「国境を股に掛ける」って、どういう感覚なんでしょうね?
σ(^^;はせいぜい、「県境」を越えるという感覚しかわかりません。
きっと彼らには、「県境」を跨ぐような感覚しかないのかも(^^;
障害者アルペンスキーワールドカップは、カナダからアメリカへ。
年末に繰り広げられたNORAMカップの死闘、
その記憶もまだ暖かいCopperMt.スキー場へ舞台を移しました♪
メダルラッシュとなったNORAMカップの再現、
いや、それ以上の結果が現れるや否や。
「山本新之介のワールドカップをまるで見てきたような観戦記」も、
無駄なほどに力が入ります(^^
この日は、GiantSlalom(大回転:GS)が行われました。
では、さっそく現地の状況を見ていきましょう!
まずは、リザルトをお手元にどうぞ♪(女子、男子)
NORAMカップと同じ会場とはいえ、使用されるコースは違うようですねぇ。
「Rosi's」コースに設定された特設コースのプロファィルは、
スタート標高3,310m、フィニッシュ標高2,973m、標高差337mです。
Panoramaから比べると、結構な高地。
ジャパンチームは既に経験済みの標高とはいえ、
体の順応はスムーズに出来たかな?
1本目のコースセッターはアメリカチームのコーチでした。
ゲート数は38、ターン数37。
標高差に対するターン数は11%と、ルール上最小のターン数が設定されています。
(ルールでは11%~15%)
天候は快晴。気温はスタート地点で-8.3℃、フィニッシュ地点では-7.8℃。
「Hard Packed」という硬い硬い雪面は、まさに「アルペンレース」といえる条件でしょう(^^
カナリムツカシイケドネ....
NORAMカップでは-22℃なんて寒さの中でのレースもありましたから、
それに比べりゃ、こんな気温はまるで南国に逃避したような気分でしょうね(^^
ではいつものように、ジャパンチームのスタート順から見てみましょう!
女子選手は11カ国32名。
Sitting(チェアスキー)クラス
32番 村岡桃佳選手
男子選手は17カ国74名。
Standing(立位)クラス
45番 小池岳太選手
52番 三澤拓選手
61番 東海将彦選手
72番 山崎福太郎選手
Sittingクラス
80番 鈴木猛史選手
84番 狩野亮選手
88番 森井大輝選手
93番 夏目堅司選手
102番 谷口彰選手 です。
このレースから東海選手が合流しました。
ひとレースごとに復調の兆しを見せている東海選手の戦いぶりにも注目です!
さて、レースが進むにつれエントリーが増えてきてまして、
ビブ(ゼッケン)ナンバーがとても大きな数字に変わってきています。
世界中から100名を越える選手たちが集まるのですから、
その凌ぎの削り合いもハンパないものになるでしょうねぇ(^^
選手たちは大変でしょうが、見ているこちらは楽しみでしようがありません♪
おっと、ウダウダと言っている間に、
レースは女子VisuallyImpaired(視覚障害者:VI)クラス、Standingクラスと進んでいます。
女子Sittingクラスもいよいよスタートです!
「課題が多いなぁ....」
村岡選手はスタートハウスで呟いていた。
Panarama大会で明らかになった高速系でのハンデに加え、
ここでもその体格に悩まされることになりそうだ。
「氷」と表現してもいいこのレースバーンにおいて、
体重に起因するエッジグリップの弱さと戦わなくてはならないのだ。
軽さ故の、リカバリーでの有利さはあるにせよ、
そもそも、リカバリーが必要な局面とはエッジが雪面から離れてしまっている状態なのだ。
よりエッジグリップを発揮出来る選手たちに比べて、
彼女にはより高度なスキーコントロールが求められる。
この雪面は、彼女に優しくはなかった。
ありとあらゆる雪面は経験済み。
小池選手にとっては、アイスバーンでもレース運びに影響はしない。
技術と自信に裏付けられたタイムを叩き出す。
それに続くは三澤選手。
氷の上は、むしろ望むところ。
1本スキーの強大なエッジグリップは他を凌ぐ。
好位置で1本目を終えた。
硬い雪面は、激しい負担を両足に強いる。
技術面では東海選手に不安がないが、古傷の影響だけが気がかり。
復調途上としては、まずまずの滑りではなかったか。
1本目ラップ(トップタイム)から10.03秒差。
山崎選手にはそのタイム差よりも、
この雪面で滑り終えられたことが自信になったはずだ。
この経験は彼の中で確かに蓄積された。
GSで花開くか。
鈴木選手はフィニッシュエリアで満面の笑みを浮かべた。
早いスタートとはいえ、好タイムでリーダーズボードのトップに立つ。
一方、狩野選手はやや苦戦を強いられている。
NORAMカップとは勝手が違ったようだ。
森井選手が駆け抜けたゲート際には、
まるでそれまでに誰も滑っていなかったかのようなレコードラインが残る。
それは美しさをまとった、まさに「Carving」と言えるものだった。
決して早くはないスタート順から、唯一の56秒台を叩き出して1本目を終えた。
夏目選手。
ほんの一瞬の出来事だった。
この雪面でなければミスとも言えないスキー操作。
しかし、容赦のないアルペンレースの厳しさを、
彼はコースサイドで噛みしめることとなった。
焦るな。
この言葉を自分に言い聞かせたのは、何度目のことだろうか。
谷口選手。
崩れ落ちそうになる自我を、必死に支えている。出口はどこだ....
1本目、1割近い選手がDidNotFinished(途中棄権:DF)という厳しいレースでした。
「氷」の雪面は、σ(^^も菅平高原スキー場で何度か経験がありますが、
それはそれは難しいんですよ。
それでも1/10というDFで済んでいるのですから、
ワールドカッパーのレベルの高さと来たら素晴らしいものがあります。
σ(^^;と比べるのも失礼な話ですけどね。
では、1本目の順位を確認します。
女子Sittingクラス
DF 村岡選手
男子Standingクラス
7位 小池選手 1.92秒差
9位 三澤選手 2.53秒差
13位 東海選手 3.52秒差
24位 山崎福太郎選手 10.03秒差
Sittingクラス
1位 森井選手 0.00秒差
(↓多分^^;)
5位 鈴木選手 ?秒差
9位 狩野選手 1.75秒差
23位 谷口選手 6.24秒差
DF 夏目選手 以上です♪
ところで、硬い硬いと事あるごとに書いていますが、
そのご苦労は選手たちだけではないんですよ(^^
コースセッターの指示どおりに戦場を整えていくスタッフの方々も大変な思いをされています。
ドリルで雪面に穴を空けてゲートを差し込み、
その根本にある「ネジ」をぐりぐりとねじ込んで固定します。
この時、「レンチ」といわれる専用の工具を使うのですが、
雪が硬いと、ネジの部分が入っていかないんです(^^;
両手で、渾身の力を込めてレンチを回すのですが、
足下がつるつる滑るので、それはもう一苦労。
苦労してねじ込んだゲートも、2本目はセット替えをするので抜いて差し直し。
ねじ込んだポールは当然のように、簡単には抜けてくれません(^^;
「はい、次はここね♪」
と、セッターは気楽そうに(失礼^^;)指示を出しますが、
コーススタッフのご苦労は本当に大きなものなのです。
こういったことも、選手にとっては大変ありがたい事なのです(^^
ちなみに、σ(^^は本気で「電動レンチ」なるものを作ろうと思ったことがありますが、
巨大でかなり重い装置になると解って、断念しました。ンナコタドウデモイイカ....(^^;
そんなご苦労と共に、完璧に設定された2本目のコース、
どのようなセットになったか見てみましょう!
コースセッターはフランスチームのコーチ。
ゲート数40、ターン数38、対標高差が11.3%。
1本目より1ターン多いだけじゃん?と侮るなかれ。
ゲート数よりターン数が2つ少ないということは、
2ゲート1ターンの「大きな」ターンが2つ設定されているということです。
ターン弧が大きくなるということは、速いスピードで長く板に乗らなければならないんです。
この硬い雪面で、それがどんなに難しい事か。
「氷」をご経験された事のある方なら、簡単に想像していただけるかと(^^
スタート地点で-5.5℃、フィニッシュ地点では-5.0℃と、
少しだけ気温は上がっていますが、この程度で緩む雪面ではありません。
相も変わらず「Hard Packed」。
きっと、2本目はサバイバルレースとなるでしょう!
その2本目のスタート順はこうです!
男子Standingクラス
3番目 東海選手
7番目 三澤選手
9番目 小池選手
24番目 山崎選手
Sittingクラス
7番目 狩野選手
11番目 鈴木猛史選手
15番目 森井大輝選手
23番目 谷口彰選手 となっています。
さあご注目!まずは東海選手が飛び出した!
....1.5秒から2秒。
インスペクション(コース下見)の時、
東海選手は、1本目とのタイム差を予測していた。
このセットだったらと直感的に計算したのだ。
その予測タイムどおりに降りてこられれば、
自身のコース攻略と古傷の状態が、
よりよい復調途上にあると確信出来る。
ほぼ誤差のないフィニッシュタイムは、
「ソチ」に向けて新たなカリキュラムを組めることを証明していた。
足下を掬われる感覚。
いつ味わっても気持ち悪いものだ。
三澤選手にとって、「氷」に苦手意識はない。
だからこそなおさら気が滅入る。
エッジグリップを失い、ラインを外してしまった代償は、大きすぎた。
このコースは、小池選手をも餌食にした。
絶妙に計算されたトラップ。
見抜いていたつもりだったが、ほんのわずかにスキー操作を破綻させられた。
滑走ラインを取り戻すまでに3ターン。
最後まで、それを取り返すことは出来なかった。
スタート前、山崎選手の表情は明るかった。
タイム差は全く関係ない、そう開き直っている。
インスペクションの時から、この「氷」の上でどんなことを試そうかと、
様々なアイディアが浮かんできたからだ。
荷重のかけ方。
スキー板のグラインド。
重心高さの調整。
あるいは重心そのものを崩してみる。
様々なトライに即効性がないのは承知。
レースバーンでそれらを試したことが、貴重な経験となる。
セッターを務めたCHARRIERE Mickael氏(FRA)とは、どのような人物だろうか。
きっと、芸術的なコースセットを信条にしているのかも知れない。
斜面変化、うねり、バンプ。
さまざまな雪面状況を巧みに利用し、
インスペクションでは見抜くことが難しいトラップが、
ありとあらゆる局面で現れるようにしていたのか。
狩野選手が大きくタイムロス。
鈴木選手がコースアウト。
フランスチームが順位を維持、もしくは大幅に上げているのと対照的に、
多くの選手たちがドロップしていった。
対照的に、トップに躍り出た選手がいる。
PETERS Corey選手(NZL)だ。
鈴木選手よりふたり前にスタートしたPETERS選手は、
誰も届かないと予想された59秒台を叩き出し、後続を待つ。
あと4人。
CALHOUN Heath選手(USA)が脱落。
あと3人。
KREITER Georg選手(GER)。
PETERS選手の1本目からのマージンは0.38秒。
マージンを使い切り、わずかに逆転を許してしまった。
あと2人。
RABL Roman選手(AUT)のマージンは0.4秒。
2本目の遅れが0.48秒。
0.08秒差でPETERS選手を取り逃がす。
あと1人。
0.88秒差、小さくはない。
しかしようやく、「Moriiに勝てるチャンス」が来た。
心臓の鼓動が心地よい騒音となっている。
アナウンスが運命のスタートを告げている。
フィニッシュエリアからは何も見えない。
確認出来るのは最後の斜面だけだ。
たった数十秒。
待てない。
体の深いところから込み上がってくる興奮を押さえられない。
目に映る最も上のゲート。
大きく揺らめく。
門扉をこじ開けて飛び込んでくる姿には神々しさすら感じる。
自らもあのような光を放っていたはずだ。
しかし、今、コース上の光に見とれている自分に気づく。
声が漏れていた。
ラストゲート。
はじき飛ばされたのはゲートだけか。それとも。
フィニッシュラインが断ち切られた。
リーダーズボード。
表示が変わる。
彼の光は小さくなっていった。
谷口選手にとってのこの2本目の滑りは、わずかだが何かが変わった。
誰も気がつかないかも知れない。
しかし、それは2本目のタイム差が証明している。
何よりも彼自身の感覚が、「きっかけ」を掴んだことに気がついていた....
とにもかくにもまずは、森井選手。
優勝おめでとうございました!
しかしまあ、入れ替われ立ち替わりいろんな選手が挑んできますなぁ。
それを跳ね返すのも素晴らしいし、何よりも必ず上位に名を連ねるなんて、
森井大輝とはどんなタフな選手でしょうか(^^
では、このレースの最終結果です!
女子Sittingクラス
DF 村岡選手
男子Standingクラス
9位 小池選手
11位 三澤選手
12位 東海選手
19位 山崎選手
男子Sittingクラス
優勝 森井選手
8位 狩野選手
19位 谷口選手
DF 鈴木選手
夏目選手 以上です!
ちなみに、このレースの厳しさもリザルトには表れています。
男女合わせて101名の選手がスタートを切り、
1本目は9名、2本目はなんと16名の選手が姿を消しました。
完走率は、実に75.2%!
4人にひとりがいなくなっちゃったんです。
これがインフルエンザだったら、学級閉鎖ですよ(^^;ドンナタトエダヨ....
さあ、北米シリーズも残すところあと3レース。
ジャパンチームには、もうひとつ、ふたつ、みっつと大暴れを期待しましょう!
Next up Slalom(回転:SL)!(^^
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