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2014年1月17日金曜日

勝つことと負けないこと:20140113PanoramaGS....

勝負に「絶対」というものはありません。

「勝ちに不思議な勝ち有り」という野村克也さんの言葉どおり、

「なんで勝っちゃったんだろうね?」という結果が往々にしてあります。


一方、この言葉にはこうも続きます。

「負けに不思議な負け無し」

負けたという結果には、どうして負けたかという明確な原因が存在します。


要は、勝負事というのはどんなものにせよ、

「負けない工夫」を確実に積み上げていくということに他なりません。

勝ち負けというのは、実のところ、その工夫の積み上げ、

つまりミスの数が少ない方が「結果として勝っている」に過ぎない訳です。

それがハイレベルな戦いであればあるほどに、です。


高い勝率を誇る選手がなぜ「勝っている」のか?

そういったところも勝負の見どころと言えるでしょう。

....なんだかよく解らない前置きですが(^^


障害者アルペンスキーワールドカップパノラマ大会5日目、

GiantSlalom(大回転:GS)が開催されました。

リザルトはこちらにて→(女子男子


本格的なレースシーズンを迎えた初戦Panarama大会も無事スケジュールは進行し、

残すところは本日のGSと明日のSuper-G(スーパー大回転:SG)を残すのみです。


GSという競技は、最もオーソドックスで、もっとも技術の差が出るといわれている種目です。

そして、おそらくは世界中で一番トレーニングされている種目でしょう。


日本障害者アルペンスキーナショナルチームでも同様、

GSのトレーニングが重点的に行われております。

チームをよく知る方にとっては、一番「安心」して見ることが出来る種目でしょうね(^^


では、現地のコース状況を見てまいりましょう!

スタート標高1,558m、フィニッシュ標高1,236m、標高差322mのレースバーンに、

コースセッターは我らがジャパンチームのコーチ、切久保豊様!

慣れ親しんだセットのクセは、ジャパンチームにとって、これ以上ない心強さを感じることでしょう。


ゲート数は41、ターン数が38。標高差に対するターン数は8.4%。

ルール上は11%~15%となっていますから、かなりのハイスピードコースとなっています。


それもそのはず、気になるのが天候。

「MostlyCloudy(ほとんど雲)」という空模様に、+3℃というスタート地点の暖かさ。

「Packed(圧雪)」された雪面とはいえ、すぐにボッコボコに荒れてくるでしょうね。


荒れてくる雪面を見越して、2ゲート1ターン、いわゆる「ツーゲート」も3カ所に立てられました。

出来る限りターンの数を少なくして、雪面の荒れを押さえていこうという目論見でしょう。


そして、選手たちにとってはごまかしの効かないコース設定であり、

ワンミスが「命取り」になりかねません。

いかにミスを最小限に抑えるか、速く滑る技術以上に、繊細さを競う一日となりそうです。


では、ジャパンチームのスタート順を確認いたします!


女子選手は11カ国25名。

Sitting(チェアスキー)クラス

25番 村岡桃佳選手


男子選手は17カ国65名。

Standing(立位)クラス

40番 小池岳太選手
51番 三澤拓選手
61番 山崎福太郎選手

Sittingクラス

69番 森井大輝選手
71番 夏目堅司選手
74番 鈴木猛史選手
76番 狩野亮選手
84番 谷口彰選手

以上の布陣です。


これがワールドカップデビューとなる村岡、山崎の両選手は、

ソチパラリンピック日本代表選手として、先日に追加発表された新進気鋭の若者たちです。

「ソチ」はゴールではなく単なる通過点。

長いキャリアの第一歩は、どのような足跡となるのか非常に楽しみです(^^


おっと、いよいよ1本目がスタートとなるようですよ!


....世界中で最も競技人口の多いGS。

心地よい喧騒に包まれたスタートハウス付近。


初ワールドカップとなる村岡選手の表情はやや硬い。

年齢にふさわしくないといってもいい実力の持ち主だが、

「シンデレラガール」としてのプレッシャーにはまだ馴染めていない。

しかし、ポイント順で定められた最後尾スタートが彼女の「定位置」ではない事も感じていた。


女子Sittingクラスで1番最初にスタートした、

SCHAFFELHUBER Anna選手(GER)のタイムは誰にも塗り替えられていなかった。


村岡選手がスタートした瞬間も、「女王」の名はリーダーズボードのトップにあった。

その「壁」の高さ、彼女の目にはどう映ったのか。

そして、最後尾スタートから躍り出たタイムを見たライバルたちは、新しい時代を予感した。


「桃佳、3番手タイムだってよ!」

ジャパンチームにとって、妹的存在である彼女の活躍は、これ以上ない朗報であった。


三澤選手にとって、この「追い風」を生かしたいところだったが、イメージと滑りが噛み合わない。

リーダーズボードを見上げることなく、彼はフィニッシュエリアを後にした。


好タイムと自滅、強豪たちの明暗をスタートハウスで耳にした小池選手。

少し遅めのスタートとなった今回、その分だけ冷静に状況を把握していた。

次々と上がってくるコース状況の報告で、成すべき事を正確に理解する。

攻めることのリスクに対して体が反応。

2本目に繋がる順位とタイムで滑り降りた。


「自分はその器なのか?」

山崎選手には、激しい葛藤があった。

その実力と将来性を買われ、晴れて代表入りした彼だが、

キャリア不足から来る不安は隠せなかった。

完走中、最後尾タイムで1本目を終える。


久しぶりにジャパンSittingチームの1番機となる森井選手。

このPanirama大会では、チーム唯一といっていい安定感を誇る。

クラス7番目スタートから、一気に一番上へ躍り出た。


夏目選手がスタートしたのは、そのタイムを耳にした直後だった。

「まず大輝に追いつく」

そのための努力は惜しんでいない。

まだ時間はかかるかも知れないが、このままでは終わらない。

いつかは。


リーダーズボードを見上げる夏目選手。

森井選手の名前が一段下がっていることに気がつく。

0.01秒差。

世界にはまだまだ上がある。


鈴木選手はGSの技術も磨きがかかり始めている。

マシンコントロールにおいて、彼ほどの能力のある選手はそうはいない。

GSで開花する時、どこまで高みを望むことになるのか。

1本目は6番手ながら0.31秒差で食らいつく。


「まだそんなに焦る時期じゃない」

Panorama入りしてから、満足出来る成績を残せていない狩野選手は、

コースサイドで自分自身にそう言い聞かせた。

それは、決して負け惜しみではない。


狩野選手以降、コースアウトする選手が続出。

何が何でも復調したい谷口選手にとって、非常に厳しいコース状況となっていた。

どのような雪面であっても滑りきる自信はある。

しかし、「攻める」状況にないこともよく解っていた。

ここにも長く暗いトンネルの出口はなかった....


1本目の結果を見てますと、SittingクラスのDFが多くなっていますねぇ。

これは、雪面状況が激しく悪いことを意味しています。

せっかくのGSなのに、これでは楽しめませんなぁ(^^;


しかしながら、2本目を大いに期待出来る選手たちがいるのも確か。

楽しみにしましょう!


では、1本目順位のおさらいです。

女子Sittingクラス

3位 村岡選手 4.32秒差

男子Standingクラス

 6位 小池選手 1.75秒差
15位 三澤選手  ?秒差

Sittingクラス

 2位 森井選手 0.01秒差
 6位 鈴木選手 0.31秒差
11位 夏目選手 3.65秒差
18位 谷口選手 7.08秒差
DidNotFinish(途中棄権:DF) 狩野選手


2本目の結果はいかに?(^^


ゲートのセット替えがいつの間にやら終わっていました。

大会関係者のお仕事の早いこと♪


コースセッターはWOLF Justus氏。どこかの国のコーチのはずです。

リザルトに書いてないので解りません(^^;


ゲート数39、ターン数42。

....昨日のSuperCombi(スーパー複合:SC)2本目同様、

「不思議セッティング」が施されたようです(^^;

そんなセットはあり得ないので、「ゲート数42、ターン数39」として話を進めます♪


天候も....

「NONE(なし)」???

「なし」ってなんだよ?

きっと同じような曇天なんでしょうね。


なんだかミスライティングの多い大会ですなぁ(^^;

ついでに指摘しておくと、女子のリザルト。

JOINES Kimberly選手(CAN)の2本目ですが、

IT1までが1分7秒29で、フィニッシュタイムが1分9秒36。


他の選手たちがIT1以降を30秒以上かけて滑り降りているのに、

JOINES選手は2秒強で駆け抜けた!

....もう、なんかグダグダですな(^^;


リザルトを作成するソフトに入力する際、

分と秒での入力でなく秒単位のみで、

しかもテンキーでの手入力が行われたとするならば謎が解けます。


「37.29(37秒29)」と打ち込むところ、

「3」を「6」と一段間違えて「67.29(67秒29)」と打ち込んだのではなかろうか?

そんな原始的な事務処理をされているのかどうか解りませんが、

そうだとするならさもありなん(^^;

てことで、JOINES選手のIT1タイムは「37秒29」として話を進めます♪
                              シカシドウナッテルンダオイ....


以上のことを考慮し整理した、2本目スタート順はこうです!

女子Sittingクラス

6番目 村岡選手


男子Standingクラス

 1番目 三澤拓選手
10番目 小池岳太選手

男子Sittingクラス

 2番目 夏目選手
10番目 鈴木猛史選手
14番目 森井大輝選手
18番目 谷口彰選手

です(^^


ところで、三澤選手の1本目は、分析の結果、15位か16位でした。

上位15名の順番を逆転させるのが2本目のスタート順ですから、

15位と16位では大きく意味合いが異なります。

どちらかはっきりと解りませんので、1本目15位として話を進めますね♪


さて、この2本目は見どころが多いですよ。

村岡選手はデビューレースで初ポディウムなるか?

小池選手のジャンプアップは?

0.01秒の攻防をどうする森井選手?

割って入るか鈴木選手?

ワクワクドキドキの2本目、いよいよスタートです!


....「女王」に牙を剥くのは、まだ先の話でいい。

村岡選手にとって、今しなければならない事はひとつしかない。

まだ他人と勝負の時ではなく、「自分自身」をどう表現するか。

割って入られたベテランたちには申し訳ないが、敵はあなたたちではない。


5番目スタートの選手がコース脇へ消えていくのが見えた。

そこに何かあるのか?

一瞬、悪い想像が頭をもたげたが、すぐに切り替える。


まずは、「自分自身」。


スタートバーをこじ開けた時には、感情すらなかった。

2本目も同じようなハイスピードコース。

同じように滑れている。


2本目は「観客」となった狩野選手、コース脇からその姿を見ていた。

小さく頷いた理由は、彼女の滑りの質が良かったからだ。

その姿を見送ると同時に、JOINES選手のスタートを知る。


狩野選手の目の前、JOINES選手のスキーは完全に横を向いてしまう。

「桃佳と何秒差だったか?」

慌てて記憶を辿る。確か1秒強の差があったはずだ。

このミスは2秒どころではないロスのはず。

歴戦の彼にとって、どんなミスがどの程度のタイムロスになるのかよく知っていた。


しかしその直後、その計算を打ち消すような光景を目の当たりにすることになる。

ミスリカバリー後のJOINES選手は、攻めた。

もう間に合わないかも知れないという後悔が、彼女自身にムチを入れ始めたのだ。


狩野選手の視界からJOINES選手がいなくなった数秒後、

リーダーズボード上位ふたり、

全くの同タイムだったいうアナウンスの絶叫が、

会場中全ての観客の耳に飛び込んだ。


しかし、その絶叫は、三澤選手の耳には入らなかった。

いや、極限まで集中していた彼は、外部の雑音を認識していなかった。

数cm、いや、数mmの誤差も自分自身に許さない。


怒り。

そんな感情に近い高ぶりをスタートバーに叩き付ける。


まるで綱渡りだ。

狩野選手は、その滑りをそう見てとった。

まるで紙一枚も入らないと思えるほど、ゲートポールとスキー板の距離は近い。

最後まで、通せるか。

しかし、その思いは露と消えた。


小池選手がもうひとつ高いところに行くには、何が足りないんだろう?

実力はある。

真面目な性格の彼は、レースに手を抜くことなど一切ない。

彼の限界はまだまだ遠いところにあるはずだ。

狩野選手は、自分自身と狩野選手を重ねていた。

まだまだ先に行ける。

その思いは、ふたりとも確かに持っている。


極めて特殊な滑りをしなければならない山崎選手。

片足義足、片手不全。

どこをどうすればいいか、明確にアドバイス出来る立場の人間は、チームにはいない。

彼自身が死にものぐるいで答えを探し、見つけ、自分の糧にしなければならない。

チームメイトの目の前を滑り降りる彼には、まだまだ多くの課題があるのだ。


Sittingクラスのスタート前、コース整備の静かな時間、

狩野選手は多くの思いを巡らせていた。

チームメイトのこと。

特に、ここまで駆け上がってきた若者たち。

自分自身のこと。


今から始まるSittingクラスのレースに自分がいないことへの歯がゆさ。

単なる「観客」であることは耐え難い。

しかし、現実だ。

複雑に入り乱れる彼の思いをよそに、競技は再開される。


まだ発展途上にある夏目選手も、

滑りながら自身への歯がゆさを募らせているひとりだろう。

努力が報われるにはまでには、もう少しの時間が掛かりそうだ。


次々と駆け抜けていくライバルたち。

目を見張ったのは、鈴木選手のコース後半。

それまでの誰よりも明らかに違う滑り。


速い。

これは、表彰台か?

しかしその直後の、RABL Roman選手(AUT)のスピードにも目を見張る。

鈴木選手との差、0.06秒を0.15秒に広げたと、

時計と同じぐらい無情なアナウンスが流れた。


あと4人。

そのいずれもが、自らの滑りの出来に勝敗を左右される。


CALHOUN Heath選手(USA)コースアウト。

KREITER Georg選手(GER)の滑りも何かおかしい。


森井選手。

0.01秒差。

前半はかなりいい。


一瞬、目が合う。

これ以上は攻められない、そう言い残して駆け抜けた気がした。


その数秒後、勝敗は決する。

アナウンスが、0.08秒差で森井選手のトップ浮上を伝えるのと同時に、

狩野選手は斜面を見上げて思わず声を上げた。


WALKER Tyler選手(USA)が、

スキー板をドリフトさせながら、ゲートから大きく離れる。

コンマ数秒....

このミスによる影響、狩野選手には正確に理解出来た。


集中力を切らしたWALKER選手は、

その後、急速にスピードをドロップしていった。


フィニッシュエリアは熱狂に包まれていた。

その中心には、コンマ1秒もない時間の中での勝利を、

確実にもぎ取った森井選手が歓喜の雄叫びを上げている。


その光景を見ながらフィニッシュを切った谷口選手には、

それは、とても遠い世界に感じられた....


森井選手、優勝おめでとうございます!(^^

リザルトを分析していくとよく解るのが、

「負けに不思議な負け無し」という言葉の意味でした。


コース状況の悪い中で、

2本通じてしっかりと滑りをまとめ上げた森井選手に軍配が上がり、

森井選手を逃がしてしまったライバルたちは全て、

2本目のいずれかの区間でコンマ5秒以上のタイムロスをしてしまったのです。


また、村岡選手は初ワールドカップ初表彰台!

こちらもおめでとうございますです(^^

同タイム2位ですが、ミスを少なくまとめた滑りという意味では、

より重い意味を持つ結果でした。


これで、「女王」への挑戦権を確実にものにしたはずで、

これからは、「世界」は村岡選手を無視出来なくなるはずです(^^


では、このレースの最終結果です!

女子Sittingクラス

2位 村岡選手

男子Standingクラス

 7位 小池選手
22位 山崎選手
DF  三澤選手

男子Sittingクラス

優勝 森井選手
 4位 鈴木選手
11位 夏目選手
16位 谷口選手
DF  狩野選手

以上です!


明日は、いよいよPanarama大会最終日。

高速系のSGレースで幕を閉じます。

ジャパンチームの怒濤の活躍にどうぞご期待ください(^^


お断り:

この「見てきたような観戦記」は、

リザルトに記載のあること、またはそこから読み取れること以外は全て「妄想」です。

はっきり言ってしまえば「フィクション」です。真っ赤な「ウソ」です(^^;


2本目は「狩野's Eye」的な書き方をしましたが、

狩野選手が2本目の間、どこにいたのかなんてさっぱり全く解りませんし、

狩野選手の思いを代弁したものではありません。

このあたりをご承知の上、ご覧頂ければ幸いです(^^

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