まだ、足をつぶして間もない頃、
「2輪がダメなら、4輪じゃぁっ!」
なんて、懲りずにサーキットに通っていた頃の話です。
今はもう開催されていませんが、タイヤメーカーのブリジストン主催で、
「POTENZAドライビングレッスン」というものがありました。
これは、ブリジストンユーザーであれば参加でき、
午前中は座学、午後はサーキットで実走行というカリキュラムのもの。
自分の車で、時には鈴鹿サーキットのフルコースを走行できるという、
とてもありがたいレッスン内容でした。
とにかく、スズカを走れるという動機のみで参加していましたが、
座学もとても興味深いものとなっていました。
「性能円」というのもその一つです。
上の図は、タイヤの性能(グリップ)は例えどんな車の操作をしようと、
この円からは絶対に出ないというものです。
ハンドルをまっすぐにしていて、アクセルの開け過ぎや、
滑りやすい路面でホイールスピンをするということは、
タイヤの性能(グリップ)は円を飛び出ることが出来ずに、滑り始める。
逆にブレーキでロックしてしまっても、同じです。
絶対にタイヤの性能(グリップ)は、円から出ることはないというものです。
当時のσ(^^には、大変勉強になりましたし、
少し形は変わるでしょうが、スキーにも応用が出来るでしょう。
最も影響を受けた講義に、「神経伝達速度」というものもありました。
現在でも、当時講義していただいた黒澤元治さんが研究中だといいながら、
惜しげもなく披露していただいた理論です。
1996年当時のこと、とても斬新なものであり、
今現在も、スポーツ全般に応用できるものだと信じています。
さて、どんな理論かと言いますと....
皮膚が感じた感触は、神経を伝って脳に届くわけですが、
( ↑ ステアリングインフォメーションというそうです)
感覚神経が情報を伝える速度は、30~100m/Sということらしいです。
1秒間に、ものすごくいい状態の神経組織であれば30m、
どれだけ状態が悪くても100mの速度で情報は脳に向かって進んでいきます。
黒澤さんは、大体50mぐらいが一般的な速度だとおっしゃっていました。
200km/hで走る車に乗っていて、例えばハンドルから伝わる感触が、
脳に届くまで、約0.02秒かかります。
その間に車は、約1m進んでいるわけです。
そして、脳に伝わった情報を元に体に指令を送り、さらに約0.02秒。
脳の処理速度は別にして、約0.04秒の間に車は約2m進んでいます。
2mというと、小柄なレーシングマシンだと車体の約半分弱、
車がスピンし始めていたら、立て直すのは難しい距離になってしまいます。
さあ、これをチェアスキーに置き換えてみるとどうでしょう。
σ(^^がおしりから感触を受けて脳まで0.8m、0.016秒、往復で0.032秒。
種目によって滑走スピードは違いますが、
例えば、ターンスピードを40km/mとします。
0.032秒の間に....約40cm。
100km/hのスピードで....約90cm。
板がズレた!と感じて、脳の処理速度を除いても、
その瞬間にとんでもなく外側に引っ張られるか、
斜面の下側に落とされることとなります。
板がズレなくても、きれいにターンしているつもりでも、
ターンを切り返す局面で、カラダが動き出すまで、
スキーはそんな距離を進んでいることになります。
ひとつのターンで0.032秒、ターン後半の動作が遅れるということは、
ターンが切れ上がって曲がりすぎてしまうということです。
そのわずかな遅れは最終的にターン後半、
理想とする切り返し点より、7.2cm上方外側に位置してしまう。
そうすると、次のターンの前半は7.2cmの余裕が生まれたように感じますが、
次のターンを同じターン弧で滑ると旗門にぶつかってしまいます。
つまりその分、前半は間延びし、後半はリズムを変えなければなりません。
リズムを変えるということは、さらに神経伝達速度によるロス(0.032秒)が
新たに生まれるわけで、下手をすればロスがミスを呼び、
そのままでは二度と理想的なラインに戻ることは難しくなります。
これが50旗門続いたとしたらどれほどの遅れになるか....
7.2cmの半径の違いで15cm円弧が長くなり、
滑るために0.011秒かかります。50旗門で0.55秒。
さらに、15cm大きなターン弧のラインを修正するとして、
ターン前半で1.2%のリスクが発生します。
このリスクを抱えてターンの前半のリズム変化だけで修正し、
最後の旗門まで滑り続けられればいいですが、
それが破綻したときの修正のために、どれほどの時間を費やすか....
単純に、単調な斜面で単調な旗門セットだと考えても、
神経伝達速度の遅れは、それだけでこんなにロスすることがわかりました。
この差を埋めるにはどうすればいいのか、
次回、「脳の処理速度はどこまで上げられる?」で、
もう少し考えてみましょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメント、ありがとうございます。