一緒に耐えよう、立ち直ろう!東北! がんばろう!日本!

2014年1月31日金曜日

ふたりの関係:20140126HakubaSL....

暖けぇ(^^;宿の窓を開けた時に、まず感じた事です。

「ジャパンパラ冬季競技大会アルペンスキー競技(通称:ジャパラ)」のDay2は26日。


未明に白馬村上空を寒冷前線が通過しました。

通過前、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みます。

そのために、早朝はとても生暖かかったと(^^;


標高703mの気象台白馬観測所では、0600時に記録した気温がプラス1.4℃。

降雪こそ記録されていないのですが、山に上がれば....というところですか。

「観戦」するのでも気が滅入るのに、実際に「参戦」する選手たちの思い如何?


でも、顔を上げて出発することは大事ですな。

だって、駐車場では「どんより」とした表情の選手、スタッフはいないんですもの。

まずは元気いっぱいの挨拶で一日を始めましょう!(^^


この日はSlalom(回転:SL)レース。   リザルト:IPCフォーマット(男子のみ
                               国内格式(女子男子

前日のGiantSlalom(大回転:GS)で使用したコースの後半部分がその戦場です。

「馬止めジャンプ」を少し下に見下ろす急斜面にスタート台が用意されました。


その標高1,076m

気温はかろうじて氷点下になるかならないかという0℃付近。

ここから標高で126m降りた、950mのところにフィニッシュエリアが用意されています。


おや?前日のGSよりフィニッシュ標高が高いぞ?

同じコースを使用するレースなのに、フィニッシュエリアを上げた???

んー、昨期のSLレースのリザルトと比べても、

スタート、フィニッシュともに高くなっていますねぇ....


てことは、スタートを上げて急斜面区間の距離を増やしたって事ですね。

これも、「ソチ」対策のひとつかな?(^^


フィニッシュエリアの気温は2℃。

低い位置には暖かい空気が溜まっているようです。


ぽとぽとと降り積もった雪がコース全体を覆い、

誰がどのようにみても「Soft」な雪面状況。

なかなか楽しいSLレースになりそうです(^^;


コースセッターはジャパンチームの切久保コーチ。

ゲート数48、ターン数46。標高差に対するターン数が36.5%。

ルール上のターン数上限は、対標高差の35%+3、

つまりこのコースだと47ターンが最大です。

目一杯、ゲートを立てて、ぐりぐりターンしていけということですか(^^;タイヘンダゾコリャ....


そんなコースをこんな悪天候で戦う選手たち、

そのスタートリストが発表されております!


女子Sitting(チェアスキー)クラス

2番 田中佳子選手
3番 村岡桃佳選手
4番 大日方邦子選手
5番 原田紀香選手

男子Standing(立位)クラス

11番 東海将彦選手
12番 三澤拓選手
13番 伊藤史雄選手
14番 阿部敏弘選手
15番 山崎福太郎選手
16番 春日寛人選手

男子Sittingクラス

17番 森井大輝選手
18番 鈴木猛史選手
19番 夏目堅司選手
21番 谷口彰選手
23番 横澤高徳選手
24番 山本光文選手
25番 今野英樹選手   以上です!(^^


田中選手、東海選手はSLのみのジャパラ参戦。

また、横澤選手はエントリーしていましたが、

前日のGSで受けたトラブルによりDidNotStart(不出走:DS)となっています。

ご了承ください(^^


現在の大会時刻は0910時。

前走3名のスタートの後、いよいよ競技開始となります!


....アメリカで活動拠点を確保している田中選手は、

ある意味、「アウェイ」のジャパラと言えるかも知れない。

意図を秘めたSLのみのエントリーで、

これまでに積み上げてきたことを確認したい。


前日のGS覇者、村岡選手にとって、SLはまだまだ発展途上。

細かいターンが苦手なのか、

ポールコンタクトに不慣れなのか、

SL独特のリズム変化に戸惑うのか。

いずれにせよ、この種目では、まだまだチャレンジャーだ。


SLは経験。

大日方選手の滑りを見ているとよくわかる。

現役を離れたとはいえ、ゲート際の対応にはそつがない。

圧巻のタイム差で1本目を終えた。


復活、などという簡単な言葉で「師匠」を表現したくないのは三澤選手。

東海選手の滑る背中を見て目頭が潤む。

一緒にパラの表彰台に乗る。その夢も再び見られそうだ。


その夢のためには、高い次元で東海選手と並ばなければならない。

LW2のSL、「係数」は「1.0000」であり恩恵は全くないが、

しかし、その厳しさも「師匠」の背中を追う喜びには、ハンデとはならない。

手の届く位置でフィニッシュを決めた。


伊藤選手は早々にコースアウトを喫する。

このレースでの「宿命の対決」は、山崎選手のスタートを待つまでに終わった。


阿部選手も、係数の「恩恵」がほぼ受けられない選手のひとり。

完璧なランを披露した東海選手から、やや離されてしまう。


係数で言えば、その違いは約3.6%。

東海選手よりその分だけ、実測タイムで上回らなければならないのは山崎選手。

障害の軽度において有利なはずだが、その距離、そしてその「夢」も果てしない。


森井、鈴木両選手の戦いはここでも激しい火花を散らした。

「どんな雪面でもイン側を攻められる」

そう豪語する「新兵器」の威力をまざまざと見せつけた森井選手。


SLで負ける訳にはいかない。

鈴木選手は、前日のGS1本目を立場を変えて再現した。

0.18秒差。

その差はあって無いようなものだ。


ヤツらが速すぎるんだよ。

夏目選手はリーダーズボードを見上げて呟く。

彼は自身の滑りが悪くなかったと分析している。

しかし、タイム差は大きなものになってしまった。


谷口選手の快走は続く。

これまで巨大なビハインドを背負わされていたのが嘘のようだ。

鈴木選手から遅れること2.89秒。

2本目に賭ける。


現役当時、SLでは「速いヤツら」と渡り合ったこともしばしば。

山本選手はこの種目に苦手意識はない。

しかし、ブランクには勝てなかった....


いよいよ、タレントが揃い始めましたねぇ(^^

まずは、1本目の順位を整理します。


女子Sittingクラス

1位 大日方選手 0.00秒差
2位 田中選手  3.00秒差
3位 村岡選手  8.87秒差
4位 原田選手  69.14秒差

男子Standingクラス

1位 東海選手 0.00秒差
2位 三澤選手 0.41秒差
3位 阿部選手 3.80秒差
4位 山崎選手 9.86秒差
 DF 伊藤選手
 DisQualified(旗門不通過:DQ)春日選手

男子Sittingクラス

2位 森井選手 0.18秒差
1位 鈴木選手 0.00秒差
5位 夏目選手 4.79秒差
3位 谷口選手 2.89秒差
6位 山本選手 5.22秒差
7位 今野選手 29.25秒差
 DS 横澤選手

以上のようになっています。


足に負担の少ない雪と緩斜面だったとはいえ、

東海選手はかつてのスピードを取り戻したようですね(^^

また、その背中を追うだけだった三澤選手は、成長ぶりを見せつけて恩返し。

このふたりの関係は目が離せません♪


目が離せないと言えば、森井、鈴木の両選手。

GSで渡り合おうとする鈴木選手に、

SL王者を引きずり下ろしにかかる森井選手。

このレースでの結末やいかに?(^^


2本目の準備が着々と進んでいます。

そのコースは、韓国チームのコーチがセッティング。

ゲート数50、ターン数47、対標高差が37.3%。

いよいよ、ルール上の最大ターン数が用意されました(^^;


相変わらず雪は降り続いています。

少し寒くなってきたかな?とも感じるのですが、

0℃という「暖かさ」は変わりません。


当然のように雪面は「Soft」

いや、新雪が降り積もった分だけ、より「Soft」になっていることでしょう。

つまりは....ボッコボコに荒れる!(^^


σ(^^の経験上、柔らかい雪面の上に新雪が降り続くレースバーンだと、

ものの10人も滑りゃ、ゲート際はかなり掘れていきます。

特にSLのような細かく鋭いターンが求められるようなレースだとなおさらです。


「エッジで切る」というような滑りではなく、

雪の壁に「スキーを当てて曲がる」という感覚ですので、

雪面はどんどんと掘り進められ、ライン外側には雪だまりが高く積み上げられ、

ゲート際には「クレーター」のような窪みが成長していきます。


スキーを切り返してターンに入るのですが、

いったん「クレーター」の中に落ち込み、

遠心力で最大荷重がかかり、

そして「クレーター」から出る時は、「登り」のような雪面からの衝撃を受けます。


この時、チェアスキーのサスペンションは底付きをしてしまっていて、

ばねはその力を最大にまで溜めています。


「クレーター」から出る瞬間、

押さえつけられていたサスペンションが一気に解放され、

んぴょーん!

と宙を舞う事もしばしば(^^;


そんなコースでのレースは、σ(^^;のようなヘタッピだと、

「大ロデオ大会」になってしまうわけです。


まあ、トップ選手ともなれば、

「え?なに?荒れてるの?ここ?www」

といった感じで滑っていく訳ですけどね♪


さて、閑話休題。

2本目のスタート順を確認です!

女子Sitting(チェアスキー)クラス

1番 原田選手
2番 村岡選手
3番 田中選手
4番 大日方選手

男子Standing(立位)クラス

1番 山崎選手
2番 阿部選手
3番 三澤選手
4番 東海選手

男子Sittingクラス

1番 今野選手
2番 山本選手
3番 夏目選手
5番 谷口選手
6番 森井選手
7番 鈴木選手  以上の順番です!


では、雪が降り止まない中の2本目、どうぞご覧ください(^^


....なるほど、教えられたことがよくわかる。

村岡選手は、悪天候の中でも冷静に自分の滑りを確認していた。


柔らかい雪ほど、優しく丁寧に。

悪い環境ほど、基本に忠実に。


SLをなんとか攻略しようと頑張った1本目。

それは雪面に対してオーバーアクションだったことがよく理解出来た。


曲げようとしても曲がらない。

走らそうとしても走らない。


それは、スキーが方向を変えていこうとする時の「足場」を、

「余分な動作」で崩してしまっていたからだ。

状況が悪化するコンディションの中、新たな発見をタイムに結びつけた。


田中選手は、悪い状況での応用も出来る。

タイムロスを最小限に抑えられるのは、経験値の高さがなせる技だろう。


しかし、キャリアでいえば、やはり大日方選手には及ばない。

この難しい局面では、まだまだ彼女を脅かす存在は現れない。

彼女が滑り降りた時、圧勝が決まった。


もう、義足があっちこっちと「よそ見」しちゃって。

山崎選手にはスキー技術以外のところで悩まされている。

義足が外足になるターンは、雪に取られてしっかり板に乗れない。

逆に内足になる場合では、健脚側のターン弧を邪魔してしまう。


皮膚に張り付かせることで吸着固定させる義足の構造上、

外部からの入力に対して人間のコントロールが正確に届かない。

これはどうしても避けられない深刻な影響だ。

どうせ悩むなら、スキー理論で悩みたいと歯がゆさを感じている。


その対極にいるのは、障害の影響が少ない阿部選手。

純粋にスキー技術のみでの勝負となる。

そして、コースコンディションが悪くなればそれは彼にとって優位に働く。

環境の悪化がタイムに影響しないのは、さすがベテランといったところか。


三澤選手は、リーダーズボードを見上げている。

決して満足のいく2本目ではなかった。

しかし、悲観するようなミスもなかったと考えている。

視線の先を「師」の滑りへ移動させる。


素晴らしい。


やはり、まだまだ師弟の差はあり、ため息の大きさはその差に比例した。

2本目では、大きな差を開けられた。


雪面の悪影響。

サスペンションという受動的な装置に頼るSittingクラスにとって、

それは宿命的な要素である。

決して避けることの出来ない、それは十字架を背負っているようなものだ。

思うようにタイムアップさせることが出来ない、

あるいは、コースアウトという結末を突きつけられる選手が続出した。


山本選手はミスを多発。

夏目選手、谷口選手はDFに終わった。


レースの行方は、0.18秒というわずかな時間に並び立つふたりに委ねられた。


誰にも負ける気がしない。

この時、森井選手はそう思っていたかも知れない。

かつては、「SLは猛史に任せる」と考えていたほど、その滑りは異次元のものだった。


しかし、今期は、マテリアルの全てが、

そして自身のスペックが最高の仕上がりを見せている。

その効果は、この種目の絶対王者に並び立つことで証明されている。


彼のライン上には、彼を妨げるものなど何もないように見えた。

ゲート際の窪みも、スキーにまとわりつく新雪も、視界を妨げる悪天候も。


まるで水が流れ落ちるような滑りは、誰もが求めて止まず、

しかし、誰もが得られないもののはずだった。


だが、この場にいた全ての人間は目を疑う。

あり得ない。

そう思われていたものが、現実に目の前を通過したのだ。


鈴木選手は明らかに動揺していた。

白馬のSLでは、コースのほぼ全てがスタート台から見渡せる。


森井選手のラン、それに自分のリズムを重ねてみる。

あり得ない。

会場にいる全ての者と思いを共有してしまう。


しかし自分は、自分だけは、その思いを越えなければならない。

越えられるはずだ。

何よりも、SLで譲る理由など何もない。


動揺を一瞬で激情に切り替える。


スタート直後の急斜面区間。

緩斜面にスピードを繋げるなど初歩中の初歩。

この区間ですらタイムを縮めなければ勝てない。


オープンゲート5つ。

ディレードゲートひとつ。

最高速で緩斜面に入る。


ひとつ目のうねり。

ヘアピンゲート。

加速。


ターゲットが刻んでいったライン。

明らかに他のそれよりタイトだ。


乗れている。

コース上に2本目の最速ラインが刻まれる。


ストレートゲートから再びディレードゲート。

「窪み」は、他の選手の苦労を物語っていた。

しかし、必要なのはその内側のライン。

そこには妨げるものは何もない。


うねりふたつ目。

フィニッシュラインが視界に入る。

その向こうで見ている。

見せきってやる。


リズム変化はあとふたつ。

ヘアピン~ディレードとストレート。

オープンゲートのアプローチからリズムを作る。


ここだ。

ヘアピン。

4本のポールが1本に見える。

ポールに絡みつくライン。


ディレードの2本のポール、

そして次のオープンに対するまでは一つの円弧。

1mmでもインを通す。


ひとつ。

ふたつ。

スキートップ。

ポールの根本。


弾かれた。

窪みに吸い込まれる!

失ったラインとスピードは、全ての終わりを意味した....


まさに極限の戦い!(^^

安全マージンなど残すことは許されない、

シビアな戦いを垣間見た気がします。


鈴木選手は確かに「追い込まれていた」のでしょう。

そのぐらいに森井選手の存在は、

圧倒的な圧力となっていたのだと思います(^^


では、最終結果のおさらいです!


女子Sittingクラス

優勝 大日方選手
 2位 田中選手
 3位 村岡選手
 DF  原田選手

男子Standingクラス

優勝 東海選手
 2位 三澤選手
 3位 阿部選手
 4位 山崎選手
 DF  伊藤選手
 DQ 春日選手


男子Sittingクラス

優勝 森井選手
 2位 鈴木選手
 4位 山本選手
 5位 今野選手
 DF  夏目選手
     谷口選手
 DS  横澤選手   以上です♪


お疲れ様でした(^^

我に返ると、雪の降り方が強くなっているのに気がつきます。

よくもまあ、こんな天候でこんなアツいレースが繰り広げられたものだ。

いいものを見せてもらいました♪


さて、次回はDay3、Super-G(スーパー大回転:SG)の模様を、と考えていましたが、

お天道様と相談の結果、

急遽、SuperCombi(スーパー複合:SC)へと開催種目が変更されました。


てことで、Day3はSCレースをお楽しみください(^^

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