一緒に耐えよう、立ち直ろう!東北! がんばろう!日本!

2014年3月6日木曜日

緩斜面には緩斜面の戦い方がある:20140226TarvisioSC(SG)....

はい!いつもながら何周か後れが板に付いている山本新之介です!(^^;

ソチパラリンピックのアルペン競技、

DownHill(滑降:DH)のトレーニングランが始まったようですよ!


あるスジからの速報によれば、

少し意外なあの選手がトップタイムを叩きだしたとか(^^

「ソチ」情報は、おいおい正確なものが入ってくるでしょう!


そして、「周回遅れ」のσ(^^;は、

いまだにワールドカップファイナルのお話を書きます。

「ソチ」の競技が本格的に始まるまでの時間つぶしにお付き合いください♪


さて、「ファイナル」という言葉には、

最後の最後の盛り上がりというニュアンスがありますよね。

そして、いよいよシーズンの終わりが迫っている寂しさも同時に感じます。


障害者アルペンスキーワールドカップファイナルTarvisio大会も最終日を迎えました。

夏(冬?)のニュージーランドから始まった「白いサーカス」もこれで閉幕。

シーズンの終わりを感じさせます。


いつもの年なら、翌日から「来シーズン」が始まる訳ですが、今年はパラリンピックイヤー。

ワールドカップですら、前哨戦です。

もしかしたら「調整」の場でしかありません。

そんなこんなで最後の「調整レース」をどのように戦ったか、見ていきましょう!


この最終日はSuperCombi(スーパー複合:SC)レースが開催されました。

SCとは、高速系種目のSuper-G(スーパー大回転:SG)と、

技術系種目のSlalom(回転:SL)を1本ずつ滑り、

その2本の合計タイムで競われます。


かっ飛ぶだけでもダメ、くるくる回るだけでもダメ。

バランス良くスキー技術を身につけていないと勝てない、とても難しい種目です。

「ソチ」を占うには、うってつけのレースではないでしょうか?(^^


で、最近の傾向として多いのが、

SCでの1本目はSGでも成立させちゃおうよ!という運営です。

そもそも1本勝負のSGですから、

SCの1本目でも単独レースとして成立させちゃってもいいんじゃね?と(^^


ということで、この1本目はSGレースとしても行われます。

このあたりも見どころのひとつです!


で、まずはその1本目のSG。

使用されるコースは昨日までのDHレースと同じDi Pramperoコース。

スタート標高1,290m、フィニッシュ標高820m、標高差470m、コース延長1,780m、

平均斜度15%程度という緩斜面主体のコースプロファイルも同じです。


SGがDHと違うのは、ゲートの数。

ルール上、標高差の7%以上のゲートを立てなくてはなりません。

標高差470m×0.07=32.9ですから、33ゲート以上が必要です。


DHでは「as required(必要に応じて)」というルールなので、

SGはDHと比べてターンの数が多く、より高いターン技術を求められることになります。

かっ飛びながらも、速く鋭いターンをしなければならないのがSGの面白さということです。


そのコースセッターはオーストリアチームのコーチ。

このブログではおなじみのGRAHAM Steve氏(AUS)がお勤めでした(^^

ゲート数35ターン数34。

どんな「戦場」になりましたやら♪


天候は「Mostly cloudy(ほとんど曇り)」、

気温がスタート地点で-2℃、フィニッシュ地点は0℃となっています。

そんなに低い気温ではないのですが、雲が多いと何となく肌寒く感じますねぇ。


ところで、英語って面白いものだとつくづく思うんです。

学術的には雲量が8分の6の時に「Mostly cloudy」というそうですが、

その空模様は、日本だと「晴れ」なんですよね。

で、晴れなのか曇りなのかどっちやねんっ!とツッコミたくなります(^^;


....それはさておき。

このレースは女子Sitting(チェアスキー)クラスの村岡桃佳選手と、

男子Standing(立位)クラスの三澤選手もエントリーしています。


村岡選手はDHのエントリーに必要なポイントを持っていないのでこの日のみのエントリー。

技術系に賭ける三澤選手は、「ソチ」本番でもDHは敢えて回避するそうで、

このTarvisio大会でもSCのみのエントリーということらしいですね。

エントリーが増えると、より賑やかなレースになります(^^


では、1本目SGのスタート順を確認しましょう!


女子のエントリーは6カ国12名。

Sittingクラス
ビブ(ゼッケン)4番 村岡桃佳選手。


男子は9カ国36名。

Standingクラス
23番 小池岳太選手
29番 三澤拓選手

Sittingクラス
39番 鈴木猛史選手
41番 狩野亮選手
43番 森井大輝選手
46番 夏目堅司選手

以上の順にコースへ飛び出します!

さあ、「ソチ前」のラストレース、いよいよ始まりますよ!


....時間の経過と共に高まる緊張。

代表入りの決定を受けてからというもの、とにかく落ち着かない。

村岡選手は帰国中、気が狂いそうになっていた。

周囲の期待に耐えられなくなり、

半ば逃げ出すようにイタリアに来た、というのが正直なところ。


レースに集中するだけでいい遠征中は、気も紛れる。

こうしてスタートバーに向き合っている瞬間は幸せだ。

その小さな体をコースへ投げ出す。


しかし、小さな体ゆえの不利な条件が重なり、

必要なスピードに達することはなかった。

自らの技術以外の要素でレースにならないという無念。

アルペンの厳しさを改めて噛みしめてのフィニッシュとなった。


小池選手には、間違いなく疲労が積み重なっていたのであろう。

DHでの滑走は、彼の膝にとって明らかにオーバーワークだった。

膝が限界を超えた時、体ごとコース外へ投げ出された。


三澤選手。

技術系種目、とくにSLに賭ける思いは人一倍強い。

SLで勝負を駆けられるタイム差でSGを終える。

それが彼の、SCでの戦い方だ。


1本スキーのLW2にとっては、

緩斜面のレースは不利な条件が揃っていたが、

まずまずのタイム差でフィニッシュした。

2本目の巻き返しに期待したい。


鈴木選手のタクティクスも同様。

圧倒的に優位を誇るSLで勝負を仕掛けたい。

しかし、DHと同じく、このコースでの高速系は自身には不向きだと見せつけてしまった。

ライバルたちは、SLでも逃げ切る計算を始めているに違いない。


レースが大きく動き始めたきっかけは狩野選手のラン。

先にフィニッシュしたSittingクラスの3人を大きく突き放す1分9秒台を叩き出した。


そのタイムにDUECK Josh選手(CAN)が反応する。

この1本目はSGの単独レースとしてでも成立する。

なんとしてでも狩野選手を止め、「ソチ」へいい流れを繋ぎたい。

その思いは重力とシンクロし、圧倒的なタイム差でトップに躍り出ることに成功した。


森井選手も、鈴木選手と同様に緩斜面レースでは不利な条件を背負っている。

世界に名を轟かせるオールラウンダーでも苦戦を強いられた。

しかし、狩野選手に次ぐ3番手タイムは面目躍如といったところか。


森井選手から遅れること0.09秒で4番手につけたのは夏目選手。

ターン要素の多いSGで、DHより速いタイムを叩き出した事は、

彼の調子の良さを物語っている....


1本目が終了しました!

まずは順位と、トップとのタイム差を整理しましょう(^^


女子Sittingクラス
4位 村岡選手 9.46秒差

男子Standingクラス
5位 三澤選手 5.07秒差
DidNotFinish(途中棄権:DF) 小池岳太選手

男子Sittingクラス
2位 狩野選手 0.85秒差
3位 森井選手 1.93秒差
4位 夏目選手 2.02秒差
7位 鈴木選手 3.28秒差

以上です!


そして、この順位はSGレースとしても確定しています。

つまり、このSGで、日本人が2-3-4フィニッシュという好成績を叩き出したのです!

おめでとうございます!(^^


さて、こういった緩斜面主体の特殊なレースでは、

スキーの滑走技術とは別の大きな要素が勝敗を分けてしまうことがあります。

レースタイムを分析していくと面白いことがわかるのです。


ご本人には恐縮ですが、村岡選手を例にとって見てみましょう。


村岡選手は最終のタイムこそ振るわなかったように見えますが、

IT1以降は2番タイムを出しているんですよ。

ベテランたちに割って入るスピードで駆け下りました。


で、注目なのはIT1までの中間計時です。

どうしちゃったの?と思える6.54秒差でした。

もしかしたら、本当にどこかでミスしちゃったのかも知れませんが、

σ(^^はそうではなかったと見ています。


つまり、何もミスをしていないのに、

大きくタイムロスをしてしまったのではないかと。

その原因は、彼女の小さな体にあります。


緩斜面主体のコースでは、スタート直後も当然のように緩斜面です。

自由落下の競技である以上、質量によって落下スピードが変わる訳ではありませんが、

慣性や、空気や雪面からの抵抗によって、その速度は大きく影響されます。


イメージしてみましょう。

重い大きな鉄球とパチンコ玉。

同じ重力下で、同時に垂直に落としても、理論上は落下スピードは全く同じです。

では、斜面を転がしてみましょう。

実は転がしても、理論上、重いも軽いも同じスピードで落ちていきます。


これは、摩擦抵抗も空気抵抗も「無視」した時の、物理のお話♪

「~らしいです」という程度にしか理解してませんがσ(^^;


「だったら、村岡選手にとっての不利ってなんぞや!」


転がる鉄球とパチンコ玉だとそんなに違いはないでしょう。

転がっているんですから....


でも、スキーは滑っています。

ワックスでビシバシ仕上げた滑走面でも、「摩擦」はあります。

「摩擦」が同じスキー板、重い人と軽い人がそれぞれ履きます。


重い人の方が、摩擦の抵抗が増えますから、

軽い人の方が摩擦の抵抗も少なくて、速く滑れるんじゃね?

そのとおり。


で、空気抵抗。

重い人のガタイは、大抵は「大きい」でしょう。

軽い人は、「小さい」でしょうね。

単純に言えば、ガタイの「大きい」方が空気抵抗は大きそうです。


空気の中を動くわけです。

ということは、「空気を押しのける」ということ。

押しのける空気の量が大きければその分、空気抵抗も大きい。

「気体の流速」による「粘性」というものもありそうです。

これも、「小さい」方が速く滑れそうですよね。


で、ここで重要なのは「慣性」の法則です。

「エネルギー保存」の法則です。


100kgの体重の人が真っ直ぐ滑る降りた時と、

50kgの体重の人が真っ直ぐ滑る降りた時を比べます。


100kgの物体を動かすエネルギーは、

50kgの物体を動かすエネルギーよりも大きい。

つまり、「エネルギー保存」の法則により、

100kgの物体を動かす「大きな」エネルギーが「保存」されます。


空気抵抗や摩擦抵抗に違いがあったとしても、

そもそものエネルギーの大きさが違うわけですから、

大きなエネルギーを持っている方が、その力、スピードを維持します。


つまり、体の大きな選手の方が、そのエネルギーを維持出来るというわけです。

そしてそれは、空気抵抗や摩擦抵抗に差があったとしても、

それらの抵抗の影響を上回る程のスピードを得られるということ。


こう考えると、村岡選手は、

体の大きな選手に比べトップスピードに達するまでに時間がかかりすぎるために、

何もミスをしていないにもかかわらず、

IT1までに致命的なタイムロスをしてしまうという案配なのです。


このσ(^^の理解は間違っていないと思うのですが、

もし、ご指摘があればご教示ください。


ちなみに、体格の違いによる影響の差は他にもあります。

村岡選手にとってはいい影響なのですが。


まずひとつは雪面ギャップからの「突き上げ」。

ボコボコしている雪面を滑ると、下からの衝撃を受ける感覚のことです。

これがひどいと、「暴れるスキー板」を押さえ込まなけりゃいけないと考えてしまいます。


「突き上げ」という現象は、実際には下から力を受けるのではなくて、

ボコボコを乗り越える際に、

ばねから上の物体(「ばね上」という表現をします)が沈み込む事を指します。


ライダーの感覚とすれば、「ばね上」が沈むとは感じられず、

「ばね下」が自分に向かって「突き上げてくる」ような感じるために、

「突き上げ」という言葉を使うことが多いのです。


で、本当は「ばね上」が沈む現象のはずなんですが、

「ばね下」の「突き上げ」と感じてしまうために、

間違ったセッティングを施してしまうことが多くあるので、

チェアスキーヤーの方はどうぞご注意を♪


さて、ここで村岡選手にとっていい影響というのはですね、

体が軽いということは当然、「ばね上」が軽いということです。

つまり、ばねやダンパーに負荷がかからず、それらに余計な仕事をさせなくてもいいわけで、

その分、サスセッティングもしやすくなるということです。


このあたりの理屈や技術を身につければ、

村岡選手にとっては素晴らしいアドバンテージを持つことになるでしょう。


と、有利な点を書いてみましたが、これらはレーシングスピードを出せている状況でのこと。

加速していく間の「慣性」は、技術やセッティングではどうしようもありません。

村岡選手にとってのこのTarvisioのコースは、

どうにもならない特殊な状況であった、という事でしかないんですよねぇ。


じゃあどうするの?

これから緩斜面のレースは諦めなきゃならないの?

んなこたありません(^^

方法はあるんです。


体重を増やせばいいんです。

そうすれば、緩斜面での加速局面での不利は少なくなります。

でも、ただ太れというのは芸がありません。

女の子ですしね(^^;


4年後の「平昌」に向けてσ(^^が大きなお世話で身勝手な提案を許されるならば、

「筋肉で5kg増量する」ということを言いたい♪

筋肉で5kg増というのはかなり苦しいトレーニングをすることになりますが、

そんな肉体改造に成功すれば、高速系はもちろん技術系でも大きな武器になるはずです。


もうひとつ。

これはジャパンSittingチームの考えに反するかも知れませんが、

チェアスキーそのものの重量増を提案したい。


とにかく軽量化を!というチームの開発方針と全く逆の方向性ですが、

重くすることで高速系の加速局面での不利を少なくする狙いがあります。

でも、ただ重くするだけではチェアスキーの運動性能を殺してしまうので頂けません。


ではどうするのか?


村岡選手の切り返しの軸、その重心弧の中心部分を重くしてしまうのです。

その位置は少々重くなってしまっても、ターンの切り返しの際に影響は出ません。


その部分だけを重くするだけでは能がありませんので、

中心部分から遠いところは徹底的に軽くして、近い部分を必要な分だけ重くする。

「マスの集中化」ってやつですね。


こうすれば、単体の重量は重くできますが、

運動性能は犠牲にならないという夢のようなチェアスキーが出来上がります。

そんなチェアスキーを作ってみてえなぁ....(^^


おっと、そんな与太話を書いているせいで字数が多くなってしまったぞ....

2本目のSLは次回としまして、今宵はここまでにしとうございます♪

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