新しい季節の到来にそわそわしてますね(^^
σ(^^;は「年度魔Ⅱ」という悪魔たちにおしりを蹴飛ばされて慌てふためいています。
まあ、いつもの邪魔くさいルーチンに追われているだけですけどね♪
そんな季節柄、ほとんどの人にとって、
冬はすでに「過去」の話となっていることでしょう。
しかし!σ(^^;の心ははまだソチにいます♪
前回までに、障害者アルペンジャパンSittingチームのレースについて書いてきましたが、
どうしても、「整理」しておきたい事がありますので、「番外編」を書いておこうと思います。
そろそろ食傷気味だとおっしゃる方は、スルーしてください(^^;
何が気になるのかといえば、フランス製のチェアスキーです。
Tessier社から「Scarver」というモデル名で発売されています。
TABERLET Yohann選手(FRA)を始め、何名かの選手が使用しているヤツ。
そう、2本のスキーが装着されているアレです。
これ、本当に面白そう!
いま、「σ(^^が乗ってみたいチェアスキーランキング」で、ぶっちぎりのトップを爆走中です♪
2本のスキー板というのはとても理にかなっていまして、
単純に、滑走面の「摩擦係数」は半分、「エッジグリップ」は倍!
1本スキー(以下、「モノスキー」)のフレームと比べて、
その優位性は計り知れないものがあります。
特に、高速系の緩斜面区間では無類のスピードを誇るでしょう。
しかし、「ソチ」では目立った成績を上げることは出来ませんでした。
その原因は、その操作性の悪さにあると思うんです。
「Scarver」はフレームのバンクに連動して、
2本のスキー板をリンクで「機械的」にバンクさせています。
間近で見た訳ではないのですが、簡単に書くとこのようになっています。
とても面白い機構だと思うのですが、
左右のスキー板は「機械的」に、フレームとスキーを1:1でバンクさせているだけでしょう。
健常者のように、「内足」と「外足」の絶妙な使い分けをしている訳でもなければ、
内外のスキー板のターン弧、その大きさまでを考慮させているとも思えません。
しかも、ターン中の力のかかり方を考えると、その「操作性」の限界がよくわかります。
雪面と軸と荷重方向を整理すると、このようになっていると思われます。
ちなみに、モノスキーであればこのようになります。
ぱっと見は、このフランス製の方が安定感があるように思えます。
三角形の底辺でしっかりとバランスが取れそうですものね。
でも、モノスキーのように深いバンク角を取ろうとするとどうでしょう?
このように、「内足」に乗ってしまうことにならないでしょうかねぇ。
内足に乗ってしまう恐怖は、
健常者や2本スキーのStanding(立位)選手の方にはよくおわかりかと(^^;
スキーにおけるターンの妙は、
そのスピードとか、ターン弧の「キレ」とかではなく、
重心移動の「自由度」にあると考えています。
自由自在に重心移動が出来るということは、
どのような斜面の滑走でも、
どのような深さのターンでも、
どのようなリズムの切り返しでも、
「自由自在」に出来るものだと思うんです。
でも「Scarver」は、バンク角が限度を超えることで外足の荷重が抜けてしまい、
このように、突然に重心バランスが変わってしまう。
リンクによって板の傾きを制御しているのですが、
健常スキーのように内外の足の位置を変えられない、
そういうこところから来る構造的な事が要因です。
それは、チェアスキーに依存するSittingクラスにおいては「致命的」だと思うんですよね。
事実、この「ソチ」期間中のレースでも、「内足」に乗った事によるクラッシュがありましたし、
そういったフレーム由来のミスリカバリーは相当に難しそうに見えました。
こういった問題が発生する中で、
構造上、フレームそのもののバンク角は浅くせざるを得ません。
2本スキーの強烈なグリップによって、
浅いバンク角でもターンすることは可能でしょうけども、
それも限度があります。
「ある角度」以上は倒せないということは、
「限界」は突然にやってくるということでもあります。
障害の重い、特にLW10クラスの選手たちにとっては、とても使いづらいものでしょうね。
こうやって考えてみると、モノスキーと比べて、
①重心移動の自由度
②旋回性能
③雪面追従性
この3点について優位性がなければ、評価されないのではないかな?
①は先ほども書いた通り。
モノスキーには、「最大バンク角=シートが雪面に接触する位置」という、
「物理的」な限界によって制限がありますが、
「Scarver」の場合だと、「構造的」な限界が先に来てしまいます。
これは、いくら何でも切ない(^^;
②の旋回性能でいえば、よくわかるのがSlalom(回転:SL)レースでした。
「足」を付け替えて、1本スキーでスタートしてますよね?
←SL用「足」
つまり、SLのような細かく鋭いターンが求められる局面では、
「使えない」ということを証明しているようなものです。
③はサスセッティングにも大きく関係しますが、ギャップを食ってしまったり、
無理な切り返しをしてしまったりして雪面から板が浮いてしまう状態や、
高速系のジャンプの処理などのことについてです。
雪面とのコンタクトによって、リンクなどでの「機械的」な制御をしているということは、
雪面から浮いてしまってたら、板のバンク角は変わってしまいます。
空中で「プラプラ」するわけですから。
選手が頑張って、リカバリーとして重心位置を補正したとしても、
板のバンク角がいつの間にか変わってしまったら、
エッジが食いついた瞬間に思わぬ方向へ飛んでいってしまうことがありそうです。
「板を浮かせない」のがスキーの「キモ」だとしても、
「浮いてしまう」のも「宿命」です。
このリカバリーに影響のある構造だと、やっぱり面白くない。
以上、この3点について、
わずかでもモノスキーを上回る性能を出して、
なおかつ、DownHill(滑降:DH)のような大きなハイスピードターンから、
SLのキュンキュンと鋭く回るターンまでを、
「そのまま」の状態で使いこなせなければ、「主流」にはならない。
そんな気がしています(^^;
もちろん、まだまだ改良の余地があるはずなので、手の入れようによっては、
「トリノモデル」が世界を席巻したような「革命」を起こせる可能性はあります。
てことで結論!
「Scarver」は、今のままではレースの使用に耐えない!
だが、驚異の可能性と、改良の余地は大いにありあり!
見て触って乗って、σ(^^の手で「改良」を加えてみたい!
だから、とても面白そうなマシン♪だと思うんです(^^
「改良」が上手くいったとして、
その「足」の機構をトリノモデルに移植したらどうなるのかな?
「えげつない」マシンが出来そうだな....
実は簡単な工夫で、問題をクリアする方法を思いついています。
あとは実行あるのみ。
「Scarver」、ちょいと買ってみようかな?と思って、価格表を取り寄せてみました。
(以下は、すべて付加価値税5.5%込)
フレームにシート、オーリンズ、アウトリガー(手に持つヤツ)、
それにレッグカバーのセットで6,004ユーロ。
1ユーロ140円ぐらいだから、約84万円!!!!
オーリンズをTTXにすると、プラス736ユーロ、約10万円!
シートをケブラーカーボン製にすると、プラス848ユーロ、約12万円!
んー....見なかったことにしよう(^^;
さあ、長い間お付き合い頂きましたが、
「山本新之介のソチパラリンピックをわかったような技術解説」はこれにて終了です!
読み返してみると、勢いに任せてダラダラと書いただけのような気もしますが、
書きたいことを書ききった充実感に満足しています。
読まされた方にとっては、苦痛だったかも知れませんけどね(^^;
選手たちはもちろんですが、σ(^^にとっての「4年間」も終わりました。
また次の4年間が始まる訳ですが、「ケセラセラ」をモットーに「ぐだぐだ」と生きていきます♪
とりあえずは、ようやく訪れる「ソチロス」と戦うことにしますか(^^
ではまた、ごきげんよう!
今回のソチではじめて2本スキーの存在を知り、私も気になっていました。
返信削除Tessier社のScarverというんですね^^ 安定性はよさそうに見えたけど、
レース前半戦で転倒が目についたので、どうなんだろうと感じましたが・・・
やはり構造上による問題点もあったんですね。。
中継の解説ではなかなか他国のチェア事情までは
詳しく話はでませんが、ドイツ製、カナダ製、アメリカ製etc・・・
とかもあるのかなと?お時間ある時でいいので他国のチェアに
ついても投稿して頂けないでしょうか!!
気になっていたので、解説ありがたいことです。重心とエッジの関係は目うろこでした。2本の間隔を開けるともう少し複雑な制御も出来そうな気がします。(ちょっと時間に余裕が出てきました(^^;;;)
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