ソチパラリンピックDay8、
この日の中継は心穏やかに見ることが出来ませんでした(^^;
「のどから手が出るほど金メダルが欲しい」と公言していた森井選手。
狩野選手や鈴木選手の金メダルを心から祝福しながらも、
自らの栄冠は手に出来ない日々が続いていました。
彼の思いの強さを知っているからこそ、σ(^^;も気が気でならなかったのです。
この日は男子競技の最終日、開催種目はGiantSlalom(大回転:GS)。
間違いなく、大本命は森井選手だと思っていました。
ですが、結果はご存じの通り。
決して、彼は口にしなかったでしょうが、
その無念は計り知れないものだったことでしょう。
報道で、彼が涙する映像が流れましたが、
それはコメントどおりの嬉し涙だけではなかったんだろうと想像しています。
今度会えた時、どんな言葉を掛けるのがふさわしいかわかりませんが、
ひと言、「お疲れ様でした」はしっかりと伝えたいと思っています。
ただ、いろいろと考えてしまいます。
パーツのテストだ何だと「雑音」を入れて、トレーニングの邪魔してしまったのかな?
だから、予定していた調整が遅れに遅れ、こんな結果になってしまったのでは?
大舞台に関わるという「因果」の怖さを、少なからず感じているところです。
ただ、結果は結果。
森井選手がそれを受け入れている以上、
σ(^^;も後ろ向きではいけないと思います。
精一杯頑張って生きていかないと♪です。
では、GSの模様を改めて振り返りたいと思います。
などと簡単に書きましたが、
レースの映像を何度見直したかわかりません。
そのぐらいに、「敗因」が解らなかったのです。
↓1本目
↓2本目
「こんなはずでは」という固定観念を捨てて、
何度も何度も見直して、楽観的な想像を捨てて....
それでも、これから書くことが正解なのか全く自信がありません。
ですので、今回は「いつも以上の戯言」とご理解の上でお読みください(^^;
まずは、当日の状況です。
コースプロファイルは、スタート標高1,303m、フィニッシュ標高960m、標高差343m。
1本目の天候は「Fog(霧)」、気温がスタート地点で-1.0℃、フィニッシュ地点は0.8℃。
(映像では、霧は晴れていたようですが....)
雪面は「Packed」ですから、前夜の冷え込みを利用して、
雪面硬化剤を徹底的に利用して固く仕上げていたのでしょう。
コースセッターはオランダチームのコーチ。
ゲート数49、ターン数45。
対標高差ターン数は13.1%と、「標準」よりのややスピードセット。
エントリーしていた選手は35カ国112名。
スタートしなかった選手を入れて数えても、
Sitting(チェアスキー)クラスまでに66名の選手がコースに入りました。
これだけ滑ればものすごく荒れた雪面になりますが、それも「いつも」と変わらない状況。
データだけ見ていると、ガスで遮られた視界と暖かい気温以外は、
そんなに厳しい状況でもなさそうです。
ただ、映像から見て取れるコースセットには、とてもイヤらしいトラップがありました。
よく解るのが、ジャパンSittingチーム1番機狩野選手のラン。
滑走タイム15秒頃の急斜面です。
いいスピードで急斜面に飛び込み、
何もかもをねじ伏せるようにターンを行います。
そして、緩斜面へと続く変化。
緩斜面へはハイスピードを維持するのがアルペンのセオリー。
狩野選手も限界ギリギリの速度を保って緩斜面へアプローチしていきました。
しかし、その入り口に立っているゲートは、
ターン弧を小さくさせるセットになっていたのです。
そのままのスピードで進入する狩野選手。
頑張ってクリアしようとしたのですが、
エッジグリップの破綻が先に来てしまいました。
激しい転倒にはならなかったものの、コース内でストップしてしまいます。
このセットは嫌らしいなぁと、TVの前で眉をひそめるσ(^^;。
次の瞬間、「チーム力」というものを垣間見ました。
狩野選手は懸命なリカバリーの末、
Disqualified(旗門不通過:DSQ)は避けることが出来ました。
そのまま再スタートをして、2本目に進むことも出来たのですが、
狩野選手はコース脇にいるコーチに「報告」するために、
DidNotFinished(途中棄権:DNF)を選択。
その結果、速やかにスタートハウスへ「情報」がもたらされました。
その後のジャパンSittingチームのスタート順は、
その3人あとに74番鈴木猛史選手がいて、
以降、77番森井大輝選手、80番夏目堅司選手、93番谷口彰選手。
この間隔なら、「生きた」情報が間に合ったはずで、
咄嗟に情報を上げなければと判断した狩野選手。
素晴らしい「チーム力」だと感嘆しました(^^
さて、その「情報」を受け、続く選手たちは「そのトラップ」をどのようにクリアしたのか?
鈴木選手のその区間は映像にありませんでしたのでわかりませんが、
他の3選手は、とても「美しく」駆け抜けられたのではないかと(^^
しかし結局は、各選手は大きなビハインドを背負って1本目を終えることになった訳ですが、
映像で確認出来る限り、相当に難しい雪面だったというのが、
その原因のひとつではなかったかと考えています。
まず、当時の雪面状況は、おそらくこんな感じではなかったかなぁ....
期間中、とても暖かく、雪の結晶は溶けていたことでしょう。
それに加えて、雨の日もありました。
そんなこんなで雪は「ザラメ」どころか「ビーズ」のようになっていたはず。
しかも、GSのコースではこれまでにレースバーンとして使用されていません。
しっかりと「保存」されたコースという訳です。
その上、徹底的にスノーセメントで固められ、さらにGS前夜の冷え込みが加わり、
例えるなら「雷おこし」のような雪面であったと考えます。
この「雷おこし」、
ターンを始めようと倒し込みを始めるその瞬間が、
最も難易度が高くなります。
「ふつー」の雪であれば結晶が細かく、
スキーのトップエッジを「引っかけ」れば、エッジは雪面に食い込んでいくので、
ターンインは容易です。
ところが、「雷おこし」の表面は結晶が丸く、とても滑りやすいのです。
エッジを立ててグリップさせたくても、
「ころころころ....」とエッジは雪面を「撫でて」滑っていってしまいます。
それではエッジは雪面に食い込みません。
エッジが食い込まなければ「カービングターン」は出来ません。
こう考えると、エッジを掛け始める「きっかけ」が極めて少ない雪面で、
とても厳しい戦いを強いられたというのが実際のところでしょう。
ジャパンチームだけではなく、ほぼ全ての選手が、
切り返しからリスキーなターンインの局面で、とても不安定な挙動をしていたのが見られます。
そしてもうひとつ。
切り返しの際には、食い込んだエッジが雪面から「抜けない」シーンが多く見られました。
この「雷おこし」は表面は固く締まっていますが、
カービングターンが始まると、どんどん深くエッジが食い込んでいくようです。
思ったより深く雪面に食い込んだということは、エッジが抜けにくく感じられるはずです。
エッジが抜けないということは、切り返しが遅れる。
切り返しが遅れるとターンインも遅れ、エッジングはより難しくなります。
こういったことが原因となって、
正確で強大なエッジグリップを武器とするジャパンSittingチームにとって、
その優位性を封印された状態で戦わざるを得なかったというのがσ(^^の見立てです。
さらに、高いターンスピードを維持出来ずに飛び込む長い緩斜面区間が、
体重が比較的軽めの選手たちにとっては不利な要素を拡大させることとなりました。
ちなみに、スキーの世界でよく言われる「カービングターン」ですが、
「Curving Turn(曲がるターン)」ではなく、
「Carving Turn(刻むターン)」ですのでお間違えのないように(^^
閑話休題。
で、2本目の戦いを迎える訳ですが、天候は回復していきます。
霧が晴れ、「PartlyCloudy(晴れ時々曇り)」となり、
気温はスタート地点1.0℃、フィニッシュ地点4.4℃まで上がってしまいました。
コースセッターはスペインチームのコーチ。
ゲート数46、ターン数41。
対標高差ターン数を11.9%にまで落としても、
厳しいコース状況が変わる訳でもありません。
「雷おこし」が水分を含んで崩れていくように、
2本目の雪面も「ザラザラ」と音とを立てて削られていきました。
ただでさえエッジングの厳しいコース上に、
削れて転がる「ビーズ」が散りばめられ、
滑走ラインから外れれば、ビーズの「吹きだまり」に突っ込みます。
2本目の状況は輪を掛けて厳しくなってしまったのです。
森井選手の攻撃的な滑りも、
鈴木選手の絶妙なスキーコントロールも、
夏目選手の確実性も、
谷口選手の豊富な経験も、
全てが全て「封印」されての戦いでした。
「敗因」は、全てが裏目に出た!こと。
そんな、本当に辛いレースだったんだろうなと、
σ(^^;は画面を見ながら、レースの終了を呆然と迎えました。
さて、男子の競技はこれで全て終了です。
期間中を通して、なんと言いますか、
「感動」とか、そんな簡単な言葉で、
このソチパラリンピックを表現することはとても出来ませんねぇ....
画面の前で座っていただけでしたが、
「一緒に戦えた」という充実感に満たされた、
素敵な時間を頂いた気がします。
本当に本当に、お疲れ様でした!(^^
さて、まだもうひとレースが残っています。
もしかしたら?あわよくば?なんて事も期待しながら手に汗握った女子GS。
次回はその模様をお送りします♪
「『4年間』の始まり」にて(^^
ほんとに、ほんとに、森井さんには、金を取って頂きたかった。でもでも「お疲れさまでした」。「次」、行きましょう!!!
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