一緒に耐えよう、立ち直ろう!東北! がんばろう!日本!

2013年3月12日火曜日

外は冬の雨、まだやまぬ....


有名な演歌の歌詞のようなタイトルですが(^^;


障害者アルペンスキーワールドカップファイナル。

ソチパラリンピックのプレ大会として行われている、

ここROSA KHUTORスキー場は昨夜から雨、雨、雨....

走る方も走らせる方も、観客もファンも、こんな悲しいことはないですなぁ(^^;


この日、3月10日はSuperCombi(スーパー複合:SC)が予定されていましたが、

こんな天候では1本目のSuperG(スーパー大回転:SG)が開催出来ないということで、

急遽、Slalom(回転:SL)の開催に変更されました。


SLだけの方がまだ安全だということなんでしょうが、

何にしても雨のレースは辛いものです(^^;

スキーウェアは防水機能がしっかりしてますから少々の雨でもへっちゃらですが、

レース用ワンピースだと、文字通り「蝕まれる」ようにずぶ濡れになっていきます。


それだけでなく、

ゴーグルは曇りまくるし、

グローブが濡れてしまえばアウトリガーがずるずるに滑るし....


雪面はたっぷりと水を含んで、板のワックスなんてな~んにも効きやしない。

コース上のラインはまるでかき氷を食べ進んだように掘り下げられて、

ボッコボコのむちゃくちゃになるし.....

σ(^^;は発狂しそうになりました♪


それでも、歴戦の強者たちは戦います(^^

その戦場は、スタート標高1,150m、フィニッシュ標高975m、

標高差が175mのゲレンデに設定されました。


オーストリアチームのコーチがコースセッター

このセットはゲート数50、ターン数49。ターンの対標高差は28%。

ルール上、最もターン数の少ないコースとなりました。


晴れていれば上から下まで見渡せるはずでしょうが、

雨にかすんでまともにコースが見えない(^^;

それでも、傘を差しながらも選手レースのスタートを待つ観客たちは表情も明るく、

本当にアルペンレースが好きな人たちなのでしょう♪


気温はスタート地点、フィニッシュ地点ともにプラス4℃。

雪面は「Wet(濡れている)」。


モータースポーツならレインタイヤに履き替えて、というところですが、

レイン用のスキー板なんてありません(^^;

もし、レインレースが頻繁にあるのであれば、

レイン用のスキーなんて開発されるのかしら?


雨に打たれるスタートハウス、

その周辺に待機する選手たちの表情は決して明るくはないのですが、

ただ一人だけ、明らかに気合いの入っている選手がいます。


そう、ジャパンチームが誇るスーパースラローマー!

「世界の鈴木猛史」選手!

彼はすでに、この種目のタイトル獲得を決めていますが、

このレースで優勝すれば、種目総合のタイトルまでもぎ取ることとなります(^^

そりゃ、気合いも入るってもんですよ。


そんなレース、鈴木選手に栄光は訪れるのか?

SL1本目のスタート順はこうです!


女子選手が10カ国21名。

Visually Impaired(視覚障害:VI)クラスが、

ビブ(ゼッケン)ナンバー24番から38番の13名。ジャパンのエントリーはありません。


Standing(立位)クラスが、ビブ39番から67番で27名。

ジャパンチームからは、三澤拓選手が45番、東海将彦選手が61番、

               小池岳太選手が....名前がありません(^^;


Sitting(チェアスキー)クラスが68番から101番の25名。

鈴木猛史選手が68番、森井大輝選手が77番、

狩野亮選手90番、夏目堅司選手94番、谷口彰選手99番。

以上、男子は18カ国66名のエントリーですが....


なんか、ビブ番号が飛び飛びですなぁ(^^;

飛んでいる番号は、スタートしなかっただけなら、

Did not start(不出走:DS)のところに名前があるはずですし、

エントリーしていないなら番号があくこともないはず。

こんなこともあるんですねぇ。


さて、降りしきる雨の中、女子選手から競技が始まりました。

まるで、冷たい雨の中、肌身を寄せ合うように集まっていたジャパンチームは、

ひとり、また一人とスタートハウスへ入っていきます。


チームのトップバッターは三澤選手

少しずつ調子を上げてきたSL、その最終戦をどのように戦うのか?

そして彼が滑った後、その情報はチームのみんなへ伝えられます。


どのゲートが大きく荒れているのか、

インスペクションでつかんだリズムが、雪面の荒れによってどの程度狂っているのか。


自らのプライドを賭けることはもちろん、

最後まで滑りきって情報を上げて、チームへも貢献しなければならないのです。


東海選手が、三澤選手の情報を受けてスタンバイ。

スタートを待つ間にも、次から次へと選手たちがコース外へ消えていきました。


コース状況はかなり悪化しているのかも知れません。

まだ足のケガに不安の残る東海選手ですが、このコースは走らないわけにはいきません。

すでに、ソチパラリンピックは始まっているのです。


鈴木選手がチームの輪から離れ、スタートハウスへと向かいます。


彼がまだ世界を知らない頃、日本国内で行われたジャパンパラリンピックで、

その天性を見せつけられたことがありました。


雨こそ降っていませんでしたが、

その日のSLも柔らかい雪に全ての選手が悩まされていました。

掘り進められる雪面は深さ50cm程の溝を生み出し、

それはまるでモーグルコースのようになっています。


コブ斜面の山の部分にゲートが立てられたようなコースを見て、

鈴木選手はひとこと言い放ちました。

「まだ、イン側は掘れていないですよ」


確かに、ゲート際の10cmほどは誰も通っておらず、まったく荒れてはいません。

「そこを通って滑れば、ほとんど平地ですよ」

その時、なに言ってんだ?こいつは、とσ(^^は思ったものです。


50ゲートほどが立てられているコース、

そのゲートすべてのインを付き続けるなど不可能だと思いました。

そして、その思いはあまりにも鮮やかに裏切られるのです。


レールの上を走るように、

まっすぐ、ただひたすらまっすぐ滑り降りていくその姿に、

その場にいたすべての人は魅入りました....


この日のソチのコースも、彼にとっては「かつて来た道」のはずです。

軽快にスタートバーを弾き、誰も通っていないラインを攻めていきました。


森井選手は、鈴木選手の他にOverAllタイトルの可能性を残している唯一の選手です。

ポイントリーダーよりも下の順位でフィニッシュした瞬間、

タイトルを持って行かれる立場にある森井選手


昨年度のタイトルホルダーとして、

チームメイトとは言えそう簡単に譲るわけにはいきません。

刻一刻と悪化し続けるコースと戦いながら、

雨でかすむフィニッシュを目指していきます。


このワールドカップではGiant Slalom(大回転:GS)やSLに悩み続けた、

狩野選手夏目選手が二人続けてのスタートです。

きっと、焦っていないと言えば嘘になるでしょう。

そして、何とかきっかけをつかみたいと思っていたこのソチで、

天候に悩まされ、その心中は穏やかではないでしょう。


おなじく、ソチを目指してきた谷口選手

ここのコースを憶えて、パラへの弾みとしたい。


....1本目、やまない雨と暖かすぎる気温は、

選手たちの3分の1を容赦なくコース外へと弾き出してしまいました。


すでに、選手たちはずぶ濡れ。

レース用ワンピースはもちろん、

インナーウェアにまでしみこんだ雨水は、

徐々に体温を奪っていきます。


スキーブーツやチェアスキーのバケットシートの中にも、

当然のように水がたまっています。

精密なスキー操作が求められるアルペンレーサーにとって、

最悪の状況と言っていいでしょう。


それでも、2本目を走らなければなりません。


コースセッターはドイツチームのコーチ

このコンディション、そして1本目に出来た雪面の溝を避けながらゲートを立てるのは、

コースセッターの腕の見せ所と言ったところでしょうか。


ゲート数、ターン数は1本目と同じ。

つまり、同じようなリズムのコースを、少し横に移動させただけかも知れません。

自分の思うように立てられないのは、やはり面白くないでしょうなぁ。


女子の競技が始まっても、まだ待ち時間はあります。

集中力を途切れさせないように、スタートを待つジャパンの選手たち。

「糸」が切れたその瞬間、レースは終わってしまいます。


1本目とは逆に、三澤選手に見送られる東海選手のスタート。

まだ、彼の両足は、彼にコントロール下にあるようです。

ラフなスキー操作は、レースそのものを終わらせるだけではなく、

再びInjury Status(故障者)の苦渋をなめる結果に繋がります。

丁寧に、慎重に....


その背中を心配そうに見ていた三澤選手

アナウンスで東海選手が無事にフィニッシュしたことを聞くと、

今度は自分自身のために気持ちを高めていきます。

このSLだけは....と思いを強くして、雨の中へ飛び出していきました。


Sittingクラスでは、谷口選手を除いた4名が2本目のスタート地点に来ています。

上から見下ろしたコース。

やはり、今から行われるのはモーグル競技かと思わせるような光景です。


そんなコースへ、ジャパンチームは次々とスタートを切っていきます。

鈴木選手一人を残して....


1本目のベスト15の順位を逆にした2本目のスタート。

鈴木選手がフィニッシュした瞬間に、勝敗が決まります。

そして、総合タイトルの行方も決まるかも知れません。

その結果を、彼は「勝ち」という実績で迎えるつもりです。


溝なんて、どこにありますか?と、いつもの「猛史節」が聞こえてきそうな滑り。

まるで、宙に浮いているかのような安定感。

そして、明らかに次元の違うスピード。


SL王者は、フィニッシュを切った瞬間に世界最強の称号も手に入れたのです!

おめでとう!鈴木猛史選手!


パラリンピック前のシーズン、

最強のスラローマーとして、

最高の結果を手に凱旋します!

本当におめでとう!!!


....しかし、σ(^^;の文章が稚拙なのはよくよくわかっていますが、

この結果を前にすると、本当にその陳腐さが鼻につきますな(^^;モウシワケナイ....


では、SLレースの最終順位を確認いたします!


Men's Slalom

Standingクラス
6位 三澤拓選手
8位 東海将彦選手

Sittingクラス
優勝 鈴木猛史選手
5位 狩野亮選手
DQ 森井大輝選手
DNF 夏目堅司選手
DNF 谷口彰選手


そして、SLレースは全て終わり、ポイントランキングも確定!


Men's Slalom PointRankings

Standingクラス
6位 三澤拓選手 216Pts.
7位 小池岳太選手 145Pts.
25位 東海将彦選手 32Pts.

Sittingクラス
1位 鈴木猛史選手 640Pts.
3位 森井大輝選手 371Pts.
13位 狩野亮選手 111Pts.
23位 夏目堅司選手 29Pts.


鈴木選手は、「圧巻」という言葉にふさわしい成績ですな(^^

森井選手は、2位の座を死守出来ませんでした....残念。


さて、最強レーサーのランキング、OverAllにご注目!


Men's Overall PointRankings

Standingクラス
10位 三澤拓選手 279Pts.
12位 小池岳多選手 253Pts.
28位 東海将彦選手 32Pts.

Sittingクラス
1位 鈴木猛史選手 766Pts.
2位 森井大輝選手 573Pts.
14位 狩野亮選手 221Pts.
24位 夏目堅司選手 99Pts.
29位 谷口彰選手 15Pts.


こちらは、森井選手が2位を確保(^^

しかし、その森井選手を193Pts.離した鈴木選手は、やはり別次元の存在だったでしょうか。

193Pts.といえば、ほぼ2レースで優勝したポイントと同じです。


むか~しから鈴木選手を知っているσ(^^は、

「とうとう、行くとこまでいっちゃったなぁ....」という感慨深さでいっぱいです。

これで、鈴木選手は、来期から全世界を敵に回して戦うことになります(^^

森井選手にとっては、来期は「奪還」のシーズン。

ふたりの戦いは、本当に注目です♪


Standingクラスにも、三澤選手という、ジャパンが誇るスラローマーがいます。

彼の活躍も必ず見たい!


小池選手だって、これから脂がのってくる選手。

どのように化けていくのか、ご注目(^^


そして、東海選手には、万全の体調を取り戻して、

来年のこの会場で暴れて欲しい!


Sittingクラス、狩野選手にとって今期は、

「屈辱」と言ってもいいシーズンだったのではないでしょうか。

多分、本人の口からは、「いやぁ、実力どおりですね」なんて言葉が出てくるでしょうけども、

きっと「はらわた」が煮えくりかえっているはず(^^;

かならず、彼は反撃に出てきますよ!


夏目選手もきっと、悩んでいるひとりだと思います。

なにかひとつ、いいきっかけを掴めれば、

トントントンと上り調子になる実力を持っている選手なんですが....


谷口選手は、もうベテランと言ってもいいキャリアの持ち主。

本番に向けて調子を合わせていくことはそんなに難しくもないでしょう。

来期、期待をしています♪


昨年末から、全てのレースを「まるで見てきたように」書き綴ってきましたが、

ジャパンチームの歓喜、栄光、苦労、苦悩などなどなどなど、

まるで手に取れるような錯覚に陥ることが出来ました。


チームの選手、コーチ、スタッフ、関係者のみな様に本当にお疲れ様でした!(^^

そして、こんな駄文にお付き合い頂いた読者の方々へも感謝の念がつきません!(^^

本当にありがとうございました!


....え?このSLと日程が入れ替わったSCが、まだ残っているんじゃないかって?

ええ、残っていましたとも!そして、なくなっちゃいました(^^;


結局、天候は回復せず、1本目のSGが開催出来ずに....キャンセル!

そして、ワールドカップ終~了~!という事なんだそうな(^^;


全てのレースについては、IPCのSeason Calendarのページを、

ポイントランキングについてはこちらをどうぞ。
            (種目別 and OverAll

この連載を続けたおかげで、選手たちにとってもそうでしょうが、

σ(^^にとっても長く充実したシーズンでした♪

いやぁ、スキーって本当にいいもんですね(^^


それではみなさん、また来シーズンにお会いしましょう!

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