一緒に耐えよう、立ち直ろう!東北! がんばろう!日本!

2013年2月14日木曜日

初タイトルの喜び....

毎度おなじみ「山本新之介のワールドカップをまるで見てきたような観戦記」

お楽しみ頂いていますでしょうか(^^


IPCが発表するレースリザルトの情報だけを頼りに、妄想全開でお送りしております!

ご覧になってお楽しみ頂いているはずだと思うのも、妄想のひとつです(^^;


もしかしたら不評きわまりないかも、

もしかしたら現地の状況は全く違うのかも、

なんていう不安はそっちのけ、マイペースで書き綴っていきますね♪


でもね、今日の記事だけは、σ(^^;の乏しい想像力ではちと頼りない内容です。

長い間、アルペンレースのキャリアを重ねてきましたが、

ひとつだけ経験していないことがあるんです。


それは、「勝った」ということ....


ナショナルチームがいない国内戦で、例えるなら「空き巣」のような優勝経験はありますが、

トップレーサーたちと互角に戦ったということすらないσ(^^;にとって、

「タイトル獲得」というものを想像することは全く出来ません。


ですので、今回の表現はとても陳腐な書き方になってしまうかも、です。

ご了承くださいね(^^


こんな書き方したらネタバレだろうと気にしつつ、

脳内麻薬を垂れ流していきましょう....

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   ⅰ.戦いの前に....

「猛史?今日で決めちゃうんだろ?」

「もう、どきどきしてるっすよ(笑)」

「今回、ぽろっと転けたりしたら面白いんだけど?(笑)」


完全装備で出発しようとしているジャパンチームのひとコマ。

暖かいホテルから一歩踏み出せば、キンと冷えた空気が身を引き締める。


どうにも空模様は怪しい。

「Unstable」という英語の表現はいかにも頼りなさげだが、

それに負けず劣らず「今にも崩れそうな」天気だ。


歴戦の勇者たちは、アルペンは自然との戦いでもあることを十分に承知している。

天候に対して無頓着になっているのではなく、

どんな状況でも実力を出し切れるように、これまで戦ってきた。

今日も、いつもと同じように戦うだけだ。


アウトリガーが雪面に食い込む。

昨夜はしっかりと新雪が積もっていたのだろう。

圧雪されたとはいえ、やはり柔らかい。


鈴木猛史選手は、

いつもと替わらないゆったりとした態度だが、

タイトルへの重圧からか、その目はやや泳ぎ気味か....


一方、森井大輝選手の雰囲気は少し異なる。

SLタイトルの可能性は残されてはいるが、残るレースの全勝が最低条件なのだ。

少しでも可能性が残る限り手を抜くことは絶対にしない男は、

昨日に続いての勝利を貪欲に求めている。


よく見ればメンバーは全て、このレースへかける思いがにじみ出ているようだ。


三澤拓選手はなんとしてでもと表彰台を狙っているはずだし、

小池岳太選手も、もう一段の高みを望んでいる。

夏目堅司選手は昨日の感触を確かなものにし、

明日からのGiant Slalom(大回転:GS)を戦いたいはずだ。


鈴木選手のタイトルへの思いは、

メンバー全員のモチベーションに直結し、

それぞれの思いを昇華させている。


ただ、その輪の中に狩野亮選手の姿はない。

昨日のDid not start(不出走:DNS)は今日まで影響していた....


「1本目から勝負かけろよ」

1本目のコースセッターとして戦場を作り上げ、

そう激励するのはジャパンチーム志渡コーチ


コースセッターの思いやセットの癖など、選手にとっては言わずもがな。

これまで、共に十分なトレーニングを積んできた、絶対の信頼を寄せるコーチである。

林立するポールの光景をひと目見れば十分だ。

そのライン、そのリズム、起伏、斜面変化....


ゲート数40、ターン数39。

数える必要もない。憶える必要もない。

志渡コーチのリズムは体にたたき込んでいる。

インスペクションでは、フィニッシュエリアの歓声すらイメージ出来る....


   ⅱ.スタートハウス....

相変わらず、スタート地点はざわめいている。

レースである。それは当然だろう。

だが、ビブ(ゼッケン)の番号順に並び始めた選手たちは、

その高まりと反比例して無口になる。


女子選手の後、

ビブ番号8のVisual impaired(視覚障害クラス:VI)の選手たちがスタートする。

聴覚だけが頼りのVI戦士たちには、雑音を聞かせることは厳禁だ。

それまでざわめいていたスタートハウスは、水を打ったように静まりかえる。


ビブ16番の小池選手はすでに準備を終えている。

Sittingクラスでは3人目にスタートするのだ。

VIクラスが終わり喧噪が戻って来るなりコースに飛び出す。


三澤選手はビブ21番。

前後にチームメンバーがいないのは集中するにはいいのかも知れない。


Sittingクラスで真っ先にコースへ飛び出すのは鈴木選手だ

小池選手のスタートを見送り、ゆっくりとスキーウェアの袖を抜く。


空模様は相変わらずの顰め面。

手に届きそうなところにはうねりながら流れていく雲の塊。

こいつらはどこへ行くんだろうか....

天を見上げた森井選手の胸には「34」の数字。


昨日ポイントを獲得しランキングを上げた、

夏目選手のスタートは最後尾ではない。

ビブナンバーは40。


   ⅲ.1st. run....

コース上、やはり雪面は柔らかい。

女子を合わせてもまだ20人も滑っていないのに、

すでにゲート脇が掘れているのが上から見てもわかる。


荒れていくのは予想出来たが、意外にDid not finish(途中棄権:DNF)は少ない。

Standingクラスで1名のDNFがあっただけ。


淡々と、まるでベルトコンベアにでも乗せられているかのように、

選手たちはコースに飛び出し、レースは進んでいく。


スタートハウスからレッドビブのチェアスキーヤーが姿を見せる。

今日の観客のほとんどが、SLチャンピオンの誕生を目の当たりにしようと期待しているはずだ。

しかし、そんな事ぐらいではプレッシャーにはならないのだろう。


ビブの色だけでなく、他の選手とは滑りのシルエットが違う。

逆手でポールをなぎ払っていくその姿。

掘れた溝の、更にイン側をえぐり取るライン。

そして、明らかに違うスピード....


まるで、CGで描かれたような完成度の滑りは、見るものを魅了し、

また、他国のコーチたちには羨望と諦観を与えているだろう。


観客たちの興味は、リーダーズボードに表示されたタイムに、

他の選手がどれだけ近づけられるだろうかという事に移っていた。


ビブ31、DNS。

ビブ32、1.39秒遅れ。

ビブ33、1.27秒遅れ....


やはり、鈴木選手のタイムは圧倒的だ。

観客たちはそのタイム差を実感する。

誰も届かないワンサイドレースなのか?


だが、彼らはもうひとりの主役を待ち望んでいた。


昨日の優勝者。

フィニッシュエリアに迫り来るその滑りも、他の滑りとは違う。

やはり、SUZUKI Takeshiを止められるのはこの男か!


その場にいた全ての視線はボードに向かう。

しかし、リーダーは変わらなかった!

0.12秒!おそらく人間が正確に実感出来ない時間差は、

その場にいた全ての人間を黙らせ、ほんの一瞬の静寂は大きなどよめきにに変わる。


その後も次々と、選手たちがフィニッシュライン通過するが、

誰もトップ2の日本人に届くことはなかった....


Standingクラス
三澤拓選手 4位
小池岳太選手 8位

Sittingクラス
鈴木猛史選手 1位(ラップ:トップタイム)
森井大輝選手 2位
夏目堅司選手 DNF
狩野亮選手 DNS


   ⅳ.Interval....

1本目の終了後、三澤選手は静かに興奮していた。


彼のタイムはトップと0.82秒差。

この差は届かないタイム差ではない。

ようやく、求めていたものに手が届きそうなのである。

昨日は森井選手がエランへ恩返しをした。今日は自分が....


もうすでに、2本目のコースは出来上がったようだ。

3番手タイムのNOLTE Thomas選手の表情は明るい。

1本目のジャパン同様、今回はドイツチームのコーチがセッターを務めるのだ。

トップふたりを追い抜くためには願ってもない状況。その差は0.42秒。

インスペクションから彼の闘志は高まっていく。


2本目は15番目タイムの選手からスタート、ラップの選手が最後となる。

全ての選手がフィニッシュするまではそう簡単に勝敗が決まらない。

すでにリーダーズボード正面は、この戦いの終止符を待ちわびる観客で埋め尽くされていた。


   ⅴ.2nd. run....

「拓ぅ、やっちゃえよ!」

スタートハウスに入る直前、チームメイトが声をかける。

三澤選手Standingクラス12番目のスタート。

後に並んでいるのは、いずれもタイトル争いの真っ只中にいる選手たちだ。

おれもいつかは....見てろよ....


コースへ飛び込んだ三澤選手の姿は、スタートハウスから見えなくなっていった。

大会アナウンスではタイムの発表をしているはずだが、違う言葉は全くわからない。


すでに、コース上の主役はSittingクラスへと移っている。


暑い....

耐寒機能がほとんどないアルペンのワンピース。

朝は寒いと感じたが、この暑さはどうだ?

低気圧が近づいているのだろう。暖かいしめった風が会場を包んでいる。


NOLTE Thomas選手が気を発しながらスタートバーをこじ開けていく。

目の前では、「ビブ34」も気を放っている。


もう、自分には気負うものは何もないはずだ。

イージーに仕事をこなすだけ。

ウイニングランでもするような気持ちで降りていけば、それで全てが終わる。

気負うものは何もない....


閉じていた目を開けた瞬間、森井選手が飛び出していった。

上から見下ろしたその走りは、何かが取り憑いたように凄まじい。


その時から、実は、記憶がない。

途中、咆哮を上げながら滑っていたような気がしないでもない。

森井選手の背中を見送り、自分の中で何かが切り替わった。

気がつけば、大歓声の中へ飛び込んでいた。


そして、そこにあるはずの自分の名前をさがす。

「1  MORII Taiki JPN  1:14.44」

やられた....


「2  SUZUKI Takeshi JPN 1:14.72」

その差を確認し、一瞬だけ、敗北の切なさを感じた。

だが、やはりチームメイトの勝利はうれしい。

フィニッシュエリアの中で待っていた森井選手と握手する。

やはり、自分の勝利のように嬉しく感じる。


「猛史、初タイトルだな」

そうだった。だが、まだ何も感じない。

歴史に名前が残った瞬間だが、やはり、まだ何も感じない....


   ⅵ.戦いすんで....

夕方のチームミーティングでは今日のリザルトが配られた。

Men's Slalom

Standingクラス
5位 三澤拓選手
8位 小池岳太選手

Sittingクラス
優勝 森井大輝選手
2位 鈴木猛史選手
DNF 夏目堅司選手
DNS 狩野亮選手


「大輝さんとタケちゃん、今日もこんな差ですか(笑)」

ゲレンデに出ていなかった狩野選手は目を丸くしている。

0.28秒。

その他の選手を大きく引き離したこのふたりだけが、

レースをしていたようなものかも知れない。


「拓は惜しかったよなぁ....」

2本目で大きく遅れた三澤選手。でも、その表情は明るい。


窓の外は、風が唸りを上げているが....

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いやあ、あまりにも嬉しいものですから、がんばって書いちゃいました♪

ダラダラと長すぎて、途中でリタイアしちゃった方、申し訳ありません!(^^;


とにもかくにも、

森井大輝選手、優勝おめでとう!

そして、

鈴木猛史選手、SLチャンピオンおめでとう!


さあ、ポイントランキングを見てみましょう(^^

Men's Slalom PointRankings

Standingクラス
6位 三澤拓選手   176Pts.
7位 小池岳太選手 145Pts.

Sittingクラス
1位 鈴木猛史選手 540Pts.
2位 森井大輝選手 371Pts.
15位 狩野亮選手   66Pts.
21位 夏目堅司選手  29Pts.


もう、鈴木選手のぶっちぎりですね(^^

前半戦の勝ちっ放しが決め手でしたな。


OverAll Rankingsはどうなりましたかな?

Men's OverAll PointRankings

Standingクラス
9位 小池岳太選手 221Pts.
11位 三澤拓選手  208Pts.

Sittingクラス
1位 鈴木猛史選手 582Pts.
2位 森井大輝選手 541Pts.
17位 狩野亮選手  126Pts.
26位 夏目堅司選手  41Pts.


小池選手三澤選手は着実に順位を上げ、

そして鈴木選手森井選手は差が縮まってまいりました!

狩野選手夏目選手には、何としてでも巻き返しを図って欲しい!(^^


明日からはGSの2連戦。

久しぶりのGSレース、楽しんで戦ってくださいね(^^

気がかりなのは天気。悪くならなきゃいいんだけど....

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