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2013年12月17日火曜日

下馬評と世界レベルとのギャップ:20131211CopperMt.SL1....

「外の世界」から眺めていると、

どうにも「先入観」というものに囚われがちです。


「前がそうだったから」とか、「その実力なら」などと根拠のない判断を、

往々にしてしまうのが人間というものではないでしょうか。


そして、期待通りの結果が得られた時、プロセスをぶっ飛ばして、

「当然の結果」が得られたと思いがちではないでは?


この日はそのことを思い知らされた日になりました(^^;

そんな思いを含んだレース、リザルト(女子男子)をお手元にどうぞ。


CopperMt.スキー場で開催されている6DaysのNORAMカップ、

Day5はSlalom(回転:SL)の第1戦。


「SLといえば鈴木猛史選手、
 鈴木猛史選手といえばSL」

そうお考えの方も多いのでは?(^^


昨シーズンのワールドカップでも、
 
鈴木選手は7戦中4勝、2位3回という、

圧倒的な結果で種目別タイトルを獲得。


そして、その勢いは種目総合タイトルまで手中に収めるという大活躍でした。

積み重ねられていくワールドカップポイントを眺めていて、σ(^^も狂喜していたものです。


それまでにも、「スーパースラローマー鈴木猛史」の名は定着していましたので、

SLのレースが行われるたびに、リザルトではまず、彼の名を探したものです。


このDay5のリザルトが飛び込んできた時もそうでした。

Sitting(チェアスキー)クラスで一番上に彼の名前を見つけて「当然」と頷いたのですが、

よくよく分析してみると、そんな簡単なレースではなかったことに気がつきます。


鈴木選手だけではなく、ジャパンチームの苦労、

そのあたりを書き進めてみようと思います。


予定されている6レースの5レース目。

オフシーズンのトレーニングで、常人には想像もつかないほどの体力を、

彼らは身につけているはずですが、この連戦はかなり辛いものだったと想像します。


σ(^^;なら、ワックスセットを間違えてとんでもないスキー板を作ったり、

種目を間違えて準備したりしたかも知れません....


しかし、「日の丸」を背負う彼らの気持ちは頑健。

彼らが意気揚々と現れたのは、

スタート標高3,567m、フィニッシュ標高3,424m、標高差は143mの「Copperopolis」コース。


澄み渡った青空に、一段と映える銀世界。

スタート地点、フィニッシュ地点ともに-10.0℃という気温も、

日光と解け合って心地よい寒さとなっています。


「Hard」な雪質も今までと変わらず。

選手たちは、レース前のアドレナリンで高揚しているようです。


1本目のコースセットはアメリカチームのコーチ。

ゲート数48、ターン数47。標高差に対するターン数は32.8%と標準的。


かつて、σ(^^が師事した元ジャパンナショナルチームコーチの伴一彦氏、

その言葉をお借りしてSLという競技を表現するならば、

「SLとそれ以外」に分けることが出来るほど、特殊な競技です。


基本的なスキー操作は共通ですが、

競技への対応という点でいえば明らかに異なる競技。

選手たちの、その対応を見比べることもこの競技の見所のひとつです。


さて、ここで恒例のスタートリストの確認です。

女子選手は7カ国26名、男子は12カ国76名の選手がエントリーしています。


女子Sitting(チェアスキー)クラス

19番 田中佳子選手
20番 青木辰子選手
26番 村岡桃佳選手

男子Standing(立位)クラス

41番 小池岳太選手
45番 東海将彦選手
46番 三澤拓選手
52番 伊藤史雄選手
54番 阿部敏弘選手
55番 山崎福太郎選手

男子Sittingクラス

69番 夏目堅司選手
71番 狩野亮選手
74番 鈴木猛史選手
77番 森井大輝選手
83番 谷口彰選手
88番 横澤高徳選手  と、なっております。


ジャパンチームの中で、まず最初に飛び出すのは田中選手、続いて青木選手。

ふたりとも、盤石のJOINES Kimberly選手と大きく差を付けられてしまった。

女子のしんがり、村岡選手は経験不足の感が否めない。


男子Standing

小池選手は振るわず3秒以上のビハインド。


東海選手も、この種目では復調にはまだ遠い。


SLが最も得意と公言する三澤選手。

最高の結果を手に入れたGiant Slalom(大回転:GS)の勢いをそのまま持ち込みたかったが、

気負いが裏目に出てしまう。残念ながら、コースサイドでレースを終えた。


伊藤選手は転倒。

リスタートするも、その影響は大。


阿部選手は1本目は何かがおかしかった。

フィニッシュするも、順位、タイム以外の何かを気にしている。


山崎選手。

速く丁寧なスキー操作が必要なこの競技で、

その義足はまだ、その動きを表現出来ていない。

10秒近い大差を付けられてしまった。


男子Sittingの一番機、夏目選手。

種目ごとのムラが少ない選手のひとり。ここに来て、安定感が増す。

まずは、納得の滑りを見せたか。


狩野選手は、フィニッシュエリアで少し首をかしげた。

自身の滑りのイメージと、タイムに少し隔たりがあるのか?


それは鈴木選手も感じたギャップかも知れない。

もしくは、2番目にスタートしていたWALKER Tyler選手が速すぎたのか?


ジャパンチームのエース、絶好調の森井選手は攻めた。

鈴木選手の仇討ちなどというものではない。強者に牙を剥くのはファイターの性。

それまでに刻まれたポール際のレコードライン、さらにその内側。


フィニッシュ前。あと2旗門。

スキーの先端。ポールにあたる。

意図しない板の反発。通過したのはゲートの外側。


痛恨のDisqualified(旗門不通過:DQ)。

リーダーズボードには、幻のタイムが表示されていた。


谷口選手。

スムーズに滑り降りてきた。

タイム差ほど滑りに不満を感じていない。


LW10-2の横澤選手。

体幹の残存機能に比べて、細かく正確な動きが要求されるSL。

苦手意識がタイムに出たようだ。大きく遅れてしまった....


さあ、1本目、全ての選手が滑り終えました。

前日にダブルウィンを飾った森井、三澤の両選手が姿を消してしまうという波乱。

他の選手もやや苦戦ぎみでしょうか。


1本目の結果を整理しておきます。

女子Sittingクラス

1本目順位  2本目スタート順  
  5位       6番目     青木辰子選手
  6位       5番目     田中佳子選手
  8位       3番目     村岡桃佳選手


男子Standingクラス

1本目順位  2本目スタート順  
  9位       7番目     小池岳太選手
  10位       6番目     東海将彦選手
  14位       2番目     阿部敏弘選手
  17位       17番目     山崎福太郎選手
  25位       25番目     伊藤史雄選手
  DF                三澤拓選手


男子Sittingクラス

1本目順位  2本目スタート順  
  3位       13番目     鈴木猛史選手
  6位       10番目     狩野亮選手
  7位       9番目     夏目堅司選手
  9位       7番目     谷口彰選手
  18位       18番目     横澤高徳選手
  DQ                森井大輝選手。

2本目は、気持ちを新たにしてスタートして欲しいものです。


さて、お日様は偉大なもので、少しずつ気温が上がってきてますなぁ。

ポカポカ陽気で闘争心が薄れなければいいのですが。

そんなアスリートはσ(^^;だけでしょうかね。


2本目、スタート地点、フィニッシュ地点ともに-7.2℃。

暖かかくなると雪面も緩み始めます。

深いところは固いままでしょうけども、

表面は、わずかずつ、雪が溶けていきます。


微妙なエッジコントロールが勝敗を分けていくことになるのでは?

そんな雪面に、2本目はロシアチームのコーチがセットしました。

51ゲート49ターン。対標高差で34.2%のターン数。

1本目よりターン数が多いということは、少々きつめのセットになりますなぁ。


ここで、各クラス上位の状況を見てみましょう。

女子Sittingクラスは、トップと1位の差がなんと、約7秒。

このクラスは2位争いに注目、5位の青木選手まではそのチャンスがありそうです。


Standingクラスは上位が混戦。

ここにジャパンチームが絡んでいないのが非常に残念(^^;

一方、4位争いは混迷を増しそうです。

小池選手まではチャンスありか。


Sittingクラスはさらに混戦。

5位までが2秒以内。

鈴木選手はコンマ71秒落ちの3位に付けています。

狩野、夏目の両選手も諦めるにはまだ早い。


さあ、いよいよ2本目のスタートです!


まずは村岡選手がスタート。

彼女の課題はポールへの苦手意識の克服か。

最速のラインは、より内側に存在する。


田中選手も同様。

今ひとつタイムを削っていけない。


ベテラン青木選手には、ベストラインが見えている。

しかし、「攻め気」が結果に繋がらない。

このレースの表彰台も、エッジグリップを失ったと同時に届かぬ夢となった。


男子Standing

2番目スタートの阿部選手の姿がない。

やはり、1本目に何かトラブルを抱えてしまったのか。


東海、小池の両選手は共に低迷。

SLでは、悩みが大きそうだ。


山崎選手の義足は、タイトなコースへの対応をまだマスターしていない。

大きくバランスを崩しリスタートしたが、激しく順位を落としてしまうこととなった。


伊藤選手は逆に、1本目のミスを2本目で取り返したかったが、

彼の名前もリーダーズボードには表示されなかった。


男子Sittingクラスは、

7番目スタートの谷口選手が、まずは順当にトップへ出た。


夏目選手がそれに絡むかと思われたが、12旗門目でDQ!

2本スキーで言う「片反」をしてしまう。


上位争いの基準タイムは狩野選手。

2本目、自身最高の滑りを見せ好タイムをマーク。

しかし、1本目のタイムロスが響く。

ひとりふたりとポジションを譲ってしまう。


表彰台圏内から狩野選手を引きずり下ろしたのは、

「逆手」の名手、鈴木選手だった。

狩野選手がその座を奪われたことを確信したのは、

鈴木選手がフィニッシュした時のことではない。


コースのはるか上の方、

「逆手」を自由自在に使いこなす、

独特なシルエットを目にした瞬間だ。


「精密機械」とも言えるその流れるような動作、

この競技がジャッジの採点で争われるもであるならば、

常に史上最高点で勝ち続けているであろう。


しかし、純粋な「速さ」で争われるアルペン競技では、

そのシルエットはあくまでも「結果」。

最も早く滑り降りる選手の姿が最も美しい。


チームメイトとしては見慣れた、ライバルとしては見飽きたその姿は、

狩野選手をもってしても抗う術を与えない。

圧倒的なタイム差でトップに躍り出たスーパースラローマー。


残るはふたり。


コンマ53秒差のCALHOUN Heath選手は沈んだ。


固唾を呑んで見守る観客。

鈴木選手はフィニッシュエリアに残ったままだ。

全ての視線は一点に注がれた。

WALKER Tyler選手のみが、その挑戦権を残す。


....後方、コンマ71秒差には鈴木選手のゴーストがいる。

しかし、そのアドバンテージは、決して小さくない。

焦ることさえしなければ、彼は、この日の栄光に最も近ったはずだ。


深いターンを仕上げる。

後方、ポールが雪面を叩く音が聞こえた。

いや、そんなものは聞こえないはずだ。


迷った。


WALKER Tyler選手の体が大きく宙に浮く。

リカバリー。スキーが再び雪面を捉える。

その瞬間、彼の体を、ゴーストがすり抜けていった....


鈴木猛史選手、逆転優勝おめでとうございました!

彼のこんな冷や冷やもののレースって、久しぶりに見たような気がします(^^;

でも、土壇場の勝負強さは、圧倒的なのでしょうね。

何はともあれ、まずはめでたい!


では、最終のリザルトを確認しておきます。


女子Sittingクラス

 5位 田中佳子選手 
 6位 村岡桃佳選手
 DF 青木辰子選手


男子Standingクラス

 7位 小池岳太選手
 8位 東海将彦選手
17位 伊藤史雄選手
20位 山崎福太郎選手
 DF  三澤拓選手
 DS   阿部敏弘選手


男子Sitingクラス

優勝 鈴木猛史選手
6位 狩野亮選手
8位 谷口彰選手
DQ  森井大輝選手
    夏目堅司選手
DF  横澤高徳選手  と、なりました(^^


こうやって時系列にまとめて見ると、

ジャパンチームは本当に苦労した1戦だったように思えますねぇ。

やはり、SLは特殊な競技ということなのでしょうか。


明日Day6もSLです。

そして、NORAMカップの最終日。

みんな笑顔で帰国出来るよう、健闘を祈ります!!


と、「夢の中」のお話のあとは、現実世界へ(^^

コメントのご紹介コーナー♪
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tohtah様のコメント。

「ラジオの葉書了解です。たびたびすみません。
 えと、すみません、過去ログを若干拝見し、
 遅ればせながら、選手でらっしゃったことに気がつきました。
 道理で迫力のある観戦記なのですね(^^) 

 バンクーバーでチェアスキーのかっこよさにときめいたものの、
 Resultsを見始めたのが2013年1月から(twilogで確認(^^;;;))でしたので、
 山本選手のご活躍を見損ねてしまいました。すみません。

 でもこのブログは、ファンとしてとても勉強になることがたくさんなので嬉しい限りです。
 今後ともよろしくお願いいたします。」


ありがとうございました!

ご丁寧なご挨拶、改めていただきました。恐縮です(^^

ひとつだけ、誤解があるといけないのでお断りをしておきます。
現在は活動を休止中(「引退」とは絶対に口にしません)ですが、
確かに、かつてはレーサーでした。

でも、歯にも端にもかからない、
ジャパンのトレーニングに混ぜてもらう事で満足していていた程度の、
頭でっかちクチだけアスリートでしたσ(^^;

妄想癖だけは「世界レベル」なので、ある程度は「見てきたように」書けています。
お楽しみ頂いていたら、幸いです♪
(それはそうと、ツイッターでご紹介いただいていましたね。ありがとうございます^^)

昨シーズンもジャパンチームが参戦した全てのレースを、
「見てきたように」書いていますので、よろしければご覧下さい(^^


引き続いても、tohtah様のコメントです。


「えと、僭越ながら、いっこだけ気がついたので。
 「チェアスキーは1本もしくは1本のスキーを使用することが出来る。」は、
 「sit-ski can be used in Uni-Ski or Dual-Ski.」なので、
 「1本もしくは2本の」と思います。重箱の隅ですみません。」


ありがとうございました!

おっしゃるとおり、誤記をしておりました(^^;
訂正の上、お詫びいたします。

あの翻訳のあと、なんやかんやでバタバタして、
体裁を整える事もせずに放置....

改めて見直すと、そのお粗末さに少々恥ずかしくなりました。
なんとか出来るかなぁ....(^^;

いずれにせよ、助かりました。
そして、そんなところまでご覧頂いて恐縮です♪
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さあ、チームの帰国が早いか、「観戦記」を書き上げるのが早いか。

第4コーナーでムチが入る!(^^

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