調への最短距離。

それは、かつてのイメージの再現なのか、

全く新しいアプローチが必要なのか。

それとも他に方法があるのか。


まだ焦る時期ではないと理解はしているが、

彼のキャリアを持ってしても、迷い込んだ迷路は深く暗い....


GSに続き、森井選手連勝!

おめでとうございました!


そして、お待ち申し上げておりました(^^

狩野選手もポディウムゲット!

DUECK選手とは0.06秒差ですから、本当に惜しい3位でした♪


では、最終結果を整理します(^^


女子Sittingクラス

6位 村岡選手

男子Standingクラス

10位 小池選手
17位 三澤選手

男子Sittingクラス

優勝 森井選手
 7位 鈴木選手
 3位 狩野選手
 6位 夏目選手
20位 谷口選手

以上です!


「ソチ」へ向けて、海外勢も順調に仕上げているようで、

なかなか厳しい戦いになっていますね。

これからもますます激しいレースが続くでしょう♪


これでPanarama大会は閉幕し、

次回はNORAMカップの会場であったCopperMt.スキー場へ場所を移します。

CopperMt.では、GS2レース、Sallom(回転:SL)2レースが開催予定です。


熱戦はどこまでアツくなるのか、乞うご期待!(^^

2014年1月19日日曜日

つぶしがきかねぇなぁ....

ほんのちょっとの違和感で何もかもがダメになるのは、σ(^^;の悪いクセです。

競技をしている時もそうでした。

想定していた事が外れると、もうダメダメで....


「観戦記」もご多分に漏れず、筆が止まってしまいました(^^;


Panarama大会の最終日、

Super-G(スーパー大回転:SG)のリザルトが出たんですが、

「何じゃこりゃぁっ!!!」という表記があって、

そこからどうやって話を広げていこうかと迷ったが最後、

何も思いつかなくなってしまいました。


まあ、リザルトを見て下さいよ。

男子Satnding(立位)クラス優勝者、 LANZINGER Matthias選手(AUT)のIT1。

54分51秒88!

フツーなら20秒強で滑り終える区間を、1時間弱???

で、IT2は41秒84で、トップタイムですって???

何が起こったのやら、まったく理解出来ません(^^;

きっとトンでもないアクシデントが起きたのでしょうか。


で、IT1を通過したあと、どうにもならなくなって、

こう叫んだのではないでしょうか?

「ドラえも~ん!たすけてぇ!!」

きっと時空を超えて、IT2の好タイムを叩きだしたのではなかろうか(^^;


ほかにも、ジャパンチームの小池岳太選手を含めて、

4名の選手がドラえもんにお世話になったようです。

....こんな状況、どうやって「妄想」を膨らませりゃいいんですか?(^^;


言い訳はこのぐらいにして、明日、頑張って書きます(^^;

もうしばらくお待ち下さい....


でも、ドラえもんは出てきませんからね♪

2014年1月17日金曜日

勝つことと負けないこと:20140113PanoramaGS....

勝負に「絶対」というものはありません。

「勝ちに不思議な勝ち有り」という野村克也さんの言葉どおり、

「なんで勝っちゃったんだろうね?」という結果が往々にしてあります。


一方、この言葉にはこうも続きます。

「負けに不思議な負け無し」

負けたという結果には、どうして負けたかという明確な原因が存在します。


要は、勝負事というのはどんなものにせよ、

「負けない工夫」を確実に積み上げていくということに他なりません。

勝ち負けというのは、実のところ、その工夫の積み上げ、

つまりミスの数が少ない方が「結果として勝っている」に過ぎない訳です。

それがハイレベルな戦いであればあるほどに、です。


高い勝率を誇る選手がなぜ「勝っている」のか?

そういったところも勝負の見どころと言えるでしょう。

....なんだかよく解らない前置きですが(^^


障害者アルペンスキーワールドカップパノラマ大会5日目、

GiantSlalom(大回転:GS)が開催されました。

リザルトはこちらにて→(女子男子


本格的なレースシーズンを迎えた初戦Panarama大会も無事スケジュールは進行し、

残すところは本日のGSと明日のSuper-G(スーパー大回転:SG)を残すのみです。


GSという競技は、最もオーソドックスで、もっとも技術の差が出るといわれている種目です。

そして、おそらくは世界中で一番トレーニングされている種目でしょう。


日本障害者アルペンスキーナショナルチームでも同様、

GSのトレーニングが重点的に行われております。

チームをよく知る方にとっては、一番「安心」して見ることが出来る種目でしょうね(^^


では、現地のコース状況を見てまいりましょう!

スタート標高1,558m、フィニッシュ標高1,236m、標高差322mのレースバーンに、

コースセッターは我らがジャパンチームのコーチ、切久保豊様!

慣れ親しんだセットのクセは、ジャパンチームにとって、これ以上ない心強さを感じることでしょう。


ゲート数は41、ターン数が38。標高差に対するターン数は8.4%。

ルール上は11%~15%となっていますから、かなりのハイスピードコースとなっています。


それもそのはず、気になるのが天候。

「MostlyCloudy(ほとんど雲)」という空模様に、+3℃というスタート地点の暖かさ。

「Packed(圧雪)」された雪面とはいえ、すぐにボッコボコに荒れてくるでしょうね。


荒れてくる雪面を見越して、2ゲート1ターン、いわゆる「ツーゲート」も3カ所に立てられました。

出来る限りターンの数を少なくして、雪面の荒れを押さえていこうという目論見でしょう。


そして、選手たちにとってはごまかしの効かないコース設定であり、

ワンミスが「命取り」になりかねません。

いかにミスを最小限に抑えるか、速く滑る技術以上に、繊細さを競う一日となりそうです。


では、ジャパンチームのスタート順を確認いたします!


女子選手は11カ国25名。

Sitting(チェアスキー)クラス

25番 村岡桃佳選手


男子選手は17カ国65名。

Standing(立位)クラス

40番 小池岳太選手
51番 三澤拓選手
61番 山崎福太郎選手

Sittingクラス

69番 森井大輝選手
71番 夏目堅司選手
74番 鈴木猛史選手
76番 狩野亮選手
84番 谷口彰選手

以上の布陣です。


これがワールドカップデビューとなる村岡、山崎の両選手は、

ソチパラリンピック日本代表選手として、先日に追加発表された新進気鋭の若者たちです。

「ソチ」はゴールではなく単なる通過点。

長いキャリアの第一歩は、どのような足跡となるのか非常に楽しみです(^^


おっと、いよいよ1本目がスタートとなるようですよ!


....世界中で最も競技人口の多いGS。

心地よい喧騒に包まれたスタートハウス付近。


初ワールドカップとなる村岡選手の表情はやや硬い。

年齢にふさわしくないといってもいい実力の持ち主だが、

「シンデレラガール」としてのプレッシャーにはまだ馴染めていない。

しかし、ポイント順で定められた最後尾スタートが彼女の「定位置」ではない事も感じていた。


女子Sittingクラスで1番最初にスタートした、

SCHAFFELHUBER Anna選手(GER)のタイムは誰にも塗り替えられていなかった。


村岡選手がスタートした瞬間も、「女王」の名はリーダーズボードのトップにあった。

その「壁」の高さ、彼女の目にはどう映ったのか。

そして、最後尾スタートから躍り出たタイムを見たライバルたちは、新しい時代を予感した。


「桃佳、3番手タイムだってよ!」

ジャパンチームにとって、妹的存在である彼女の活躍は、これ以上ない朗報であった。


三澤選手にとって、この「追い風」を生かしたいところだったが、イメージと滑りが噛み合わない。

リーダーズボードを見上げることなく、彼はフィニッシュエリアを後にした。


好タイムと自滅、強豪たちの明暗をスタートハウスで耳にした小池選手。

少し遅めのスタートとなった今回、その分だけ冷静に状況を把握していた。

次々と上がってくるコース状況の報告で、成すべき事を正確に理解する。

攻めることのリスクに対して体が反応。

2本目に繋がる順位とタイムで滑り降りた。


「自分はその器なのか?」

山崎選手には、激しい葛藤があった。

その実力と将来性を買われ、晴れて代表入りした彼だが、

キャリア不足から来る不安は隠せなかった。

完走中、最後尾タイムで1本目を終える。


久しぶりにジャパンSittingチームの1番機となる森井選手。

このPanirama大会では、チーム唯一といっていい安定感を誇る。

クラス7番目スタートから、一気に一番上へ躍り出た。


夏目選手がスタートしたのは、そのタイムを耳にした直後だった。

「まず大輝に追いつく」

そのための努力は惜しんでいない。

まだ時間はかかるかも知れないが、このままでは終わらない。

いつかは。


リーダーズボードを見上げる夏目選手。

森井選手の名前が一段下がっていることに気がつく。

0.01秒差。

世界にはまだまだ上がある。


鈴木選手はGSの技術も磨きがかかり始めている。

マシンコントロールにおいて、彼ほどの能力のある選手はそうはいない。

GSで開花する時、どこまで高みを望むことになるのか。

1本目は6番手ながら0.31秒差で食らいつく。


「まだそんなに焦る時期じゃない」

Panorama入りしてから、満足出来る成績を残せていない狩野選手は、

コースサイドで自分自身にそう言い聞かせた。

それは、決して負け惜しみではない。


狩野選手以降、コースアウトする選手が続出。

何が何でも復調したい谷口選手にとって、非常に厳しいコース状況となっていた。

どのような雪面であっても滑りきる自信はある。

しかし、「攻める」状況にないこともよく解っていた。

ここにも長く暗いトンネルの出口はなかった....


1本目の結果を見てますと、SittingクラスのDFが多くなっていますねぇ。

これは、雪面状況が激しく悪いことを意味しています。

せっかくのGSなのに、これでは楽しめませんなぁ(^^;


しかしながら、2本目を大いに期待出来る選手たちがいるのも確か。

楽しみにしましょう!


では、1本目順位のおさらいです。

女子Sittingクラス

3位 村岡選手 4.32秒差

男子Standingクラス

 6位 小池選手 1.75秒差
15位 三澤選手  ?秒差

Sittingクラス

 2位 森井選手 0.01秒差
 6位 鈴木選手 0.31秒差
11位 夏目選手 3.65秒差
18位 谷口選手 7.08秒差
DidNotFinish(途中棄権:DF) 狩野選手


2本目の結果はいかに?(^^


ゲートのセット替えがいつの間にやら終わっていました。

大会関係者のお仕事の早いこと♪


コースセッターはWOLF Justus氏。どこかの国のコーチのはずです。

リザルトに書いてないので解りません(^^;


ゲート数39、ターン数42。

....昨日のSuperCombi(スーパー複合:SC)2本目同様、

「不思議セッティング」が施されたようです(^^;

そんなセットはあり得ないので、「ゲート数42、ターン数39」として話を進めます♪


天候も....

「NONE(なし)」???

「なし」ってなんだよ?

きっと同じような曇天なんでしょうね。


なんだかミスライティングの多い大会ですなぁ(^^;

ついでに指摘しておくと、女子のリザルト。

JOINES Kimberly選手(CAN)の2本目ですが、

IT1までが1分7秒29で、フィニッシュタイムが1分9秒36。


他の選手たちがIT1以降を30秒以上かけて滑り降りているのに、

JOINES選手は2秒強で駆け抜けた!

....もう、なんかグダグダですな(^^;


リザルトを作成するソフトに入力する際、

分と秒での入力でなく秒単位のみで、

しかもテンキーでの手入力が行われたとするならば謎が解けます。


「37.29(37秒29)」と打ち込むところ、

「3」を「6」と一段間違えて「67.29(67秒29)」と打ち込んだのではなかろうか?

そんな原始的な事務処理をされているのかどうか解りませんが、

そうだとするならさもありなん(^^;

てことで、JOINES選手のIT1タイムは「37秒29」として話を進めます♪
                              シカシドウナッテルンダオイ....


以上のことを考慮し整理した、2本目スタート順はこうです!

女子Sittingクラス

6番目 村岡選手


男子Standingクラス

 1番目 三澤拓選手
10番目 小池岳太選手

男子Sittingクラス

 2番目 夏目選手
10番目 鈴木猛史選手
14番目 森井大輝選手
18番目 谷口彰選手

です(^^


ところで、三澤選手の1本目は、分析の結果、15位か16位でした。

上位15名の順番を逆転させるのが2本目のスタート順ですから、

15位と16位では大きく意味合いが異なります。

どちらかはっきりと解りませんので、1本目15位として話を進めますね♪


さて、この2本目は見どころが多いですよ。

村岡選手はデビューレースで初ポディウムなるか?

小池選手のジャンプアップは?

0.01秒の攻防をどうする森井選手?

割って入るか鈴木選手?

ワクワクドキドキの2本目、いよいよスタートです!


....「女王」に牙を剥くのは、まだ先の話でいい。

村岡選手にとって、今しなければならない事はひとつしかない。

まだ他人と勝負の時ではなく、「自分自身」をどう表現するか。

割って入られたベテランたちには申し訳ないが、敵はあなたたちではない。


5番目スタートの選手がコース脇へ消えていくのが見えた。

そこに何かあるのか?

一瞬、悪い想像が頭をもたげたが、すぐに切り替える。


まずは、「自分自身」。


スタートバーをこじ開けた時には、感情すらなかった。

2本目も同じようなハイスピードコース。

同じように滑れている。


2本目は「観客」となった狩野選手、コース脇からその姿を見ていた。

小さく頷いた理由は、彼女の滑りの質が良かったからだ。

その姿を見送ると同時に、JOINES選手のスタートを知る。


狩野選手の目の前、JOINES選手のスキーは完全に横を向いてしまう。

「桃佳と何秒差だったか?」

慌てて記憶を辿る。確か1秒強の差があったはずだ。

このミスは2秒どころではないロスのはず。

歴戦の彼にとって、どんなミスがどの程度のタイムロスになるのかよく知っていた。


しかしその直後、その計算を打ち消すような光景を目の当たりにすることになる。

ミスリカバリー後のJOINES選手は、攻めた。

もう間に合わないかも知れないという後悔が、彼女自身にムチを入れ始めたのだ。


狩野選手の視界からJOINES選手がいなくなった数秒後、

リーダーズボード上位ふたり、

全くの同タイムだったいうアナウンスの絶叫が、

会場中全ての観客の耳に飛び込んだ。


しかし、その絶叫は、三澤選手の耳には入らなかった。

いや、極限まで集中していた彼は、外部の雑音を認識していなかった。

数cm、いや、数mmの誤差も自分自身に許さない。


怒り。

そんな感情に近い高ぶりをスタートバーに叩き付ける。


まるで綱渡りだ。

狩野選手は、その滑りをそう見てとった。

まるで紙一枚も入らないと思えるほど、ゲートポールとスキー板の距離は近い。

最後まで、通せるか。

しかし、その思いは露と消えた。


小池選手がもうひとつ高いところに行くには、何が足りないんだろう?

実力はある。

真面目な性格の彼は、レースに手を抜くことなど一切ない。

彼の限界はまだまだ遠いところにあるはずだ。

狩野選手は、自分自身と狩野選手を重ねていた。

まだまだ先に行ける。

その思いは、ふたりとも確かに持っている。


極めて特殊な滑りをしなければならない山崎選手。

片足義足、片手不全。

どこをどうすればいいか、明確にアドバイス出来る立場の人間は、チームにはいない。

彼自身が死にものぐるいで答えを探し、見つけ、自分の糧にしなければならない。

チームメイトの目の前を滑り降りる彼には、まだまだ多くの課題があるのだ。


Sittingクラスのスタート前、コース整備の静かな時間、

狩野選手は多くの思いを巡らせていた。

チームメイトのこと。

特に、ここまで駆け上がってきた若者たち。

自分自身のこと。


今から始まるSittingクラスのレースに自分がいないことへの歯がゆさ。

単なる「観客」であることは耐え難い。

しかし、現実だ。

複雑に入り乱れる彼の思いをよそに、競技は再開される。


まだ発展途上にある夏目選手も、

滑りながら自身への歯がゆさを募らせているひとりだろう。

努力が報われるにはまでには、もう少しの時間が掛かりそうだ。


次々と駆け抜けていくライバルたち。

目を見張ったのは、鈴木選手のコース後半。

それまでの誰よりも明らかに違う滑り。


速い。

これは、表彰台か?

しかしその直後の、RABL Roman選手(AUT)のスピードにも目を見張る。

鈴木選手との差、0.06秒を0.15秒に広げたと、

時計と同じぐらい無情なアナウンスが流れた。


あと4人。

そのいずれもが、自らの滑りの出来に勝敗を左右される。


CALHOUN Heath選手(USA)コースアウト。

KREITER Georg選手(GER)の滑りも何かおかしい。


森井選手。

0.01秒差。

前半はかなりいい。


一瞬、目が合う。

これ以上は攻められない、そう言い残して駆け抜けた気がした。


その数秒後、勝敗は決する。

アナウンスが、0.08秒差で森井選手のトップ浮上を伝えるのと同時に、

狩野選手は斜面を見上げて思わず声を上げた。


WALKER Tyler選手(USA)が、

スキー板をドリフトさせながら、ゲートから大きく離れる。

コンマ数秒....

このミスによる影響、狩野選手には正確に理解出来た。


集中力を切らしたWALKER選手は、

その後、急速にスピードをドロップしていった。


フィニッシュエリアは熱狂に包まれていた。

その中心には、コンマ1秒もない時間の中での勝利を、

確実にもぎ取った森井選手が歓喜の雄叫びを上げている。


その光景を見ながらフィニッシュを切った谷口選手には、

それは、とても遠い世界に感じられた....


森井選手、優勝おめでとうございます!(^^

リザルトを分析していくとよく解るのが、

「負けに不思議な負け無し」という言葉の意味でした。


コース状況の悪い中で、

2本通じてしっかりと滑りをまとめ上げた森井選手に軍配が上がり、

森井選手を逃がしてしまったライバルたちは全て、

2本目のいずれかの区間でコンマ5秒以上のタイムロスをしてしまったのです。


また、村岡選手は初ワールドカップ初表彰台!

こちらもおめでとうございますです(^^

同タイム2位ですが、ミスを少なくまとめた滑りという意味では、

より重い意味を持つ結果でした。


これで、「女王」への挑戦権を確実にものにしたはずで、

これからは、「世界」は村岡選手を無視出来なくなるはずです(^^


では、このレースの最終結果です!

女子Sittingクラス

2位 村岡選手

男子Standingクラス

 7位 小池選手
22位 山崎選手
DF  三澤選手

男子Sittingクラス

優勝 森井選手
 4位 鈴木選手
11位 夏目選手
16位 谷口選手
DF  狩野選手

以上です!


明日は、いよいよPanarama大会最終日。

高速系のSGレースで幕を閉じます。

ジャパンチームの怒濤の活躍にどうぞご期待ください(^^


お断り:

この「見てきたような観戦記」は、

リザルトに記載のあること、またはそこから読み取れること以外は全て「妄想」です。

はっきり言ってしまえば「フィクション」です。真っ赤な「ウソ」です(^^;


2本目は「狩野's Eye」的な書き方をしましたが、

狩野選手が2本目の間、どこにいたのかなんてさっぱり全く解りませんし、

狩野選手の思いを代弁したものではありません。

このあたりをご承知の上、ご覧頂ければ幸いです(^^