前回までは、小脳に蓄積された情報、
つまり、「引き出し」についてお話ししました。
では、その「引き出し」作りには、どうすればいいのでしょう。
小脳は、有効的に大脳の情報を利用しているということを書きました。
では、大脳に蓄積される情報とはなんでしょう。
ひとつには、技術論ですね。様々な理論、スキーであるならば、
滑り方、スキーのたわみ等の用具の操作とその調整、
雪面とワックスとのマッチング、滑走ライン、体の動かし方....
いくらでも出てきます。
ふたつ目には練習の記憶。スピード感、ターン中の挙動、
走りたいラインと実際のラインとの誤差、気温、天候、体のコンディション....
これも色々あるでしょう。
みっつ目は、ひとつ目とふたつ目をすり合わせた分析、その整理と再調整。
よっつ目に、分析、整理された情報から導かれる想像力とそれに基づく準備。
こんなところでしょうかね。
ひとつ目の技術的な情報は、ゲレンデにいない時間に出来ますので、
しっかりと頭にたたき込んで、用具の調整が必要であればしっかりと行う。
いくつかテストしてみようと考えたパターンは、
それを試すことの出来るように練習内容を組み立てておく。
ふたつ目、1本1本の滑走について、
何もかもを練習後に思い出せるように記憶しておく。
気持ちいい滑りだったり、やたらめったら怖いだけだったりと、
σ(^^;にとっては、これがなかなか難しいのですが。
限りある練習時間の中で、どこまで覚えていられるかが、カギとなります。
また、ビデオ撮影等、後で確認出来る情報を記録しておくことも有効です。
ビデオ撮影が難しければ、仲間同士でどのような滑りだったか、
伝え合うこともいいでしょう。
練習中の次の滑走までの時間や練習後の自由時間などで、
みっつ目の分析と整理を行います。
ビデオを見ながら記憶を詳細にたどり、技術的な準備の結果を導き出す。
また、仲間同士コメントし合い、求める方向に間違いがないかと意見し合います。
よっつ目、滑り方に間違いがなければそれを深く掘り下げ、
違っているようならその修正をし、次の練習に備えます。
そして、それまで積み重ねたことや想像力が豊かで正確あればなるほど、
アルペンという競技では有利な「引き出し」ということになります。
アルペン競技は、その直前に旗門セットされたコースを、
インスペクションという下見のみで本滑走をしなければなりません。
ちなみにインスペクションでは、ずるずると横滑り等の、
ゆっくりとしたスピードで行わなければならず、
練習のための滑走は認められていません。
また、アルペン競技では、海外のごく一部のレースを除いて、
全く同じコースが出現するということはないのです。
モータースポーツのジムカーナでは慣熟歩行にあたるものが、
インスペクションだと言えば、ご理解頂ける方もおられるかと。
ぶっつけ本番のレーシングスピードで、全く経験のない旗門セットに、
下見のみで飛び込むということは、実はとんでもなく難しいものなのです。
でも、トップ選手達はそういった作業をほぼ完璧にこなし、
抜群のタイムをたたき出します。
なぜそんなことが出来るのか?
それはつまり、今回書きました「引き出し」作りの作業を、
ひたむきに、かつ、地道に繰り返して手に入れた大脳の情報と、
それを余すところなく有効に利用した小脳との連携のたまものなのです。
目指せ!頭でっかちなこまねずみ(^^
次回は、「ちりも積もれば山となるらしいけど、ロスがつもれば負けになる」です。
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