一緒に耐えよう、立ち直ろう!東北! がんばろう!日本!

2014年1月23日木曜日

昨日の今日:20140119CopperMt.SL2....

日々の時間の流れというものは、その瞬間だけに意味があるものではなくて、

昨日、一昨日、はたまたそれ以前からと、何らかの影響を受けているものです。

ああ、考えてみれば、あの時こうだったから、今はこういう流れになっているんだなと、

思われる事も多いのではないでしようか?


人間とは、感情の生き物。

経験したことをどのように活かすのかはその人次第。

前向きに生きるのか、後悔に押しつぶされそうになるのか....


σ(^^;は後者の場合が圧倒的に多いですねぇ。

で、よく呟くのが「前向きに!(Let bygones be bygones)」という言葉。

それはそれ、これはこれと、元気よく生きていきたいものです♪


障害者アルペンスキーワールドカップCopperMt大会も3日目。

Slalom(回転:SL)レースの2戦目を迎えます。


「見てきたような観戦記」は、

後日判明する「事実」の前に立ち尽くすことが多いのですが、

それはそれ、これはこれ(^^;

「物語」は滔々と進みます♪


まずはリザルトをご確認願います(^^ (女子男子


昨日今日は週末ということもあるのでしょう。

晴天続きのCopperMt.スキー場には、

この日もフィニッシュエリアを埋め尽くす観客で賑わっております!


普段、アルペンレースをそんなに見ない一般スキーヤーの方も、

観戦に訪れているようですね(^^

昨日に苦杯をなめた鈴木猛史選手の大応援団は、今日こそはと気勢を上げていますね(^^


使用されるコースは昨日と同じ「Rosi's」コースの特設会場。

スタート標高3,120m、フィニッシュ標高2,973m、標高差147mのレースバーンです。


気温はスタート地点で-3.3℃、フィニッシュ地点では-2.8℃とやや暖かいものの、

雪面状況は「Hard Packed」のまま。

昨夜はよく冷え込んだのでしょうね。

で、お日様が頑張って、ぐんぐんと暖かくなってきたと。

そんなところでしょうか。


コースセッターは....あれれ?

女子と男子のリザルトのコースセッターの名前が入れ替わっているぞ??

これではどちらが1本目か解らない!(^^;

どうしようか....


1本目にイギリス選手のDidNotFinished(途中棄権:DF)が多くて、

オランダ選手のDFは2本目が多い。

てことで、1本目はオランダチームのコーチがセッターをお務めということにします!
                                           ナンテイイカゲンナ....(^^;

ゲート数は45、ターン数が44。

標高差に対するターン数は29.9%という設定です。

この1本目もかなり少なめのターンで競われるということですな。


では、いつものようにスタートリストの確認です!


女子選手は11カ国32名。

Sitting(チェアスキー)クラス

29番 田中佳子選手


男子選手は16カ国67名。

Standing(立位)クラス

42番 三澤拓選手
62番 東海将彦選手
70番 山崎福太郎選手

Sittingクラス

80番 夏目堅司選手
82番 鈴木猛史選手
86番 森井大輝選手
90番 狩野亮選手
95番 谷口彰選手   です。


村岡桃佳選手と小池岳太選手はエントリーをしていませんでした。

トラブルがあったということではなく、休養のため調整日という事であると信じたい(^^


スタート付近では、レース前の独特の賑わいを見せています。

この時間が大好きという選手もいるでしょうね。


何てったって、アルペンレースでは自分だけがコースを占有出来るのです。

普段のフリースキーでは絶対に味わえない感覚。

これを待ちわびる時間はとても楽しいものでしょう♪


ジャパンチームも、和気あいあいとこの雰囲気を楽しんでいます。

....あれ?夏目選手の姿がないですねぇ。

エントリーはしていたけど、急遽、「調整」に入ったということかな?

こちらも「トラブルでお休み」でない事を祈ります。


さあ、いよいよ女子Sittingクラスのスタートです!


ジャパンチームの1番機、田中選手。

その前には「女王」の背中。

その微笑みには引き込まれてしまうが、

そんな自分を許せない感覚にも陥る。


この「女王」を引きずり落としたい。

しかし、田中選手の歯車は噛み合わないままだ。

リーダーズボードに表示されたタイム差は、目眩がするほどの開きがあった。


得意のSL。

Standingクラス2番手という好順のスタート。

今回の遠征最後のSLレース。

またとないチャンス。

珍しく三澤選手は高ぶっている。


その体をしなやかにコースへ放り出した。

ゲートのリズムが彼の心臓の鼓動とシンクロする。

それほどまでに違和感のない滑り。

この後、30名以上の選手がスタートするが、

彼の上に躍り出た選手は3名しかいなかった。


「ちょっと違うな....」

東海選手の両足は、

インスペクション(コース下見)で作り上げたイメージどおりに動いていなかった。

まだどこかで、「無意識」のブレーキを掛けてしまっているのか。

まだ調整が必要なようだ。


山崎選手の小脳は実に優秀だ。

大脳に蓄積された「経験」という名の情報の中から、

その瞬間に最も効果的な部分を抽出し、

余すところなく体をコントロールしている。

しかし、「経験」以上の働きはしない。


それでも、新たな経験を元に新たな情報が蓄積されていく。

昨日より今日、今日より明日。

その歩みは確実に前に進んでいた。


前日の優勝者は、コースサイドへと消えていた。

勝ち逃げされたという、「切なさ」に似た感情が鈴木選手を襲ったが、

次々と襲いかかるライバルのひとりが消えただけだ。

いちいち、誰かの動向を気にしてはいられない。


むしろ、「あの数mm」に影響されて負けたこと自体に、大きな憤りを感じている。

今度は、その「数mm」すら制してみせる。

この1本目、彼の滑りを目撃した者は幸福である。

「最速」の称号を手にした者だけが放つオーラを、肌で感じることが出来たからだ。


39.49秒。

鈴木選手のタイムを耳にした彼は、少し呆れた。

しかし、どのような状況も「強み」に変えていける数少ない選手のひとりが、

森井大輝という男である。

鈴木選手のすぐ後に続く順位で1本目を終えた。

そのタイム差は、彼の「伸びしろ」であると理解した。


狩野選手自身、悪くない滑りをしたと思っている。

圧倒的な大差をつけられたのは、ラップ(トップタイム)が速すぎたからだ。

悪く考えがちな感情を押し殺す。


昨日は昨日。

割り切るのは谷口選手。

わずかだが見え始めた光の方向を、この1本目は確認出来た。

もう少しだ。

しばらくの間、彼はリーダーズボードを眺めていた....


鈴木選手の滑りには、森井選手でなくとも呆れますな(^^;

唯一の39秒台。2位の森井選手とは1.33秒差。

鈴木選手を凌ぐには、いったいどのような方法があるんでしょうかね?


では、あらためて1本目の順位を見てみます。


女子Sittingクラス

 7位 田中選手 10.8秒差


男子Standingクラス

 4位 三澤選手 0.54秒差
14位 東海選手 4.25秒差
21位 山崎選手 9.12秒差

Sittingクラス

 1位 鈴木選手 0.00秒差
 2位 森井選手 1.33秒差
 8位 狩野選手 2.76秒差
15位 谷口選手 5.65秒差       でした♪


2本目、三澤選手のポディウムなるか?

Sittingクラスはジャパンチームのワンツーフィニッシュが焦点!

はてさて、どのような結果となりますやら(^^


ところで、鈴木選手のバケモノじみた強さって、いったいどこから来るんでしょうかね?

先日に放送されたNHK-Eテレ「ハートネットTV」で、その速さが紹介されていました。


「世界を震撼させる脅威の神業」として、「逆手」でゲートをくぐり抜けるシーンの解説。

まあ、その「神業」を使っている事だけが鈴木選手の速さの秘密ではないのですが(^^;


手前味噌ですけど、その番組の製作スタッフから電話取材がありまして、

「逆手」がSLレースでどれだけ有効かということを、だらだらと、得意げに話しましたσ(^^;

それが番組で使われたというのは、ちょっぴり嬉しいことです♪

もしかしたら、そんなことは誰でも知っていて、

たまたま、σ(^^;が同じ事を話しただけなのかも知れませんが....


で、なぜ「逆手」が速いのかを補足しておきたいと思います。


大抵のチェアスキーヤーがSLレースを攻める場合、ゲートポールは体に当てていきます。

一方、「逆手」の場合は、アウトリガー(両手に持っているヤツ)でポールを倒します。


SLのような細かいリズムでターンを繰り返す場合、

どうしても「外力」を利用して「切り返し」のきっかけを作っているのが現状で、

その「外力」とはつまり、ポールから受ける「抵抗」そのものなのです。


では、その「外力」を利用したターンで、「逆手」と「通常」との差は何かということですが。

「逆手」の場合、約1m前方で「通常」より早くポールに接触します。

SLでのターンスピードが何km/hかはっきりと知りませんが、

それが30km/hだった場合、1mを進むのに掛かる時間は約0.12秒。

この時間だけ、早く切り返しを始めることが出来て、

その分だけ次のターンに対して早い「仕掛け」が可能になります。


早い仕掛けが出来るということは、次のターンに対して余裕が出来るだけではなく、

ターン弧を「縦長」にして落下速度を上げることにも繋がります。


1ターン当たり0.12秒仕掛けを早くすることが出来たら、

フィニッシュまでどれ程の差に繋がることになるでしょうかね(^^


今回のSLレースの1本目の場合ですとターン数は44。

0.02秒ずつタイムを短縮させたとしても、その差は、0.88秒。

これはもう、「圧倒的」と言ってもいいでしょう♪

鈴木選手の強さの秘密は「逆手」にありというのがよく解ります。


じゃあ、誰も彼も「逆手」で滑ればいいじゃん?おっしゃるとおり(^^

でも、そう簡単には出来ない理由もあります。


ほとんどのチェアスキーヤーが初心者の頃に教わるのが、

アウトリガーを利用したターンです。

これは、アウトリガーから受ける抵抗を利用して、

体の重心を回転またはそのバランスを左右に崩してターンさせる方法です。


一方、鈴木選手の重心移動は、

重心付近の体幹バランスを自ら移動させることで行います。

つまり、鈴木選手はアウトリガーを雪面に接触させていなくても、

ターンを始めることが出来るのです。


これは、アウトリガーに頼って滑っているチェアスキーヤーには絶対に出来ないことで、

SLレースのような特殊な局面では、とても大きな差になるということです。


こう考えると、鈴木選手の「速さ」の秘密というのは、

体を含めたコントロールがずば抜けているからであって、

「逆手を使う」から早いのではなく、

「逆手が使える」というだけ、ということがよく解ります。

以上、「ろぼ理論によるちょーテケトーな逆手解説」でした(^^


おっと、こんな事をウダウダ書いている間に、

2本目のスタート時刻が迫ってきました。

駆け足で2本目のコースプロファイルなどを確認します。


天候は変わらず「Sunny」

気温も1本目と変わりません。


コースセッターは、誰がなんといおうとイギリスチームのコーチです(^^;

ゲート数44、ターン数42、対標高差28.6%。

ターンの数が少なくなっていますが、簡単なコースという訳ではなさそうです。


ゲートが立てられている横の間隔、つまり「振り幅」が広くなっているようです。

結構、窮屈にターンをしなければなりませんねぇ。

うわ!女子Standingクラスが始まっちまった(^^;


本目のスタート順はこうです!

女子Sittingクラス

 2番目 田中選手


男子Standingクラス

12番目 三澤選手
16番目 東海選手
23番目 山崎選手


男子Sittingクラス

 1番目 谷口選手
 8番目 狩野選手
14番目 森井選手
15番目 鈴木選手   です!


よかった、田中選手のスタートに間に合った(^^;

それいけぇ!佳子ちゃん!!


....違う。こんな滑りをしたいんじゃない。

田中選手は固い硬い雪面と戦い、呟いた。

もう一度、何もかもを組み直そう。

フィニッシュエリアで再起を誓う。


三澤選手が背負うビハインドは0.54秒。

完全に、目指す高みが射程圏内に入っている。

このスタートバーを押し込めば、そこは「彼の世界」のはずだった。


「落ち着け」

どこからか声が聞こえたような気がしたのは、

気負いすぎた滑りが荒くなってきたことに気がついてからだ。


いつの間にか、リカバリーを続けていた。

いったん失ったエッジグリップは、彼の意に反して戻ってこない。

同時に、大きな時間を失った。


絶対に無理はしない。

「ソチ」までの道のりを考え、東海選手はこの2本目に対する意識をそう決めた。

古傷の具合はよくなりつつあるとはいえ、

ガラスのような脆さも合わせ持っていることも知っている。

「調整」方法は既に見えている。

2月のインターバルが勝負だ。


「こうではないのか....」

1本目に掴みかけた自身の滑り方。

再現しようとしたが、うまくいかない。

山崎選手はスキーの難しさを改めて認識した。


トライ&エラー。

これはこれでいい。

あとでゆっくりと整理しよう。


こちらは、その「再現」に成功した。

谷口選手は、急いで次を求めようとはしなかった。

一昨日で得られた「きっかけ」を、

この2本目でもう一度体現することを目標に置いていた。

これでいい。

まずは満足してフィニッシュエリアを出た。


ナイフエッジ。

狩野選手をそう表現する人は、

彼のスキーコントロールの鋭さ、

そして同時に伴う危うさに魅せられる。


SLレースにおいては、

それらの魅力に、諸刃の剣の美しさも纏う。


振り幅の大きなターンの繋ぎ。

板が加速する感覚は、まさにナイフの鋭さ。

滑り降りた時、彼の名前は2段目に表示されていた。


師。

兄。

友。

森井選手には、様々な思いを抱く鈴木選手。

師に教えられ、目指し、兄のように頼り、友のように気を許す。

森井選手の存在がなければ、昨期に実を結んだ成長はなかった。


その姿をスタートハウスで見送る。

「Gentleman, Start your engine!」

エンジンないんですけどワラ

思わず頬を緩めた。

ジョークが好きなスタッフなのだろう。


口頭でのカウントダウンが始まる。


Five Seconds.

その瞬間。

コース上、遙か彼方で大きな雪煙を見た。

森井選手のドリフト。

思わず呻いていた。


Three Seconds.

インターバルの間に話していたワンツーフィニッシュは夢と消えた。


「Gooooooo!!」

それならば、圧勝で花を飾ろう。


現在のリーダーはCALHOUN Heath選手(USA)。

マージンは1.67秒。

絶対的な優位。


しかし、昨日の今日。

そして、森井選手のランクダウン。

誰にも止められたくない。

誰も止められない。

守る事など考えもしなかった。

世界最高の精密機械が、斜面を駆け抜けていく。


追われる立場のレースリーダーなら、このような時、神に祈りを捧げる。

しかし、遠く斜面を見上げるCALHOUN選手は、それすらも諦めた。

この恐るべきライバルに対峙すること、そしてこの結果は、神が与えた試練なのだから....


んー、乱暴に言っていいですか?

何だこの差は???

草レースじゃないんですよ?

ワールドカップですよ?

2.52秒差って、一体どういうことですか(^^;


いつものようにおおざっぱで狂いのない計算をしますと....

平均時速が40km/hだったとして、

鈴木選手とCALHOUN選手との、タイム差から計算した距離は約28m!

小学校のプール1杯分より遠い距離ですよ!!
              イツモキジュンガショウガッコウトイウノモドウカトオモイマスガ....


はぁ~....思わず言葉を忘れてしまいますが、

これだけは言っておかなくてはなりません。

鈴木選手、優勝おめでとうございました!(^^


では、最終順位をおさらいしておきます。


女子Sittingクラス

7位 田中選手


男子Standingクラス

7位 三澤選手
14位 東海選手
21位 山崎選手


男子Sittingクラス
優勝 鈴木選手
 6位 狩野選手
 7位 森井選手
14位 谷口選手
DidNotStart  夏目選手
(不出走:DS)

と相成った(^^


これで、Panarama大会から続いている、

ジャパンチームのメダルゲットは7戦連続となりました。


CopperMt.大会最終日の明日、GiantSlalom(大回転:GS)2レース目で、

8戦連続、つまり北米シリーズ全戦ゲットなるか?(^^

大いに期待しましょう!ではまた次回にお会いします♪

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