「山本新之介の世界選手権をまるで見てきたような観戦記」です(^^
DHレースがスタートして、いよいよ本格的にスケジュールが進んでいきます。
やっぱり、世界選手権ともなれば、主催者側の対応も早いですね(^^
昨夜、夜中にはDHのリザルトがIPCのページにアップされていました。
(Standigクラス リザルト Sittingクラス リザルト
PDF版のリザルトはこちら)
寝る前に見るには、ちょいと刺激が強すぎた....(^^;
DHでは、コースプロファイルやセットの変更はありませんが、おさらいしておきましょう。
スタート標高2,200m、フィニッシュ標高1,700m、標高差500mでコース長2,325m。
コースセッターはスペインチームのコーチで、そのセットはゲート数30、ターン数19。
もうおなじみの数字ですね(^^
この日の天候は「Sunny(快晴)」。
雪質は「Conpact(締まった)」、気温はスタート地点-4℃、フィニッシュ地点-6℃。
コンディションは最高じゃないですか♪
天気もよく、寒くもなく、絶好のスキーびよりかな(^^
では、DHレースのスタート順を確認!
女子選手が10カ国19名。
Visual impaired(視覚障害:VI)クラスの選手ビブ(ゼッケン)ナンバー20から33。
ジャパンのエントリーは無し。
Standing(立位)クラスは34番から49番。
ジャパンチームは小池岳太選手のビブが44番。
Sitting(チェアスキー)クラスが50番から73番。
ジャパンチームは、狩野亮選手63番、森井大輝選手65番、鈴木猛選手74番。
夏目堅司選手はエントリーしていないようです。
以上、17カ国58名のエントリー。
今回は訳あって、途中で何があったかの「想像」を後回しにします(^^;
さっそく、結果をご覧ください。
Men's DownHill
Standingクラス
15位 小池岳太選手
Sittingクラス
14位 狩野亮選手
16位 森井大輝選手
17位 鈴木猛史選手
こんな結果を寝る前に見ちゃったら、すやすやと眠ることは出来ないでしょ?(^^;
なぜこの結果だったか、考えてみる必要があります。
本日だけは「想像」だけでなく、
選手のFacebookやブログから、
情報を仕入れて検証していることをご了承ください(^^;
まずは、リザルトから。
IT1というタイム表記があります。
これは、いわゆる中間タイムのことです。
長いコースを降りてくる訳ですから、
フィニッシュ時のタイムだけでは面白くないだろうということで計測されています(多分)。
IT1までと、フィニッシュタイムから後半区間のタイムも計算してみました。
まずは、IT1の順位とトップとのタイム差を。
Standingクラス
16位 小池岳太選手 7.70秒
Sittingクラス
19位 狩野亮選手 6.40秒
21位 森井大輝選手 8.00秒
22位 鈴木猛史選手 9.55秒
そして、後半区間のタイム差はこうです。
Standingクラス
14位 小池岳太選手 1.84秒
Sittingクラス
1位 狩野亮選手 0.00秒、つまり最速
4位 森井大輝選手 0.35秒
6位 鈴木猛史選手 0.52秒
何でこんなに違いがあるんだ???(^^;
後半は20秒強の区間で、あまり差がつかないとしてもですよ。
狩野選手は、優勝したHANFSTINGL Franz選手よりも、
0.93秒も速くこの区間を降りているんです。
森井選手や鈴木選手も後半は好タイムを出しています。
決して調子が悪いという訳ではないのは確かです。
みんなのFBをのぞき見てみますと、コメントや写真がアップされています。
どうも、前半はひたすら緩斜面。
急斜面は、後半にだけ現れるようですね。
単純に、IT1までが緩斜面だけ、後半は急斜面だけと考えると、
緩斜面のIT1区間はスピードは出ていなかったでしょう。
例えば....
緩斜面区間トップの平均時速が68km/hだったとして、
タイム差から逆算したトップとの距離差はそれぞれ、
Standingクラス
小池岳太選手 -41m
Sittingクラス
狩野亮選手 +161m
森井大輝選手 +190m
鈴木猛史選手 +172m
「-」は、トップ選手よりも先に行っていて、
「+」は、トップ選手よりも遅れているという事です。
ちなみに、「係数」で割り戻した「実測タイム」で、「実際」の距離を計算しています。
(σ(^^;お得意の「おおらかで狂いのない計算」です。あしからず....)
いったい、なぜこんな差が生まれるのでしょうか???
みんなの調子が悪いわけではないのは、後半区間のタイムが証明しています。
IT1までの区間も、「みんな揃って何かやっちゃった」といいうのは考えにくい。
ワックスはどうだ?
ワックスチョイスのチーム方針が大外れして、
どうにも滑らない板が出来上がったか?
でも、ゲレンデスキーヤーの簡易ワックスならともかく、
最近のレースワックスは、どんなにチョイスを間違えても、
大差が付くほど滑らなくなることはありません。
だから、ワックスも考えにくい。
あとは....体重の差。
重力加速度は質量で左右されないのは物理の常識。
スキーヤーの間でまことしやかに言われている、
速度=重さというのも、実は迷信。
引力による加速は、体重の軽重には関係ないのです。
ただ、雪面からの抵抗により慣性力は減少していくので、
同じ雪面抵抗値だとしたら、
慣性重量の小さい体重の軽い選手は、余計に減速することになります。
芝生の上を、ビー玉とボーリング玉を同じスピードで転がしたら、
どちらがより遠くまで転がるかとイメージしてもらえればわかりやすいかな(^^
こう考えると、緩斜面では体重の重い選手が圧倒的に有利なんだとわかります。
ちなみに、ターン中はこれと全く逆の現象が現れます。
Slalom(回転:SL)やGiant Slalom(大回転:GS)のような技術系種目ですと、
深く速くターンをすることが求められますが、
体重が重い選手のスキーには、遠心力で大きな抵抗が生まれます。
雪面抵抗が大きくなれば、板は滑らずスピードは遅くなりますし、
体重が重いと切り返しにも余計な時間が掛かり、
軽い選手よりもラインは大回りになります。
こう考えると極めて単純で重要なことがわかります。
つまり、スピード系レースは体重の重い選手が圧倒的に有利で、
体重の軽い選手は技術系種目に向いているということ。
でもこれは、単純に体重だけの話。
リザルトだけではわかりませんが、
上位の選手がみんなジャパンチームより「重い」ということもないと思うんです。
例えば、5位のDEVLIN-YOUNG Christopher(でぶりん やんぐ くりすとふぁー)選手、
白馬のワールドカップで見かけたのですが、デブでもヤングでもなかったのです(失礼^^;)。
きっと、今も変わらぬスタイルに違いないと思います。
でも、5位に入った。
今回のDHは多分、体重の差だけで勝敗が決まったのではないはずです。
大事なのは、スキー板に直接、雪面抵抗を受けないということ。
抵抗をうけなければ、慣性重量が小さくても重力加速度によってスピードは保証されます。
膝がある選手は、本当に細かなところまで雪面の抵抗を感じて、
しっかりと膝で吸収しなければなりませんし、
チェアスキーであれば、
滑走中の雪面抵抗による振動数に共鳴しないように、
サスセッティングを決めていかなくてはなりません。
それは、ばねの固有振動数であったり、ダンパーの減衰力であったり。
また、フレームそのもののたわみや共振も大問題になる時があります。
さらに、サスが「底付き」する回数が多ければ多いほど、タイムはロスしていきます。
IPCのFacebookに載っている写真を見ていると....
チェアスキーにはオーリンズのダンパーが多いなぁ(^^
もし、もしもの話ですよ?
トリノモデルOEMダンパーのKYB製が、
オーリンズダンパーより性能(雪面追従性)の劣っているモノであったとしたら、
ジャパンチームは戦う前から大きすぎるハンデを背負っていたということになります。
これはあくまで仮定の話で、詳細なデータを元に検証したわけではありませんが、
大いに可能性があることではないかと愚考する次第です(^^
この「仮定」を実証するためにも、
いま企んでいるオーリンズプロジェクトを速く進めなければ♪
もうひとつ。
次回、もしかしたらこの検証の続きが出来るかも知れません。
高速系のSuper-G(スーパー大回転:SG)のレースが行われます。
SGも同じコースを使用するとしたら、前半は同じく緩斜面が主体。
SGはDHよりターンが深く、前半の緩斜面区間は短いので影響は小さくなるとしても、
KYBダンパー使用のレーサーは苦労するのかも知れません。
この「ろぼ理論」、どうですか?あながち間違っていないと思うんだけどなぁ....(^^
(速報:この投稿後、とても嬉しいニュースと、
検証しがいのあるデータが手に入りました!)
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